土肥: 学生時代に数学を苦手にしていた人って、社会人になっても「微分・積分なんて仕事で使わないよ」「二次関数って、一度も使ったことがないよ」と思っている人が多いのではないでしょうか。「微分・積分も二次関数もいらない。社会人になっても必要なのは、足し算、引き算、掛け算、割り算だけでいい」と考えている人が多いのかもしれない。いや、ひょっとしたら、微分・積分、二次関数をどのように使えばいいのかよく分からないので、「必要なのは、足し算、引き算、掛け算、割り算だけでいい」と自分に言い聞かせているのかもしれません。
ま、エラソーなことを言いながら、文系人間のワタクシも社会人になって「微分・積分、二次関数」なんて使ったことがない(と思う)。いや、正直に言うと、小学2年生で学ぶ「分数」も怪しいんですよ。5人家族がピザをわけるときに、「いまは3人しかいないから、じゃあ3等分しようね」というシーンがある。その場合、5分の3という数字が出てくる。ここまでは分かるのですが、分数の足し算になると、とたんに説明ができません。例えば、5分の3+3分の1は? とか。もちろん、計算はできるのですが、「分数の足し算って社会人になって必要か?」と聞かれると、答えることができないんですよ。
そこで、堀口先生にズバリお聞きしたい。分数の計算って、何のために学んでいるのでしょうか?
堀口: 数学や算数の役割とは何か。たくさんあるのですが、そのひとつに物事をより抽象化している役割があるんですよね。
土肥: 物事を抽象化している? いきなり、つまづきました。どういう意味でしょうか?
堀口: 例えば、リンゴが2個あるとします。この場合、どのように数えますか?
土肥: 2個ですよね。
堀口: でも、本当に2個と言えるのでしょうか。よーく見ると、そのリンゴは形がそれぞれ違うかもしれません。1つは、キズが入っている。もう1つは、へこんでいる。そうした場合でも、同じ1個と言えるのでしょうか?
リンゴは1個あるよね、そしてもう1個あるよね。片方のリンゴは大きい、もう片方は少し小さい。でも、同じ1個として数える。とりあえず大きさ、形も違うけれど同じ1個なんですよね。そして、合わせて2個と呼ぼうね、というのが数学の役割なんです。現実にはさまざまな情報が詰まっているのに、特定の情報を抜き出しているのが数学なんですよ。
土肥: 数学で「このリンゴとあのリンゴは違う」なんて考えたことがないですよ。うーん、まだしっくりこないですが、確かにさまざまな情報をそぎ落としていますね。いまは数学の話ですよね。算数はどうなのでしょうか?
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