【ワシントン=永沢毅、ソウル=山田健一】トランプ米政権は4日(日本時間5日未明)、北朝鮮が前日発射した弾道ミサイルの種類が大陸間弾道ミサイル(ICBM)だったと初めて確認した。ティラーソン国務長官らが「強く非難する」との声明を発表した。米韓両軍がミサイル発射訓練を実施してけん制に動くなど、朝鮮半島の緊張が再び高まってきた。
ティラーソン氏は声明で「ICBMの発射は米国や同盟国、地域への脅威を高めるものだ」と指摘。北朝鮮の労働者を雇用したり、北朝鮮に経済的・軍事的な利益を提供したりしている場合は「いかなる国も危険な政権を手助けしていることになる」とけん制。「脅威を終わらせるため、全世界が行動することが求められる」と訴えた。
米太平洋軍は前日の段階では、ミサイルの種類を中距離弾道ミサイルと判断していた。複数の米メディアによると、その後の分析で判断を修正。今回発射したのは2段階式のICBMだった可能性があるとしており、アラスカまで到達する能力があるとみられている。
米国防総省の報道担当者もICBM発射を非難する声明を発表。「我々は最大限の能力で北朝鮮の増大する脅威から同盟国を守る用意がある」と強調した。
韓国軍合同参謀本部によると、米韓両軍は5日午前7時ごろ、韓国東部の日本海側で弾道ミサイルの発射演習を実施した。前日にICBMの発射実験に踏み切った北朝鮮に対抗する武力を誇示し、けん制する狙い。
韓国大統領府によると、演習は文在寅(ムン・ジェイン)大統領が指示した。文氏は「(北朝鮮を非難する)声明だけで対応する状況ではない。確固たる体制を示す必要がある」と述べたという。
一方、北朝鮮の朝鮮中央通信は5日午前、前日のICBM「火星14」の発射実験で、弾頭を大気圏に再突入させる技術を最終確認したと報じた。発射実験では、弾頭部が再突入後も安定した内部温度を保ち、核弾頭起爆装置も正常に作動したと主張した。
再突入時の高温や振動から弾頭を守る技術は、技術的難度が高く、北朝鮮のICBM開発の要とされてきた。発表が事実ならICBMの実戦配備の可能性も高まる。
朝鮮中央通信によると、火星14は新たに開発した炭素複合材料を採用。2段式で「大重量の核弾頭を搭載できる」。弾頭部は数千度の高温や激しい振動を受ける再突入後も25~45度の内部温度を安定的に維持したとしている。
発射実験に立ち会った金正恩(キム・ジョンウン)委員長は「今後も(米国などに)大小の贈り物を度々送り付けてやろう」と武力挑発を続ける意向を示した。米国が敵視政策や核の威嚇をやめない限り「核と弾道ミサイルは交渉のテーブルに置かない」と述べた。