【ブリュッセル=地曳航也、竹内康雄】日本と欧州連合(EU)は6日、ブリュッセルで首脳会談を開き、経済連携協定(EPA)の締結で大枠合意した。チーズや自動車などの関税の撤廃・削減で折り合い、通関手続きの円滑化や知的財産権の保護といった貿易ルールも統一。2019年中の発効をめざす欧州側に足並みをそろえ、日本は自由貿易の重要性を世界にアピールする。
安倍晋三首相はEUのトゥスク大統領、ユンケル欧州委員長とEU本部で会談。その後の共同記者会見で「誇るべき成果だ。自由貿易の旗手として手を携え、世界の平和と繁栄に貢献していく」と、交渉が大枠合意に達したと正式に宣言した。
首脳声明では「日EU間の戦略的パートナーシップの新たな章の幕開けだ」と強調した。発効すれば世界の人口の8.6%、国内総生産(GDP)の3割弱を占める巨大自由貿易圏が生まれる。
大枠合意は関税の撤廃・引き下げや貿易ルールなど、EPAの基本的な要素で一致したことを示す。大枠合意では詰めきれなかった投資家と国家の紛争解決制度などの分野の協議を進め、年内に最終合意する見通しだ。
ユンケル氏は記者会見でEPAの発効時期について「19年初めを考えている」と述べた。日本でも関税分野の発効には2年ほどかかるとの見方が多い。関税以外の分野はEU28カ国の議会承認が必要で時間がかかる可能性がある。
欧州から日本への輸出では、欧州産チーズについてカマンベールなどソフトチーズを中心に低関税で輸入する枠を新設。初年度2万トンから始めて段階的に税率を下げ、16年目は3万1千トンとして枠内を無税にする。欧州産ワインの関税は即時撤廃。パスタやチョコレートも段階的に無税にする。
日本から欧州への輸出では、EU側が日本の乗用車にかける10%の関税を7年かけて引き下げ、8年目に撤廃。日本から欧州へ自動車が売りやすくなる。自動車部品の92.1%(貿易額ベース)は即時撤廃する。日本政府によると、発効済みの韓国とEUの自由貿易協定(FTA)より高い水準だ。
このほか日本酒や日本産ワイン・ウイスキー、牛肉などの関税は即時撤廃。知的財産の保護や電子商取引、農業協力なども明記した。首相は記者会見で、EPA発効で影響を受ける国内農家への支援では「できる限りの総合的な対策を実施する」と述べた。
国際社会では16年6月の英国のEU離脱決定や、同11月のトランプ米大統領の当選など、内向きな動きが続く。日本とEUは7日からドイツで始まる20カ国・地域(G20)首脳会議で、自由貿易の重要性を訴える。安倍首相には日欧EPAを手詰まり感のあった成長戦略のテコとし、政権浮揚につなげる狙いもある。