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銃を持たないと誓った男がなぜ戦争にいくのか
映画館に行くたびに「ハクソー・リッジ」の予告を見せられました。
殺し合いをするのが戦争なのに、「僕は銃にふれません」という戦争の常識を覆す男。その男が衛生兵として戦場へ行き、多くの人を救う。それも実話だと言うのです。
はい、感動してください。そんな映画のような気がしてみる気が起きず、見ないでいました。
宗教的理由から銃に触れるのを拒否するのだったら、戦争に行くのを拒否すればいいじゃないですか。
「蝶のように舞い、蜂のように刺す」と言った世界ヘビー級チャンピオンのモハメド・アリは、ベトナム戦争の徴兵を拒否したことから、有罪判決をうけ(最終的には破棄)、王座を剥奪されました。
それがこの映画の主人公は戦場に行くというのです。おかしくないですか?
そしたら、購読しているブログにこんな記事がありました。
どこに感動したかといえば「主よ、もう1人助けさせてください」と何回もデズモンドが言うシーン。
1晩中助け続けるデズモンドの活躍から目が離せません。敵である日本兵まで助けるデズモンドに強い感銘を受けました。
敵である日本兵まで助けちゃうのかよ!
銃を持たないと誓った人がなぜ戦争にいくのか、確認したくなったので映画を見ることにしました。
映画のデズモンドは面倒臭い奴
銃を持たないと誓った男がなぜ戦争にいくのか。その答えはデズモンドが愛国心の強い男だからです。
銃を持たないのは宗教上の理由ですが、愛国心が強いから戦場に行きたいのです。
モハメド・アリのように国に逆らったりする気持ちは全くないのです。
面倒臭い奴ですね。
だから、戦場に行くまでにトラブルが起きてしまいます。クライマックスである戦闘シーンの前はそのトラブルが中心に描かれます。
戦場に行きたいデズモンド VS 転属させたい軍の幹部
これが映画の中心です。詳しくは映画を見てください。
激しい殺し合いの中、彼一人が命を救おうとする
スティーヴン・スピルバーグ監督「プライベート・ライアン」のオープニングは過激な戦闘シーンが延々と続きました。
この「ハクソー・リッジ」の戦闘シーンはさらに時間が長く、もっと残酷だったように思います。
(Wikipedia「Desmond Doss」Doss on top of the Maeda Escarpment, May 4, 1945)
「ハクソー・リッジ(Hacksaw-Ridge)」とは戦闘が行われた崖のこと。弓のこの歯のような崖を米軍は「ハクソー・リッジ」と呼んだようです。
- hacksaw:弓のこ(で切る)
- ridge:尾根、山の背
こちらに作品の舞台を紹介したページがあります。
見終った感想はとても感動的な映画でした。
激しい殺し合いの戦闘の中、彼一人が命を救おうとします。戦争での殺し合いが狂気ならば、その中で銃を持たないと言うのも狂気です。
その姿に涙が流れて来ました。
激しい戦闘の後に訪れた静かな時間。デズモンドは仲間を救助して崖から下し続けます。
彼は、狂気の中、錯乱状態で救助していたんですよね。
見ないつもりの映画を見るきっかけを作って貰ったことに感謝します。
神を信じ切っているデズモンド
デズモンド・ドスは実在の人物です。Wikipediaに詳しく紹介されています。
デズモンドを演じたアンドリュー・ガーフィールドが魅力的でした。
ちょっとひ弱そうな外見で、ちょっとオドオドしたような感じがあります。日本の役者さんで言えば、雰囲気は「北の国から」の吉岡秀隆 - Wikipediaさんに似ているような気がします。
そんなひ弱そうなデズモンドなのに、強固な意志を見せる。それがこの映画の見どころです。
アンドリュー・ガーフィールドはマーティン・スコセッシ監督の『沈黙‐サイレンス‐』では、信仰を捨てるのか信者の命を救うのか、と信仰に迷うロドリゴ神父を演じました。
ロドリゴ神父を守るために死んでいく信者達を見て、奇跡を起こさない神に対して苦悩します。それでも、なぜ、神は沈黙したままなのか・・・、と神の存在を疑います。
今度は対照的に、デズモンドは神を信じ切っています。ひ弱そうなデズモンドが強い意志を持って、銃をもたないけれど戦地へ行かせてくれと主張するのは神を信じきっているからです。
「ハクソー・リッジ」は戦争での殺し合いという狂気の中で、銃を持たないで人の命を救助するデズモンドの狂気が描かれていました。
それは見事で感動的でした。
まとめ
映画館に行くたびに「ハクソー・リッジ」の予告を見せられ、銃を持たないと誓った男がなぜ戦争にいくのか、安っぽいヒューマニズムを描いた映画なんじゃないかと思い、映画を見に行くつもりがありませんでした。
ブログ「【映画】メルギブソン監督ハクソーリッジの感想は名作・「世界一の臆病者」が英雄になる!」を読んで、人を殺さないと誓った男がなぜ戦争にいくのか確認したくなり、映画を見てきました。
映画はとても感動的でした。激しい殺し合いの戦闘の中、彼一人が命を救おうとします。なんでなのでしょう。その姿に涙が流れて来ました。
デズモンドはヒューマニズムとか関係なくて、面倒くさい狂気の男ですけれど、彼のお陰で命を助けて貰った人たちがいっぱいいて、実際の声が最後に流れます。
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