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» 2017年07月06日 08時00分 UPDATE

真説・人工知能に関する12の誤解(2):人工知能に「仕事を奪われる」ことの何がいけないのか? (3/3)

[松本健太郎,ITmedia]
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学校教師の人工知能は「イジメ」を解決できるか?

 先ほどお話しした「人工知能という武器を身につける」とは、人工知能にできることを任せ、人間にしかできないことに集中する。その区分ができる能力を身に付けるということだと私は思っています。ここで1つの例を考えてみたいと思います。

 昨今、Edtechに代表されるように、教育現場におけるIT化が進んでいます。勉強を教えること自体は人工知能の発達により自動化が進むかもしれません。今でも授業の動画化が進んでいるケースもありますし、今後は学校教師の負担は減っていくでしょう。

 それでは、学校教師という職業は無くなるでしょうか。私の知り合いの小学校教師に聞いてみたところ、彼は「では、人工知能は学校で起きたイジメを解決できるのか?」と逆に質問されました。

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 私自身、高校2年生でイジメに遭って不登校になった経験がありますが、その経験から考えると、現状では「人工知能での代替が非常に難しい」と感じました。イジメの問題には、被害者がいて、加害者がいて、傍観者がいて、関係のない第三者がいます。そして、多くの場合、加害者と傍観者の区別が非常に難しいことが、問題を複雑にしています。

 この子はいじめられている可能性がある、この子はイジメに加担している可能性があるといった示唆や、可能性の提示までならばできるかもしれません。ですが、人間ですら事態の把握が難しい問題を、人工知能が果たして解決できるでしょうか。

 ましてや、人の心に関する問題です。決まった解決策があるとも思えません。それこそ、前回で説明した「答えのない問いに対して考え続ける知性」が問われると私は考えています。

 これから人工知能が普及するにつれて、答えが決まっていない問題、特に「人によって答えの違う問題」を解決したり調整したりすることが、人間に任される仕事になると考えます。読者の皆さんは、どう思いますか?


 結局のところ、全ての領域において人間を上回るような人工知能(人工知性と呼んだ方がいいかもしれません)が登場しない限り、人工知能は人間の労働を高度にサポートする存在として定着していくのだと思います。「仕事」という面においては、人工知能は労働力という負担を減らす自動化の道具だと定義できるでしょう。

 一方で何を、どのように自動化するのかという点においては、われわれの想像力をはるかに超えると考えます。この手の議論で、私たちが持つべき危機感があるとすれば、「(言語化できなかった)勘や経験が、大量のデータによって“陳腐化”する」ということです。詳しい具体例は、次回ご紹介したいと思います。お楽しみに。

著者プロフィール:松本健太郎

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株式会社ロックオン開発部エンジニア 兼任 マーケティングメトリックス研究所所長。

セイバーメトリクスなどのスポーツ分析は評判が高く、NHKに出演した経験もある。他にも政治、経済、文化などさまざまなデータをデジタル化し、分析・予測することを得意とする。

本業はデジタルマーケティングと人工知能を交差させて、マーケティングロボットを現場で運用すること。

著者連絡先はこちら→kentaro_matsumoto@lockon.co.jp

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