部屋の片隅に見える黒い影。
黒い影それはゴキブリ、
出会いは突然に。
私はゴキブリが怖くて、
怖くてたまらないのです。
その当時は同棲していた彼女がいたので、
彼女にお願いして退治してもらっていました。
勇敢な彼女は何もわず、
ゴキブリを一撃で処理してくれます。
情けない事に、
私は彼女にすがる事しか出来ません。
しかし彼女はある疑問を持っていました。
そして私にこう言うのです。
「いつも仕事で沢山ゴキブリ殺してるでしょ?」
まぁ・・・・・・・そうなのです。
私は15歳の頃から日雇い労働を始め、
休日や仕事終わりを利用して30歳近くまで、
工場や公共住宅の清掃等をしておりました。
清掃ですから、
・・・・ゴキブリとの付き合いは長い。
私の殺したゴキブリの数は百や千ではありません。
数万匹にも達するでしょう。
特に・・・配管の洗浄の時などは、
大量のゴキブリを殺してしまいました。
高圧洗浄機のガンのトリガーを引くと・・・・・
ホースについた先端のノズルが水を逆噴射しながら、
高速で管内を突っ込んでいくのです。
汚れは落ちる。
ゴキブリも死ぬ。
しかし彼等も死にたくは無いのです。
驚いて懸命に外へ這い出て来きます。
カサカサ・・・・カサカサ・・・・・
でも殺す。
もう殺すしか無いのです。
ドン!ドン!とゴキブリを踏み潰す。
ここで1匹でも逃がせば、
住民からのクレームにもなりかねません。
最悪の場合「あの業者を使わないでくれ!」と
親会社に連絡が入り、仕事が無くなる可能性も0ではない。
だからゴキブリは全て・・・・殺すしか無いのです。
しかしなぜ、
こうもゴキブリは嫌われているのでしょうか?
実は過剰なテレビCM等のせいで、
「ゴキブリは気持ち悪い」と
そう思い込まされているだけなのでは?
というような話を耳にした事もあります。
確かにマンガやアニメでも
「ゴキブリ!?」
「キャー気持ち悪い!!!」
みたいな描写はよく見かける気がします。
とすると・・・
このゴキブリを嫌う感情は、
自分の本当の気持ちではない?のか?
じゃあ自分の本当の気持とは、
どこにあるのでしょうか?
そして・・・・・彼女の言うとおり、
見るだけでも恐ろしいハズのゴキブリが・・・・
なぜ仕事の時は平気で殺せるようになるのだろうか?
仕事だから、クレームを出さないように殺す。
それはモチロンなのですが・・・・
私は本来ゴキブリは怖いというだけでなく、
生き物であれば
動物でも、
植物でも、
虫でも、
出来る限り殺したくは無いハズなのです。
しかし仕事になると、
そういう感情は吹き飛んでしまいます。
これは上司や先輩の教えのせいかもしれません・・・。
思い返せば・・・・
いろんな所でいろんな誰かの都合の良い様に
感情や思考が上塗りされてきたように思います。
私は人を信じ込みやすいタイプですので、
ガンガン塗られてきてしまったように思います。
TV、ラジオ、マンガ、アニメ・・・
学生時代は先生から・・・
警察官時代、営業マン時代
職場であれば、必ず上司や先輩から
「こういう考え方をしろ!」と強要されたものです。
本来の自分がどういう人間だったのか?
何だかもう・・・・・よく思い出せません。
そういえば・・・・
ある職場でキツイ仕事を押し付けられて、
チョット嫌な顔をした時には、
こんな事を言われました。
「個性は出しても我は出すな」
お前は全体のための一人にしか過ぎない、
与えられた仕事をただヤレ。という事だと思います。
それはツライ事のようにも思えますが・・・・
でも、そうやって自分の感情や思考に
ドンドン上塗りして、
「その場に必要な自分」になれなければ、
自分の居場所はスグなくなってしまいますよね。
適者生存。
生きていく上で、
自分を他人の思考で上塗りしていく事は、
やはり必要不可欠なのでしょうか?
案外みんなが自分で
「自分の個性や思考」だと思っているモノだって、
結局誰かから認められる為に後付で作ったモノ
なのかもしれませんよね。
私の
ゴキブリを怖いと思う気持ちも、
ゴキブリを殺したくない気持ちも、
本当の自分なんてモノでも何でも無かったのかもしれません。
おしまい
はやく社会の歯車に戻りたい。