料理本『やせるおかずの作りおき かんたん177レシピ』(新星出版社)の題名や表紙デザインが、自社の本に酷似しているとして、小学館が販売停止などを求める騒ぎが先月あった。ベストセラーの類似本はこれに限らない。どこまでの類似なら許されるのか?

 騒動の発端は新星出版社の本が今年5月に刊行されたこと。小学館はこの本について、平成27年1月に自社が出版した『やせるおかず 作りおき』と、題名や表紙デザインなどが酷似していると主張。6月9日付で新星出版社に対して「読者の方々が誤認、混同して購入する恐れがある」と販売停止などを申し入れた。双方の話し合いの結果、同月14日、出回った本は回収せず、新星出版社側が今後同書を出荷しないことで合意が成立した。

 メインタイトルだけなら2冊はわずか1字違い。だが、明治大学法学部の金子敏哉准教授(知的財産法)は「ほかの本が出せなくなる恐れがあるため、タイトルに著作権が認められるのはまれ。表現の自由への配慮からです」と話す。

 今回の例で争点となるのは、新星出版社の本の「表紙デザイン全体」が、不正競争防止法で禁じられた、小学館の本との「混同を生じさせる」行為にあたるか否かだという。ただ、この法で保護されるには、表紙デザインが▽ほかの同種商品と異なる顕著な特徴を持っている▽特定の事業者のものとして周知されている−ことなどが条件になる。金子准教授は「例えば2冊の表紙写真はどちらも容器に入れられた料理を並べたもの。でもこれは別の料理本でもよく見る。表紙デザインにも表現の自由への配慮が求められることを考えると、法的にはセーフとなる可能性は高い」と話す。

 平成13年にはベストセラー『チーズはどこへ消えた?』(扶桑社)に似た本の出版をめぐる衝突が訴訟に。程度の差はあれ類似本騒動は繰り返されてきた。

 「出版界では『柳の下にドジョウは3匹までいる』とよく言われる。類似本は3冊目までそれなりに売れるというわけです」と話すのは出版ニュース社の清田義昭代表。今回の騒動の背景にも保存しやすい総菜レシピ本のブームがある。小学館の『やせるおかず−』は食事の支度に時間をかけられない人たちの支持を得て、80万部超のヒットを記録。シリーズ6冊の累計部数は246万部を上回る。

 清田さんは「出版物が世相を反映している以上、類似書を出すことが出版社の怠慢とは言い切れない。ただ促成栽培のような本があるのも事実。時代の流れを追いながらも新たなヒットを生み出す気持ちは持ち続けてほしい」と話す。