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【社会】

「核戦争に勝者は存在しない」 被爆者治療続く「原爆は今も」

 国際赤十字・赤新月社(せきしんげつしゃ)連盟の近衞忠〓(このえただてる)会長(78)が、米ニューヨークの国連本部で開催中の「核兵器禁止条約」の制定交渉に合わせて、核廃絶を訴える文章を本紙に寄せた。唯一の被爆国として「核戦争に勝者は存在しない」と主張している。一方、条約最終案には「核兵器使用の被害者(HIBAKUSHA=ヒバクシャ)の受け入れ難い苦しみと損害に留意する」との表現が残り、七日に採択されるとみられる。 (加藤行平)

 近衞会長は二〇〇九年、アジア出身者で初の連盟会長に就任し、現在二期目。制定交渉が始まった先月半ば、オーストラリア紙に英語で、フランスの新聞にフランス語で会長としての思いを寄稿。先月末、「日本の読者に読んでほしい」と本紙に日本語で寄せた。核保有国や日本が参加していない交渉の行方に「強い危機感があった」と話す。

 冒頭、北朝鮮のミサイル発射に備えて国内の一部で実施された避難訓練を踏まえ、「核戦争の恐怖が学校に職場に家庭によみがえってきている」と指摘。核攻撃に対して「人類は完全に備えを欠いている」「文明は地上から抹殺される」と警告した。国内の被爆者が治療を続けている現状にも触れ、「原爆は今もって爆発し続けている」と訴えた。

 制定交渉では、史上初めて核兵器を非合法化する条約が生まれるかが注目されている。寄稿文で近衞会長は「すべての国家がこの機会を生かすことを要望する」と呼び掛け、「明快な真実は、核戦争に勝者は存在しないという、ただそれだけ」と結んだ。

 近衞会長は取材に「唯一の被爆国である日本から(連盟の)会長が出ているのだから、何らかの発信をしてもいいと思った」と語った。

 連盟は各国の赤十字と、イスラム教国での名称の赤新月社が加盟する世界最大の人道支援団体で、災害時の救援活動を行う。本部はスイスのジュネーブ。

※〓は、火へんに軍

 

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