鉄橋崩落、川岸えぐれ 「畑泥にのまれ…」大分
大分県内でも各地で土砂崩れや小河川の越流が発生し、住民らが不安な夜を過ごした。
日田市で花月川の濁流がJR久大線の鉄橋(長さ約80メートル)をのみ込んだ現場では、線路が途絶えたあたりを住民らが心配そうに見つめる姿があった。ある住民は「『橋脚の鉄筋が少なく、安全性に問題がある』と行政に求めたことがあるのに、案の定流された」と厳しい表情を浮かべた。その約500メートル下流の同市新治町では、右岸堤防が川にごっそりえぐられ、民家がやや傾くなどの被害が出た。
一方、同市三河町では長さ約50メートル、高さ約60メートルにわたって土砂崩れがあり、そばを流れる小野川まで一部が流れ込んだ。自宅が床上浸水した近くの楢原文彦さん(71)は「5年前は床下浸水だった。今回は急激に水量が増え、大きな岩石が押し流されてきてびっくりした」と語った。
同市大肥の大肥川沿いに住む其田実利(そのだ・みとし)さん(71)家族は、ごうごうという水の音と雷で、自宅で眠れぬ夜を過ごした。妻二美(ふたみ)さん(67)は「怖かった。雷雨に加え、大きな石が川の底や橋桁にぶつかるゴトッゴトッという音が、家の中まで聞こえた」と語る。「夏野菜が立派に育っていた畑も泥にのみ込まれた。言葉にならない」と顔をゆがませた。
中津市で最も多い115人が避難した本耶馬渓公民館では、高齢者らが体を休めたり、不安そうにテレビを見たりしていた。公民館から約1キロの河川近くで1人暮らしをしている仲三津代さん(83)は、一昨年の豪雨で床下浸水に遭ったことが記憶に残る。「一昨年みたいに家がめちゃくちゃになったらと思うと眠れず、寝て起きてを繰り返した」とつぶやいた。土木業の原昭文さん(68)は避難所の玄関で外を眺めながら夜を過ごした。川のすぐ横に自宅があり、5年前の九州北部豪雨では床上までつかる被害に遭った。今回自宅は無事だったが「被害に遭うたびに無力感に襲われる。いつになったら帰れるのか」と疲れた様子だった。【楢原義則、安部志帆子、宮城裕也】