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待て勇者、お前それジャングルでも同じ事言えんの? ~勇者に腹パン、聖女に頭突き、美少女騎士に回し蹴り~ 作者:吾勝さん

第二章

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第四十六話『それ起きてからでよくね?』

宜しくお願いします。
今回の後書きはメチャです。




「よ~しよしよし、ステイ、ステイ、グッボィ、グッボィ、あ、お前メスか、グッガゥ、グッガゥ」

「グルルゥ」
「グゴォォ」
「ングウウ」
「グルッ」


 新たに眷属化した四頭のアハトマ・ワイバーン。
 眷属進化して体色が青から黒紫に変わり、不吉な翼竜っぽくなった。通常のワイバーンより少し大きい。

 体長は平均14m、翼を広げた状態の『翼開長』は約18m。
 体長に対して翼開長が短すぎるが、体長の半分以上が首と尻尾だ、尻尾の先に有る毒針だけで50cmはある。胴体は4mほどしか無い。

 翼竜種は魔力を翼に流して長距離飛行が可能。時速130kmで飛べる。ハヤブサは時速380kmで急降下するらしいが、そんなワイバーンに育って欲しい。ジェットコースター大好きなんです。

 この四頭はこれから東周りで北のハイジクララ山脈に戻り、そこで群れのボスを倒し、下剋上してもらう。その後は群れを率いてガンダーラに戻ってもらい、全頭眷属化する。

 四頭のリーダーはレベル38のオス8歳に決定。
 名前は『シムラ』にした。大物になってくれるだろう。ただ、後方への注意が散漫だ、後ろには気を付けてもらいたい。

 他の三頭にもそれぞれ『L・ヒゴ』、『ジモン』、『リュウちゃん』と名付けた。リュウちゃんはメスだ。

 そんな四頭に大イノシシの肉を与え、アハトミンCを二本ずつ飲ませて北へ戻らせる。総合力は40万前後だが、ヴェーダ曰く『勝てる』とのこと。

 どうやってあの弱いテイマー達が調教出来たのか謎だったが、四頭を魔竜の眷属が弱らせてからテイムしたのだろうとヴェーダが教えてくれた。そんな方法もあったのかと感心した。

 やっている事は俺と同じだが、弱者が強者を従属させる方法の一つだと知れてよかった。

 四頭にはパパッと下剋上してもらって、今晩中に戻って欲しい。群れに何頭居るのか分からんが、現時点で陸上兵を輸送出来る空挺団が手に入るのは嬉しい誤算だ。

 レインの言葉を聞いて良かったと心から思う。


「よ~しよしよし、それじゃぁ、頼んだぞお前達」

「グッフンダ!!」
「グルル~!!」
「グァウ!!」
「ングルゥ!!」


 四頭は大きな翼を広げ、両翼に魔力を流しながら上下させて浮上。ガンダーラ上空を三度旋回して東へ向かった。妖蜂の領域を通過してクララ山脈沿いに北上する予定だ、魔竜に勘付かれる事は無いと願いたい。


「け、賢者様ぁ、お昼の御用意が、出来ておりますぅ」

「もうそんな時間か、悪いな待たせて。メチャ、今日の昼飯は何だ?」

「えっと、あの、鹿の丸焼き岩塩味です!!」
「あぁぁ、炊きたての白い飯が喰いたくなるな……」

「白いメシ?」
「麦みてぇなもんだ。さぁ、早く行こう」


 現在の時刻は13時21分、第一砦内で遅い昼食だ。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 やっぱ白飯が食いてぇぇ、塩と肉汁が口の中で大暴れやでぇ~。

 FPで購入した小麦粉に聖水を加えて作った薄いホットケーキ的な物に、焼いた肉を挟んで食べるのがガンダーラの流行りだが、実に惜しいと言わざるを得ない。

 贅沢な話だが、米と肉のベストカップルぶりを知る身としては、いささか物足りなさを感じてしまう。


『“ろうを得てしょくを望む”と言ったところですか、中央ユースアネイジアではインディカ種に近い稲の栽培が確認されています。いずれその地を征服した暁には、お腹一杯お召し上がりください』

「ラヴ達に略奪してもらえねぇかな」
『お待ち下さい…… 了解したとの事です』

「よしっ!! でも、今は夏だから収穫前か……」
『商人の倉庫などに多く保管されているかと』

「それは…… 没収だな。影沼を米で満たすのだっ!!」
『ラヴに伝えておきます。他の食料品も収奪させましょう』


 インディカでも何でもいい、『お米』が食えるなら文句は無い!!
 明日の今頃にラヴ達が帰って来るはずだ、待ち遠しいなぁ。
 まぁ、死ぬほど喰いたいとかではないし、日本食を広める気も無いが。


「ラヴちゃん、怪我してないかなぁ……」
『大丈夫ですよメチャ、全員無事です』

「……ラヴ? あぁ、破壊工作組の者か」


 レインはまだ俺の眷属達をほとんど知らない。

 この場に居るのは魔竜の眷属と戦った俺達と、ミギカラ達ゴブリン氏族長や男ドワーフ達だけだ。女衆は潜入組とメチャ以外全員避難済み、妖蜂や妖蟻は地下帝国で待機したままヴェーダを通じて幹部会議を開く予定なので、レインが顔を合わせるのは明日以降だろう。

 今回避難して来たラミア・ナーガ族、ハーピーや山脈沿いのコボルト、彼らとは俺もまだ顔合わせを済ませていない。各氏族長が挨拶に来たがっているそうだが、今は地下で大人しくしてもらっている。

 顔合わせは魔竜の動きを確認した後だ。
 今日はカスガとアカギから蟲の増援を送ってもらい、眷属化して偵察と哨戒に当たらせる予定。


「ラヴ達が暴れてくれたお陰で、大森林の南に在る三カ国は森の魔族どころじゃなくなっている。これで俺達は北伐に専念出来る」

「……なるほど、その為の潜入破壊工作か」

「って言うか姐さん、俺達が暗躍してる事は神様達にバレてねぇのかい?」

『遊戯盤はこの地上全て、神々も辺境に在る森だけを見ているわけではありません。たとえガンダーラの暗躍を知ったとしても、それを神託で人類に教える事は出来ません。それが遊戯のルールですので』

「ふぅ~ん、それじゃ神々は見てるだけか、ザマねぇぜ、ブッヒッヒ」

『神々がガンダーラに対して出来る事と言えば、神託で大森林を攻撃対象として指定する程度です。他陣営の行動内容を自陣営の人類に知らせたようとした神は、そこで遊戯終了、強制退場ののち神界を追放され邪神に堕とされますので、進んでルール違反を行う神は居りません』

「……他神にそそのかされて邪神堕ちする駄神が居そうだな」

「ブヒッヒ、レインも姐さんに色々教えてもらったみてぇだな、遊戯の話聞いてどう思った?」

「……フッ、兄者が崇めるアートマン神を玉座に据えるのに都合が良い、そう思った。俺に備わっていた戦神ムンジャジの加護は既に消えていたが、新たに大神アートマン様から加護を賜った。俺がやるべき事はその時点で決まっている」

「ブ、ブヒ、お、俺と同じ考えだな、さすがだ」


 どうやらジャキは、レインとは違った思いを抱いていたようだ。おそらく、『ブッヒッヒ~、何だか解んねぇけど暴れられるぜぇ~』といったところだろう。

 アホは放っておいて、北伐作戦の話をしよう。


「さて、中部の“比較的”まともな魔族に使者を送るわけだが、俺はメーガナーダにやってもらいたいと思っている。理由はその強さと見た目だな、アハトマ種の上位ゴブリン、初見のインパクトは相当なもんだろう」

「……インパクトならミギカラ殿が一番だと思うが。無論、兄者を除いての話だ」

「ブッヒッヒ、ミギカラの爺さん見たら驚くぜぇ中部の奴ら。なぁ南浅王っ!!」

「いやいや、うわっはっは、照れますなぁ、だがしかしっ!! 御下命とあらば是非も無い、使者としてこの“キング”が、『ダンス・ウィズ・中部魔族 ~王に抱かれて・夏~』をして参りましょう」


 あぁ、駄目だ、ミギカラがまた気色悪いミギカラになってきた。
 そのダンスは宴会の時に見せてくれ。


「待て待て、お前とジャキとレインは中部一の武闘派『北都猪人族』をくだして欲しい。北都猪人は膿に浸かっていないらしいが、浅部から来た使者の話に耳を傾けるとは思えん。そうだろジャキ?」

「まぁ、聞く聞かないの前に、俺の爺さんも親父も使者に会わねぇな。長兄と次兄も同じだ、幹部で話を聞く可能性があるのは四男のケンジロウだけだろう」

「……北都が落ちれば、中部の奴らも使者の声に耳を傾け易くなる、と言う事か兄者」

「そうなって欲しいと思っている。膿に浸かっていない中部魔族の中で、北都猪人より強い魔族は居ないからな、力関係が判り易くなるだろ」

「兄貴の考えでいいと思うぜ。北都猪人と個体の強さ的に同格な中部魔族つったら、東中部を支配する妖蜘蛛ようちしゅ族や西中部と南中部に多く住む妖樹族が居るが、奴らは穏健派だ、北都を降せる浅部魔族の話ならしっかり聞くだろうよ」


 問題は膿に浸かった中部魔族だ。
 一応北伐の話は持って行くが、恐らく協力を得られる事は無い。

 せめて理解を得られる事が出来れば、そう思うがこれこそ無理な話だ。ハーピーという甘い蜜の存在を否定し、北伐に賛同する気概がある様な奴らなら、森の掟を忘れて汚ぇ膿に浸かる事も無かっただろう。そこにどんなの理由があったとしても、掟破りのアホに理解出来る話じゃない。

 そんな気概を持てない奴らが、自分達より強者である深部魔族や大森林の覇者である魔竜を討つ為に立つなど、期待するだけ無駄だ。

 だが、礼儀として、スジを通す為に話は持って行く。
 俺達の話を断るのは自由だが、あとからグチグチ言わせない。北伐が済んだらジャングル・カーストの最下層に沈んでもらう。

 干し芋を齧りながらそんな事を考えていると、同じく干し芋を齧って幸せそうな表情のジャキが、右手に干し芋、左手に熱い麦茶を持って話し掛けてきた。


「ムシャムシャ、兄貴、俺ぁメーガナーダを見た事ねぇが、そいつら潜入部隊に居るんだろ? って事は、使者に立てるのは明日以降か?」

「そうなるが、お前らは今日中にワイバーンに乗って北都に行け」

「ムシャムシャ、え? 今日? 何で?」
「北都を降した状態のほうが、中部の魔族も使者の話に耳を傾け易いだろ」

「ムシャムシャ、なるほどなー」
「……兄者は、北都の長兄と戦わんのか?」

「その役はミギカラに譲る。キングのお披露目には持って来いの相手だからな。ついでに北都の親父と爺様もヤッてこいよミギカラ」

「ハッハッハ、主様は老いぼれの扱いが厳しいですな~。では、老骨に鞭打って北都の“ガキ共”を躾けて参りましょう。ハッハッハ」

「ムシャムシャ、俺の爺さんは八十歳だぜ、アンタより一回り上だよ」

「ハッハ…… そう言う考え方も、ありますわな」


 何故、ミギカラは締まらないのか?
 呪われているのではないか?
 一抹の不安を覚える。

 こういう時は、俺の隣で居眠りしながら鼻提灯を膨らませているメチャを愛でるに限る。

 さっきからメチャの声がしないと思っていたら、ヨダレを垂らしてコックリしていた。そう言えば、俺とメチャは少ししか寝ていなかったな。

 俺も少し横になるか。
 メチャを姫抱きして第一砦内に在る俺の部屋へ行こう。
 女夜叉になったメチャに触れるのは、これが初めてだ。


「俺はメチャと少し休む、お前達も休憩しておけ。さぁてメチャ、ベッドに行くぞ~」

「んぁぅ、ぅん、ベッド、行く」
「よ~し、よっこいしょういち」


 おぅふ、柔らかい。色々柔らかい。
 これは…… イカンな。


「じゃぁな、日暮れ前には起きる」

「うっす。…… いいなぁ兄貴……」
「……お前にもゴブリンの女衆が居るんだろ?」

「居るけどよ……」
「……それ以上にメチャは美しい、か」
「ち、違ぇよ、バッカ、あんなんブスだよ、目ん玉大丈夫かオメェ?」

『メチャはブス、ですか、面白いですね』

「ぁぁぁあ、姐さん違うんです、このトカゲが変な事言うからぁ」


 ジャキのツンデレは、昭和の香りがするので嫌いじゃない。
 今はその甘酸っぱい青春を謳歌して欲しい。

 俺はメチャの股枕でうつ伏せに寝て、若人の青春にエールを送る。


『ナオキさん、首輪の解析が完了しました』
「スーハー、スーハー、え?」



有り難う御座いました!!


【名前】メチャ・ディック=スキ (眷属)
【種族】ゴブリン系アハトマ・ヤクシニー
【レベル】134 【年齢】22 【性別】女 

【状態】絶好調 【官名】侍女長
【ジョブ】総合格闘士 【爵位】――

【HP】30万2,871 【MP】22万6,146
【総合力】742万3,281パワー

【特技】
『採取』 『按摩:Lv4』 『自然回復:中』
『水魔法:Lv1』 『木魔法:Lv1』
『各種日本式体術・剣術』
・空手道:Lv4 ・柔道:Lv6 ・剣道:Lv2

【称号・加護】
『アートマンの加護・一型=言語理解・総合力10%上昇』
『岩猿の眷属=総合力が20%上昇』
『キノコ狩り名人=男性相手の戦いで総合力が30%上昇』
『姫夜叉=水辺と森林での戦いで総合力が20%上昇』

【耐性】
『火炎無効』 『物理半減』 『即死・呪殺反射』
『土・金属性無効』 『水・木属性耐性』
『精神・神経無効』 『飢餓耐性』
+注意+
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