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北朝鮮「ICBM発射成功」 米本土への攻撃能力誇示

2017/7/4 20:00 (2017/7/4 22:36更新)
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 【ソウル=鈴木壮太郎】北朝鮮の国防科学院は4日、大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星14」の発射実験に成功したと発表した。米本土を射程に収めるミサイル技術を誇示することで米国の敵視政策の撤回と、直接交渉による金正恩(キム・ジョンウン)体制の保証取り付けを狙ったものだ。ICBMの発射実験成功が事実とすれば北朝鮮の核・ミサイルの脅威は新たな段階に入る。

朝鮮中央テレビが4日放映した、ICBM「火星14」発射実験の写真=共同

朝鮮中央テレビが4日放映した、ICBM「火星14」発射実験の写真=共同

 朝鮮中央テレビが同日午後3時(日本時間午後3時半)から「特別重大報道」として伝えた。報道によると、金正恩委員長が3日に発射実験を指示。正恩氏が立ち会い、4日午前9時に発射した。韓国軍によると、平安北道の方峴(バンヒョン)付近から発射された。

 ミサイルは最大高度2802キロメートルで、飛行距離933キロメートル、約39分間飛行した。日本政府によれば、日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したとみられる。通常より高高度で打ち上げる「ロフテッド軌道」で発射され、北朝鮮は日本海上の目標水域を「正確に打撃した」と断定した。

 韓国の専門家は通常通り発射した場合の射程は8000キロメートル前後と分析。シアトルなど米西海岸の都市に届く計算だ。

 北朝鮮は4日の報道で「世界のどこでも攻撃できる最強の大陸間弾道ミサイルを保有する堂々とした核強国として、米国の核戦争の脅威・恐喝を根源的に終息させる」と米国を名指しし、実験成功の意義を強調した。

 ただ、北朝鮮がミサイルを発射した直後に米軍は「中距離弾道ミサイルだ」と発表しており、まだICBMとは断定していない。韓国軍合同参謀本部も北朝鮮が5月14日に発射実験をした中長距離弾道ミサイル「火星12」よりは射程が伸びていると認めつつ、「(北朝鮮の)主張通りICBMなのかは米韓情報当局で分析中」と語った。

 ロシア国防省も4日、軍の防衛システムがミサイルを追跡したデータに基づき、北朝鮮が発射したミサイルはICBMではなく、中距離弾道ミサイルだったとの見解を明らかにした。

 北朝鮮の狙いは米本土に届く核ミサイルをカードに、米国に自らを「核保有国」と認めさせて米国を交渉のテーブルに引き出し、最終的には平和条約の締結に持ち込むことにあるのは明らか。

 弾道ミサイル発射は今年に入ってすでに10回を数える。トランプ米政権は武力行使も選択肢に「最大の圧力」をかけるが、北朝鮮がそれでも発射をやめないのは、核・ミサイルが唯一の生き残り策と信じているからだ。

 米国にとっての「レッドライン(越えてはならない一線)」は、米本土に届くICBMの開発と、ICBMに搭載可能な核の小型化実験だ。今回の発射実験が北朝鮮の主張通りに成功したのであれば、それに近づいたとみられる。

 トランプ米大統領はミサイル発射後まもなく、ツイッターに「おそらく中国が北朝鮮により強い対応に出て、この愚かな行為を終わらせるだろう」と投稿し、中国に対応を促した。

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