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待て勇者、お前それジャングルでも同じ事言えんの? ~勇者に腹パン、聖女に頭突き、美少女騎士に回し蹴り~ 作者:吾勝さん

第二章

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第四十五話『人間はタイヘンダナー』

今回の後書きはレインのステータスです。
宜しくお願いします。




 キング、それは種の頂点を極めた者、魔王種と呼ばれる存在だ。

 世界各地に存在する魔王は全てこの魔王種である。
 牛魔族のキング、人狼族のキング、吸血鬼のキング等々……

 彼らは魔人に次ぐ実力を備えている。
 魔人との違いと言えば、神の加護を得られず、コアの力で兵隊を増やす事も出来ずに、人間や獣人の組織から包囲され袋叩き状態であるという事だろうか。

 兵の補充も出来ぬまま、勇者や魔導兵器に滅ぼされた魔王の国は多い。

 このユースアネイジア大陸に残る魔王は少ない。ほとんどの魔王が人類により別の大陸に追われ、残った魔王達は山脈を越えた北方の大地に逃げ込んだ。

 北方に移った彼らは、永久凍土やスマップの森以上に広大な森、ハイジクララ山脈より高い山々に囲まれた盆地など、人類の食指が動かない土地に国を興し居を構えている。

 現在、魔王が一番多い大陸は、地球で言うところのアフリカ大陸だ。この世界では『エイフルニア』と呼ばれている。

 ヴェーダによると、エイフルニアに皇帝を名乗る魔王が現れ、南エイフルニアの魔王達をくだして眷属化し、大帝国を築いている猛者も居るらしい。詳しい事はまだ分からないが、いつかその皇帝と会ってみたいものだ。

 話を戻そう。
 つまり、山脈の南側に魔王は居ない、居なかった。

 数分前に大森林の南浅部でキングが誕生するまで、魔王種は居なかった。

 身長210cmの偉丈夫。
 濃い赤銅色の肌に浮かぶ血管と引き締まった筋肉、乱れた長い黒髪から覗く二本の角が額を飾り、鋭い黄眼と下顎の長い牙は地獄の鬼を彷彿させる。

 キング・ミギカラに跪くハード達ゴブリン氏族長。
 俺に対する礼とは違った、種族の礼儀だ。

 種族にキングは唯ひとり、キングが存命中は次のキングは生まれない。ゴブリンにとってのミギカラは王の中の王キングオブキングス、他の魔王種より高貴な存在となる。

 ミギカラは苦笑して彼らを立たせた。
 そのミギカラが目を伏せながら俺の前で跪く。
 それに倣う氏族長達。これが眷属と主の揺るがない関係だ。

 主でありボスである俺は、キングとなった氏族長ミギカラの立場を決めてやる必要がある。対外的にガンダーラ内部の上下関係をハッキリさせておく為だ。

 だがしかし、俺はアホなので適切な官職や位階が判らない。

 困った時のヴェダえもん、お願いします!!


『了解しました』
「すまんな」

『いいえ、相棒ですので。……完了しました、ご確認ください』

「早ぇなオイ」


 フムフム、なるほど、ヴェーダが決めたミギカラのアレコレが俺の脳に叩き込まれた。便利だなー。


「ミギカラ、お前は今日から『南浅王』だ。南浅都督に命じる、軍級は大将、気張れや」

「ハッ!! 御下命、しかと受け賜りました。それでは主様、私のステェィトゥアスをご確認下さい―― チェケラッ!!」


 ミギカラが俺に進化後のステータスを見せた。
 相変わらずポンポン見せるなぁコイツは。
 聞く手間が省けるから助かるが。


【名前】ミギカラ・マナ=ルナメル (眷属)
【種族】アハトマ・センズリン (魔王種)
【レベル】255 【年齢】68 【性別】男

【状態】絶好調 【ジョブ】大戦士
【官名】南浅都督 【爵位】南浅王
【官位】正三位上 【軍級】大将
【勲位】勲三等

【HP】122万7,125 【MP】42万6,646
【総合力】2,612万5,917パワー

【特技】
『棍術:Lv17』 『遁走:Lv28』 『指揮:Lv38』
『怪力:Lv1』 『土魔法:Lv1』 『金魔法:Lv1』
『圧壊』 『雄叫び』 『カリスマ』
『強運』 『子作り:Lv55』 『自然回復:大』

【称号・加護】
『アートマンの加護・一型=言語理解・総合力10%上昇』
『氏族の英雄=指揮のLvが上がり易い』
『色魔=子作りのLvが上がり易い』
『岩猿の眷属=総合力が20%上昇』
『キング=ゴブリン種への指揮力上昇、配下の総合力20%上昇』

【耐性】
『火炎無効』 『物理半減』 『即死・呪殺反射』
『土・金属性無効』 『精神・神経無効』 『飢餓耐性』



「やるじゃねぇかミギカラ、ガンダーラ最強はお前だ。ハハハッ」

「お褒めに与り恐悦至極。このミギカラ、これまで以上に粉骨砕身して主様とアートマン様にお仕えしたく存じます。イェア」

『また無様ブザマな“ダンス”を踊らないように気を付けなさい』

「あ、ハイ、そうですね、気を付けます!!」


 あぁ、駄目なダンス踊りそうだなぁ……
 威厳がある分、失敗した特の残念度が凄そうだ。


「しかしアレだな、ゴブリンのまま一気に進化したのはいいが、そうなると、やっぱり段階を踏んで高みに到達したヤツより、能力は低めになるのか?」

『そうですね、ホブゴブリンとゴブリンでは能力の上昇率が違います、今回はゴブリンの能力上昇率でレベル255まで上がった事になります』

「なるほど、一長一短があるわけだな」

『スコルやハティの方法に似たレベルリセットの秘儀もありますが、アートマンが不完全な状態では命の危険を伴いますのでお勧め出来ません』

「そんな事も出来るのか……」

『実行している勇者も居るでしょう。人間がリセットすると能力は百分の一になりますが、スキルレベルは変わりませんので、魔族や魔獣を狩ってすぐに元のレベルに戻れます』

「マジか? それは神の加護で?」
『加護ではなく授かった能力です』

「良い能力貰ったなソイツ」
『能力を使う度に“人の心”を失いますが』

「ブヒッ、ゴミがクズに変わるだけじゃねぇか」
「……そのまま殺人鬼にでもなってくれると助かるな」
「フッ、勇者など、このミギカラがチョチョイですわ」
「あわわ、わ、私が絞め殺します……」


 人の心を失う、か。本当に駒扱いだな。
 善人だったら大きな損失になりそうなもんだが……


『勇者に一般的な意味での“善人”は居りません。現地勇者も召喚勇者も、すべてサイコパスです。レベルリセットした勇者は、僅かに残った人の心を失った化物ですね』

「は? 何でそんな……」

『召喚勇者は各国の王族や教会関係者により異世界から召喚されます、その際、異世界の神々は“不必要な者”を優先的に召喚転移魔法効果範囲へ導き、世界の“ゴミ”をこちらに移し、手を汚さずに排除します。現地勇者は神々の神託によって凶悪なサイコパスから選ばれます』

「なんじゃそりゃ…… って事は、この世界はゴミ処理場かよ。不必要な者ってのがサイコ野郎か?」

『そうです。アートマンが現時点で開示した情報によると、召喚された精神病質者サイコパスは、その九割が召喚初日にゴブリンか人間の盗賊を殺害します。一週間以内に魔族や人間を殺害する確率は97%、三ヶ月で100%になります』

「ブッヒー、そんな危ねぇ奴ら牢にブチ込んどけよ~」

『実際に牢獄へ送られた勇者も存在しますが、100%脱獄されます。その上、召喚に関わった者は皆殺し必至、時には王を弑殺され、運が悪ければ王位を簒奪されて国を滅ぼされます。ただし、美しい王女は助かります』

「……姐者、人間は何故その様な者共を召喚する?」

『牢獄へ送られるのは重度の精神病質者です。ほとんどの勇者は出奔して“召喚された都市”またはその付近の街で冒険者になり、魔族や他国の者を虐殺し始めるので、各国のトップはそれを望んで召喚します。なお、異世界人は現地人よりも能力が全体的に優れていますので、それも異世界人を召喚する要因の一つです』

「尊妻様、な、何故出奔して、その都市で冒険者に?」

『サイコパスの思考は私にも理解しかねます』


 そりゃ理解出来ねぇよな、狂ってるし。

 しかし、なるほど、召喚した虐殺マシーンを野に放つわけか…… 異世界の神々が召喚拉致の手伝いをしているのには驚いたが、危険物の処理が出来て大助かりって事かねぇ。

 神が直接サイコ野郎を始末するワケにはいかんからな。地上の者に手を下せないって辺りの禁則事項はどこの神界も同じか。

 だが待てよ、召喚は“集団転移”ってのがあるってヴェーダは言ってたぞ?

 そいつらも全員勇者なのか?
 危ねぇなオイ。あ、隷属魔法で縛るのか!!


『残念ですが、召喚勇者の多くは隷属魔法をレジスト出来ます。団体で召喚された者も広義の召喚勇者、すべてサイコパスです。各世界の神々が各々の世界で危険人物を纏めて一か所に集め、召喚転移魔法に備えています。学校等に若年のうちからサイコパスを集めておく方法が一般的です、社会に出て事件を起こす前に処分出来ますので』

「何てこった…… そんな奴らがよくまぁ問題を起こさずこの世界でやっていけるな、前の世界でも危なかったんだろ?」

『サイコパスは“気狂い”とは違い、見た目ではその精神病質を認識出来ません。前の世界では犯罪行為に及ぶ一歩手前の状態でした。さらに、召喚勇者達の【広範囲無差別白痴スキル】や、【常時発動型精神汚染スキル】により、勇者の周囲に居る者はその異常な言動に疑問を抱き難くなります』

「また変なスキル持ってやがんなオイ」

『広範囲無差別白痴スキルは、勇者の周囲に居る者達を“アホ化”します。知力が勇者の半分以下になり、勇者の知恵に敵うものが居なくなります。これは魔族にも効果を及ぼしますので注意して下さい』

「注意ってお前……」

『今まで優秀だった者が突然アホな行動をとり、勇者に討ち取られます。戦争などで自陣の中に突っ込まれたら混乱必至、自滅します。白痴スキルの対処法は、神経耐性を上げて脳への干渉を防ぐ予防法と、神経攻撃を無効化する結界等があります』

「はぁぁ…… 精神汚染の方は?」

『異性特効型の魅了スキルです。頭を撫でる事や笑顔を見せるだけで対象は魅了されます。精神耐性でレジスト・回避可能です』

「頭を何、撫でる? ってか、それで惚れられてオカシイと自覚できないくらい、異世界勇者はイケメン揃いなのか? 前の世界でもモテモテ? 普通はオカシイと思うだろ」

『逆です、モテる要素は転移前も転移後も皆無です。ですので、常識が備わっておらず、一般的な女性が嫌がる行為を平然と行います。しかし、相手の知能が勇者の半分以下に低下した状態で精神汚染を仕掛けますので、髪型を崩されようがケモ耳に触れられようが胸を凝視されようが、対象は一切文句を言わず、喜びます。無論、勇者もそれをオカシイとは感じません』

「ふぅ~ん、幸せだろうな、勇者」

「ブッヒ、羨ましいスキルだなぁ……」
「……くだらん」
「さ、最低のスキルです!!」
「キング的には、欲しいかな」


 フェチモンで異性を誘って口説き落とす魔族とはまた違ったやり方だな。相手の意思は関係なさそうだが。

 要はアレだろ、肉奴隷を量産させるスキルだろ?
 人間同士で勝手に奴隷祭りすりゃいいが、何の為にそんなスキルを持ってんだ?


「そもそも、どうやってそんな危ねぇスキルを手に入れた?」

『勇者を召喚した人物や組織を加護する神々が与えたスキルです。異世界人の遺伝子と能力を自陣営に広める為でしょう。種馬ですね』

「ろくでもねぇ事考えやがるな、この世界の神々は」

『ですが、この世界の王族や皇族は全て勇者の血筋です、神々の目論見は成功したと言えます。勇者の子孫も微弱ながら白痴スキルを展開していますので、臣下の暗愚化は万全です』

「ひょとして、隷属魔法は勇者由来か?」

『そうです。固有魔法として召喚勇者が所持していましたが、その子孫には遺伝性継承魔法として発現されました』


 何だかなぁ……
 異世界人とこの世界の神々は、害悪にしかなってねぇ。

 かと言って、勇者の周りに居る人間を憐れには思えんが。

 アホになったからって魔族を殺していい理由にはならん、アホはアホなりに良識や優しさを持っている、その良識や優しさを魔族に向けない時点で憐れむ必要が無い。そんな人間や獣人の肉奴隷もどうでもいい、勝手に子作りしてろ。

 ただ、その中に魔族が居たら……


「あ、兄貴、落ち着こうぜ、な? どうしたの?」
「……あ、兄者、ミギカラ殿を祝う場だ、抑えろ」

「あぁ、悪ぃ悪ぃ。胸糞の悪ぃ事考えちまった。ってか、ミギカラの南浅王授爵を祝わねぇとな」

「いやいや主様、有り難い事で御座いますが、それはまたいずれ。今は魔竜の行動と中部魔族の動きを探る事に集中致しましょう」

「お、お前……」


 ミギカラが真剣な顔でマトモな事を言っている……
 宴で真っ先に裸踊りするジジイだったのに……
 これがキングになったミギカラ…… 似合わねぇ……

 だが、ミギカラの言っている事は正しい。
 今回の魔竜眷属は弱かったが、それは飽くまでもダンジョン外での事、ダンジョン内の魔竜眷属はこんなモノじゃぁない。

 それに、眷属がダンジョンに戻らない事を知った魔竜がどういった行動をとるのか、そこがまったく分からない。

 予想では膿に浸かった中部魔族に何らかの命令を出して、浅部に送ると思っていたんだが…… 眷属が直接動きやがった。

 魔竜からダンジョン外での全権を委ねられた妖狐達の判断なのか、ただのお遣いに来た妖狐達の独断だったのか、その辺りもよく分からん。

 今回分かった事と言えば、四人のテイマー達は全員ハーピーが捕らえた冒険者だったって事だ。ヴェーダが知るピッピ達の記憶に、ハーピー達が捕縛した四人の姿を確認している。

 テイマーは魔竜の眷属ではなかった、隷属状態でも契約に縛られている状態でもない。考えられるのは“牧場”で餌付けされたか、牧場に人質が居るってところだが、これはハッキリ言ってどうでもいい。

 人間が魔竜と組んでいようが飼い馴らされようが、俺達には関係ない。どっちも敵で滅ぼす対象だ。牧場で憐れに飼われていたとしても、まったく助ける気は無い。魔竜をブッ殺した後に俺が牧場経営引き継いでやるよって話だ。

 とにかく、今は戦略を変えずに北の動きを注視しておく。

 今日のところは最後に始末した妖狐とテイマーをアートマン様の許に送って、四頭のワイバーンを眷属化したら、第一砦に眷属の幹部格を集めて北伐会議だ。


 あ、使者の準備とアレも試さねぇと……



有り難う御座いました!!

【名前】レイン・ブラド=ナニイロダ
【種族】亜竜系蜥蜴人・リザードガード
【レベル】142 【年齢】23 【性別】男

【状態】絶好調 【ジョブ】槍術使い
【爵位】小エリアボス

【HP】44万2,541 【MP】18万9,438
【総合力】997万4,796パワー

【特技】
『槍術:Lv29』 『怪力:Lv14』 『リザードブレス:Lv1』
『水竜拳:Lv12』 『水魔法:Lv13』 『自然回復:中』
『威圧』 『淡水一泊』

【称号・加護】
『アートマンの加護・微=総合力2%上昇』
『ハードボディ=防御力30%上昇』
『逆鱗・テメェの血は何色だ=一時的に総合力2倍』
『寡黙=シブい大人が好みの年下魔族はキュンとくる』
『浅瀬の鬼=浅瀬の戦闘で総合力30%上昇』
『南都次男坊=兄弟が傍に居ると能力が30%上昇』

【耐性】
『毒・神経無効』 『水属性無効』 『斬撃・刺突反射』
『精神耐性』
+注意+
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