香川&本田と心中か?日本のとるべき道は ~日本×タイ~
<香川&本田と心中か?日本のとるべき道は ~日本×タイ~>
前回の黒星でこの試合に負けて連敗スタートとなれば「指揮官解任」もまことしやかに噂されていたハリルJAPAN。
プレッシャーのかかる第2戦は何とか「勝ち点3」という結果を持ち帰る事に成功しました。
これで一旦解任派も鞘を収める事となりましたが、タイに勝った程度で収めるぐらいの刀ならもう少し慎重に出すタイミングを考えてくれとも思う次第。
(ザック時代ならこの内容でタイに2-0とか逆に解任騒動になってたレベル)
果たして日本代表は前回の試合と比べて成長が見られたでしょうか?
答えはNOです。
それも当然、UAE戦から1週間もない準備期間にチームの根本的な改善はモウリーニョでも不可能でしょう。
では何が違ったのか?
実も蓋も無い言い方をすれば日本が変わったのではなく「相手」が違ったというだけの話。
結論から言うとタイはUAEに比べて1ランク(2~3ランク?)は落ちる相手でした。
日本に対するスカウティングも甘く、カウンターは遅いしフィジカルも日本に圧倒されている始末。
得意のパスのつなぎも日本のプレスをかいくぐる程の技術はなく90分でシュートらしいシュートが1本だけ(西川がセーブ)では実力の差は歴然としていました。
ただ、それだと話があまりに大雑把でレビューも終わってしまいますので、
今回はハリルが行ったマイナーチェンジと依然燻り続ける日本の課題から今後の行く末も占っていきましょう。
<幅と深さを求めて>
両チームのスタメンはこちら
UAE戦からの変更点は「展開力」の大島に代えて広い守備範囲とボールに強く当たれる守備力が売りの山口をボランチに、
SHは中に入って来る動きからの崩しと足元の技術に定評のある清武に代えてワイドでタテに突破する推進力の原口を。
1トップは背後へ飛び出すスピードで目下売り出し中の若手浅野をスタメンに抜擢してきました。
指揮官からすると1週間に満たない準備期間でチームの何かを動かすとしたら駒を変えるぐらいしか手がありません。
それだけにハリルが求めた「中盤は展開力よりもまずは守備力を」、
そして攻撃は「幅(原口)」と「深さ(浅野)」を加えてもっとシンプルにピッチを広く使いたいという狙いが明確です。
さて、ハリルが施したこのマイナーチェンジでチームはどう変わったでしょうか?
<ボールの狩人により中盤の奪取力向上>
まずは守備面から。
ここはもう試合をご覧になった方なら一目瞭然だったように
日本の敵陣で失った瞬間の切り替えと前からの守備においてボランチの位置でボールを刈り取れる力は大島だった時と比べて段違いに上がっていました。
では実際の試合から日本のボール狩りを観てみましょう。
【日本のボール狩り】
局面は右から左へ攻める日本のサイド攻撃。
SBの酒井から裏へ抜ける本田へ
本田はスピードが無いのでアッサリDFに身体入れられて先にボールを奪われてしまいます。
しかし日本にとって(ハリルにって)重要なのはここから。
奪われたボールをなるべく高い位置で奪い返す事で、カウンターリスクを二次攻撃のチャンスへと変えるのがこのチームの狙いです。
すぐにボール周辺の日本の選手が切り換えた事でタイの最初のパスをタテではなく横パスにする事に成功
日本はこの横パスを囲んでファーストディフェンスの網を作っていますが、
重要なのはSBの酒井が上がったまま、高い位置で守備をしている裏のスペースです。
このスペースをカバーするのがボランチの役目で山口は持ち前の機動力を活かしてこのスペースをすでに埋めています。
そして狙い通り広いサイドへのパスコースを切られたタイは同サイドでのタテパスを選択するしかなく・・・
山口「シャー!コラー!!」
ガツンと行ったーーー!!
ここで身体を当ててボールを刈り取れるのが山口の魅力ですね。
この守備力で前回のW杯でも大会直前に遠藤からレギュラーを奪っています。
まさに弱者のサッカー寄りにチームバランスを調整するなら打ってつけの駒と言えるでしょう。
敵陣のこの高い位置で奪えれば即ショートカウンターのチャンスになります。
ボールは再び本田から浅野を経由したワンツーで
本田がボールを奪われてから僅か6秒後にはシュートチャンスになるというのがこの守備の強みですね。
・・・ただ、大島を山口に代えただけで日本の守備の構造的な欠陥が全て解決されるほどサッカーは甘くはありません。
ある意味「特攻」で勢い良く出て前で狩れてる時はいいですが、奪われたボールを一発で裏に蹴られると日本の脆さが一気に顔を出します。
【中盤を飛ばされた場合】
局面は山口からバイタルの本田にボールを入れる瞬間ですが、この時の日本の配置に注目。
両SBを高い位置に上げてボランチが並列。そう、UAE戦と同じ並びですね。
中盤~前線の厚みを攻守に活かしたいというサッカーなのでそれはそれでいいんですが、
常にボールのラインより後ろにはCBの2枚しかいないというリスクも同時に内包しています。
だからここで失って、タイに中盤を越えたタテパスを裏に蹴られると・・・
はい出た!このパターン!
鈍足2バックでこの広大な裏のスペースをカバーしなければいけない恐怖の時間がやってきました。
定番なのはこっからタテに加速されて森重振り切られる⇒カバーに向かう吉田が切り返し一発ですっ転ばされる・・・っていうトラウマ画だな
・・・・が、UAEと違ってタイのカウンターにスピードはなくFWもマブフートのような個の突破力がないので
ここで一旦攻撃方向に背を向けてキープの姿勢を取ってくれました。(正直、助かった)
で、その間に全員帰陣・・・と。
でもこれタイの速攻だからこうなっただけで現象としてはこれまでの失点パターンと何ら変わらない事象が起きている訳ですよ。
まあ、チームの構造に手を付けられてないので当たり前といえば当たり前なんですが、このままだと本大会はおろかアジアでもこの弱点は確実にスカウティングされてるんじゃないかと・・・。
<個人戦術では補いきれない組織的な欠陥>
次に個人ではなく組織的な守備という視点で見た時の欠陥を考えてみましょう。
山口の特攻守備という個人戦術をチームという枠にハメてUAE戦の課題を部分的にごまかしたまでは良かったものの、
周囲の味方と連携する組織守備はまた別物。
それはこの試合、日本が唯一許したタイの決定機の場面で
その原因が物凄くシンプルな守備の連携ミスであったという事が何よりの証左です。
【日本の初歩的な守備連携ミス】
局面はタイのスローインを森重が中盤まで出てインターセプト
このプレー自体は読みからの良い飛び出しで何ら問題なし
・・・が、コントロールが大きくなって失ってしまう、と。
これも技術的なミスなんでまあ仕方ないと。
(少なくとも戦術的なミスではないという意味で)
問題はココですよ。
CBがDFラインから飛び出してチャレンジしてるのに、それに対する周囲のカバーリングが一切なく全員そのままのポジショニングで自分のマークを見てるだけなんです。
いやいや、守備の優先順位考えたらCBがいるべきスペースって最も失点に直結するスペースじゃないですか。
普通、SBが絞るかボランチが1枚降りてきて埋めるでしょう。
イタリアじゃ多分小学生の試合でもこれぐらい自然と出来ますって。
でもさー・・・どう見てもコレ空いてるんだよね(国際Aマッチで)
急いで戻ろうとしてる森重の姿が何とも滑稽で哀愁を誘います・・・OTL
アッーーーー!!!
「西川ナイスセーブ!」とか言ってる場合じゃないですよ本当にww
これが個人戦術ではごまかしきれない「組織戦術」のマズさです。
<輝けない香川と原口の推進力>
守備面では山口に「出来る事だけやらせる」という起用で狙いがある程度ハマった今回の抜擢。
しかし当然そこにはメリットだけでなくデメリットもあります。
ボランチにタテパスが期待出来る大島がいなくなり山口&長谷部の組み合わせになった事で
ビルドアップで後ろからのタテパスがほとんど中盤に入らない状態となりました。
CB、ボランチからのパスルートは外へ外へ。UAE戦と違いSBが攻撃の起点を担います。
これで一気に存在価値が半減したのがトップ下の香川。
以前から言ってきているように香川を活かすには「タテパスの入れられるボランチ&CB(ようはフンメルスと牛丼)」が必要不可欠だからですね。
この編成だと攻撃時、香川がどうなるかと言うと・・・
【輝けない香川のプレーを検証】
もうボランチに期待出来ないもんだからCBが持ったところでボランチの位置まで降りてきちゃう
・・・で、ここでボール受けても誰か寄って来てくれて新たな展開が生まれるとか特に無いんで
CBから受けたパスをもう片方のCBにバックパスで返すだけのお仕事です・・・で終了(爆)
え・・・?香川のこの仕事、意味ある?
よし、じゃあ今度はサイドに流れて受けてみよう!↓
サイドに流れて足元でボール受けて・・・
DFから離れるように後ろへ後ろへとカニドリブル・・・
そして最後はお決まりのバックパス・・・終了。
じゃあコレ、原口だと何が違うのか?
一連のプレーで比較してみましょう。
【原口のサイド受け】
CBからSBを飛ばして原口がパスを受けるシーン。
もうパスを受ける前の姿勢が香川と違って前に向いているんですよね
で、ファーストタッチでタイのSHを置き去りにしてすぐSBに仕掛けていける、と。
こうなると守る側としてはSBが向かわざるを得なくなって、出て行ったSBの背後にスペースが生まれます。
香川とのワンツー突破で・・・
タイの守備ブロックを完全に突破!これが裏を取れる攻撃です。
そして原口にはこの突破力があるのでディフェンス側の対応も当然変わってきます。
この応用編がコチラ↓
【SB裏にFWが流れるパターン】
局面は左サイドでSBの酒井高徳が持っているところ。
原口がパスを受ける素振りで降りて行くと前を向かれてはタテに突破されてしまうのでSBが背後から食いつき気味の守備
SBが出て行った事で空いた背後のスペースにFWの浅野が流れる。
このようにスペースがある状態でヨーイドン!をさせたら浅野は・・・
テンテンテンテッテテッテッテテッテ~♪(マリオカートでスター取った時のBGM)
浅野無双や・・・こうなってはもう誰も追い付けん・・・。
で、中への折り返しを本田ーーー!!ってお前も外すんかーい!www
△「何で外したのか良く分からん・・・」
要するにこれが幅と深さを活かした「背後の取り方」です。
単純な外⇒外クロスと何が違うかと言うと一度SBの背後を取っているって事ですね。
最近の欧州サッカーのトレンドでも
ワイドにタテの突破力を置いておく事で守備側のSBを引きずり出す
↓
つり出したSB裏をボランチポジションからSBがインナーラップ
↓
CBが釣り出される
↓
中の守備が弱体化した状態で相手CFとクロス対応を迫られる
この流れで得点を量産したのがバルサ時代は「中攻めの鬼」だったペップ・グアルディオラのバイエルンでした。
【ペップバイエルンの外攻め⇒SBインナーラップ】

最終ラインのボアテング、アロンソ、キミッヒらから大外のWG(ロッベン、コスタ)に向かって対角のサイドチェンジ、
相手SBとSHが対応したところでボランチポジションからSB(ラーム、アラバ)がインナーラップをかけて中で待つレバンドとミュラーに折り返すだけ
これだけで守る側はレバンド+ミュラーという得点力の鬼に対応するのが逆サイドから絞ってきたSB(だいたい小さいヤツ)か中盤からプレスバックしてきたボランチ(守備時の視野確保が本職DFじゃないから甘い)になる訳ですから効果は絶大です。
話しが少し横道に反れましたが、日本もアジアだったら外⇒外の単純なクロスでもある程度点は取れると思います。
ですが世界相手にCB2枚が待ってましたの状態で単純に上げても跳ね返されるだけのモイーズサッカーになっちゃいますよ。
やっぱりSBのバージョンアップというか、もう「タッチラインを上下動してクロスを上げるお仕事です」っていう
古臭いSB観を日本も捨てていかないと原口のようなワイドアタッカーも活かしきれないと思うんですよね。
これからの時代はSBにこそボランチ的な感性を持つ選手が必要で「SBがゲームを作れるチーム」なら今のところアジアでは無双出来るはず。
勘違いしてほしくないのですが、別に僕はこの試合から原口の方が香川より優れている、とは思っていないんですよね。
SHにワイドアタッカーを置く場合、現状日本の場合はSBと仕事がかぶるのでこういう事にもなりがちですし↓
【左サイドで渋滞を引き起こす原口&SB】
要は香川も原口も一長一短で、どっちが輝くかはチームの枠組み次第である、と。
<香川&本田と心中か?日本の取るべき道は>
じゃあ、本田と香川を活かすカタチって一体なんなのよ?という話になりますよね。
ではこの試合で見られた数少ない2人を活かす攻撃というのも検証してみましょう。
【日本の中央突破】
局面は左から右へ攻める後半の攻撃。
この試合数少ないグラウンダーで質の高いタテパスがボランチ(山口)から本田へ
そう本田が今受けているこのスペース!!
原口は相手守備ブロックの外で輝く駒ですが、本田と香川はブロックの中でこそ。
相手SHとボランチの間、もっと言うならCBとSBを結んだ四角形のちょうど中間・・・いわゆるバイタルでの間受けですね。
本田はこのタテパスをワンタッチフリックで香川へ
バイタルで前を向いた状態でパスを受けられた香川。
現代サッカーでは攻撃側がバイタルで前を向けたら「王手飛車取り」の状態です。
香川はダイアゴナルに裏へ抜ける原口へのスルーパスを出すもよし、原口が空けたスペースへドリブルでナナメに持ち出してシュートするも良し、理想を言えばここに大外から入って来るJアルバ・・・ならぬSBがいれば更に香川の選択肢も増えた事でしょう。
(結果は原口へのスルーパスを選択し、原口のシュートはGKがセーブ)
この中攻めを成功させる為には本田と香川が受けるバイタルのスペースを少しでも広げておく必要があるので
ワイドと裏に圧力のある駒をおかないと「どうせ最後はここに入れてくるんでしょ」って感じで相手にも割り切って絞られちゃいます。
この絞られた状態でも意地になって(判断なく)バイタルにタテパスを打ち込んでいたのがUAE戦の日本でした。
勿論、スペースを広げてもそこにタテパスを入れられるボランチがいなければ同じように無意味なので
じゃあ大島を使うか⇒UAE戦に戻るの無限ループ。
ハリルだって本当は山口の守備力と大島の展開力を併せ持つボランチを使いたいはずなんです。
(ザック「それな」 アギーレ「ほんまそれ」 岡田「アンカー置くしかないっしょ」)
でも日本の選手層だと何かを取ったら何かを捨てなきゃいけないんですよね。
確かにこの試合の香川、本田のプレーは完全にチームから乖離してましたが、それはそういう設計にチーム構成がなっていたからという部分も大きいんじゃないでしょうか。
現代サッカーの最先端では守備時と攻撃時の選手配置、距離感を緻密に設計して
局面に応じて可変させつつ、お互いの攻め筋をぶつけ合っている名人将棋の時代。
一方で日本代表のポジショニング一つとっても何とアバウトな事か。
【日本の意図と意味が感じられない攻撃時の配置】
ちょっと油断してると↑こんな感じですからね(笑)
TV解説がしきりに「今日は良い距離感で戦えてますね!」と言っていましたが、
こんな外⇒外一辺倒のモイーズサッカーの「どこがだよ!」とツッコまずにはいられませんでした(笑)
近年のトレンドを見れば「何か」を捨てて「何か」を取っているチームの脆弱性は明らかです。
ウインガーを切り捨ててポゼ専用の駒を集めたスペインの時代は長くは続きませんでした。
本田と香川に心中覚悟でチームの命運を託すのか?
それとも2人をバッサリ切り捨てるのか?
いずれにせよ、日本は限られた戦力の中で「外攻め」も「中崩し」も「守備のバランス」も両立出来るバランスを見出さなければ勝機はありません。
ハリルには少なくともこの難解なパズルの取っ掛かりぐらいは、最終予選で見つけ出す事が望まれる-
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