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待て勇者、お前それジャングルでも同じ事言えんの? ~勇者に腹パン、聖女に頭突き、美少女騎士に回し蹴り~ 作者:吾勝さん

第二章

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第四十二話『あんたがたどこさ、肥後さ……の刑だ』

宜しくお願いします。




『ナオキさん、地竜のダンジョンから…… 人間が現れました。数は四、全員がドラゴンテイマーです』

「だとよ、オメェら」

「へへへ、そりゃまたゴキゲンだぜぇ」
「……よく分からんが、楽しくなりそうだ」
「あわわ、し、絞め殺しましょうっ!!」


 何でそんなに殺る気マンマンなの?
 士気が高いのは良いけどさぁ。


『ナオキさん、さらに創造召喚体が四名出て来ました。妖狐ようこ1、妖狸ようり3、大森林には居ない種族です』

「強さは?」

『妖狐の総合力は2千万、妖狸が平均1,500万、人間は千以下です。妖狐と妖狸はダンジョンマスターの眷属となっています、ダンジョン内に戻れば総合力は倍以上になるでしょう』

「詳しい能力は後でいい、誰の眷属か判るか?」


『称号欄には【魔竜の眷属】と有ります。称号効果に【土属性耐性】が有りますので、ダンジョンマスターは地竜と見て宜しいかと。なお、人間に称号は有りません』

「は? 待て待て、地竜が他種族を眷属化したって事なのか?」

『ダンジョンコアによって魔竜と化した地竜は、ダンジョンコアの精神支配、または異世界神の加護・干渉を受けたと思われます。よって、この世界の竜族とは違う異質な存在へと変貌を遂げた恐れがあります。他種族の眷属化も有り得ない話ではありません』

「何だそりゃ…… 他の種族もマスターになったら変わるのか?」

『人間以外の魔人化は前例が有りません。今回私が妖狐の鑑定を行う直前まで、アートマンから送られる知識には魔竜など存在しませんでした』

「あぁ、未来の知識は与えられない神界の禁則ってヤツか、こればっかりはどうしようもねぇな」

『アートマンが見た貴方の未来には魔竜が関わっていたのでしょう、既に【大森林の魔竜】という綺麗に纏められた新たな情報が私の知識に追加されています。魔竜の能力等はまだ空欄ですが、地竜が魔竜化した概要は閲覧可能です』

「ちょっと頭にブチ込んでくれ、駄竜の『ジャングル奮闘記』なんて読むのも聞くのも面倒臭ぇ」

『了解しました』


 俺の予想じゃ『地竜はマスターの眷属』って線が濃厚だったんだが、地竜マスター説の方だったかぁ。他種族の眷属持ちってのがキタネェよなぁ~、騙された気分だよ。

 コアの影響か異世界神の影響か知らんが、魔竜を倒すなり殺すなりすれば、その辺りの事情もヴェーダの知識に追加されるだろう。

 さて、駄竜奮闘記の要点を纏めよう。


*地竜が棲みかにした洞窟は生まれたての魔窟だった。
*地竜討伐の為に洞窟へやってきた人間の軍を返り討ち。
*これによりコアが急成長。地竜による軍の殲滅はその後二回、コア大満足。

*大森林に魔族や魔獣が集まる。地竜が大森林を統べる。
*地竜と戦っていた王朝滅亡、新王朝樹立、長城が築かれる。
*人間の攻撃が止んだ大森林、洞窟の地竜も最奥で一休み。

*地竜はその後も洞窟内に入って来た魔性生物を仕留めていった。コアは地竜の生気と死亡した魔性生物の生気を吸収し続ける。

*平和な大森林に人間の勇者登場、深部まで抜かれた。
*地竜が洞窟内で勇者と激突、僅差で勝利、勇者死亡。
*地竜瀕死、洞窟の最奥へ移動。洞窟の壁を喰って体を癒す。

*地竜が壁を喰いまくっていると、壁の向こうに空間発見。
*更に奥へ進む地竜。やがてコアが設置された空間に到着。

*地竜はコアを見つめて一度だけ吠えた。



 そして地竜は魔竜になりました~……

 地竜にいったい何が起こったのかは分からない、コアの置かれた部屋で神の声を聞いたのか、見つめていたコアの声を聞いたのか…… 色んな憶測を立てられるが、コアと契約を結んでマスターになった事実は確認出来た。

 ヴェーダやアートマン様が俺に偽りを教えているとは思わない、俺が信じきっているというのもあるが、たとえ偽りだったとしても、それが神の意思なら是非も無い、与えられた情報で駄竜をブッ殺せばいいだけだ。

 これは思考停止でも何でもない、今生に賜った天罰の一部として有り難く虚報偽言を頂戴し、それを自分の意思で使わせて貰う。

 男が女に騙された時は、『ナイスジョーク』の一言で赦すもんさ。

 それも、好い男の条件だ。


『最近、ジャキがカッコ良く思えます』
「ナイスジョーク」
『有り難う御座います』

「え? 俺が何? ってか姐さん、蟲をダンジョンに入れて偵察出来ねぇのかい? 魔竜も眷属も敵の数も全部調べちまおうぜ」

『ダンジョンに侵入した生物は、コアとマスターが正確に把握しています。【蟲系ダンジョン】なら潜入後に即殺される恐れは有りませんが、今回のダンジョンは【獣系】、侵入した蟲は吸収対象としてダンジョンに生気を抜かれるでしょう』

「え? 何で獣系って判んの? そもそも蟲系とか獣系とか何?」

『ダンジョンはマスターの【眷属適性】によって、創造召喚出来る種族が決まります。魔竜の眷属は妖狐と妖狸でした、蟲系眷属適性は除外されます。本来なら適性が有っても竜族が他種族を召喚して眷属化する事は無いと思いますが、この地竜はやはり特殊です』

「なるほどなぁ~、でもさ、狐と狸が創造召喚ってヤツで召喚された【養殖】だっつう証拠はあんの?」

『妖狐と妖狸にはコアが造った【魔素溜まり】から生まれる養殖と同じように氏族名が有りません、眷属進化と高レベル化により低知能の問題は解決されていますが、他の能力より知力だけ数段低く、生気はゼロ、間違い無く創造生物です』

「んだよ、そりゃ決まりだな」


 創造生物、俺はまだ見た事がない。

 養殖が居る近場と言えば、長城の第三城門から出て南東と南西に100kmほど離れた場所に在る魔窟、第一城門から西南西へ30kmの位置に魔人『魔ドンナ』の『パパドンプリーチ城』が在る。

 その三か所には養殖がウジャウジャ居るだろうが、長城が出来てからは大森林に長城外の養殖は入っていない。地竜が来る前の大森林魔窟から湧き出た養殖や、ゴブリンや猪人族が攫った養殖は既に姿を消し、その養殖因子は俺とアートマン様がゴブリンから消した。

 この大森林で養殖因子を持つ可能性が有るのは、魔竜の眷属を除けば猪人族のみ。

 何だか寂しくなってくる。不思議だ。

 コアやマスターの意思で創造された生物、その大半は肉壁や他者の経験値となる運命さだめ

 ゴブリンや猪人の子を作るハメになった養殖達は、子孫を残したという一点だけ見れば、他の養殖よりもマシ…… いや、創造された意味と言うか、自分が存在した証を残せたのでは…… って、養殖もこんな事言われたくないよな。

 養殖の事は人類も魔族も【魔物】扱いだ、魔族はダンジョンに潜って養殖狩りなんてしないが、目に入った者を本能で襲う養殖を、自分達と同じ魔族だとは思えないようだ。

 実際、養殖に用が有るのはゴブリンと猪人の二種族だけ。
 普通の魔族は養殖を性の対象として見ない。普通ではない奴も居ると思うが、そいつは変わった性癖の持ち主という扱いになる。

 しかし、そこに愛があればどうだ?

 養殖の知能を上げたうえで、その変態紳士と相思相愛になったら、俺は普通に祝福するだろう。

 養殖の問題点は低い知力に起因する凶暴性だ、それさえ無くなれば『生気の無い魔族』と言ってもおかしくはない。俺が養殖を眷属化すれば創造生物ですらない存在になるかも知れん。

 そうすれば、魔族の一員として迎え入れるのも難しくないような……

 養殖は理論上【無限湧き】が可能だ。
 コアに生気を送り続ける限り、創造召喚が止む事はない。これはダンジョンマスターが恐れられる一因だ、だが、蠱毒や肉壁として使い潰さずに育て上げれば、短期間で大軍団が出来上がる。

 しかし、それじゃ駄目だ、兵隊限定の扱いじゃぁ俺も養殖も納得出来ん。育て上げるって言うのは武力だけの事じゃない、赤ん坊を育てるように色んな事を教えてやらなきゃ『魔族の一員』なんて言えない。

 大軍団の兵としてではなく、ガンダーラの住民、俺の眷属、アートマン様の加護を得た存在として共存出来れば、そう遠くない未来にガンダーラは魔族の希望になれるんじゃねぇかな……


『面白い考えですね』
「ヴェーダ、コアが欲しいな」

『ダンジョンマスターになると?』
「ならねぇよ、動きがとれねぇ」

『では、眷属にマスターをやらせますか?』
「やらせるかよ、そいつをダンジョンに縛っちまう」

『フム、難しい問題ですね。アートマンなら……』
「知ってんだろうな、俺がどうするか。ハハハ」


「おいオメェら、兄貴が姐さんと面白そうな話してんぜ?」
「え? そ、そうだね、アハハ、おもしろーい!!」
「……兄者がダンマスか、悪くない」


 とりあえず、コアの事は後で考えるとして、魔竜のダンジョンから出て来た奴らが何をするのか確認しねぇとな。


「それで、狐と狸は何やってんだ?」
『人間が山脈からワイバーンを呼び寄せました』

「ワイバーン、翼竜か、そう言えばドラゴンテイマーだったな人間の四人は。それに乗って…… ハーピーの所か」

『そのようです。四体のワイバーンにそれぞれ眷属とテイマーが対になって乗りました。蜂では追い付けませんね、周囲の蜂を予想航空路に並べて対処します』

「増援を送れ、カスガから今朝貰った千匹を使っていい。指揮は任せる」

『了解しました。以後、私が指揮を執ります』

「あとは、ハーピー不在の北浅部に行った魔竜の眷属がどうするか、だな」

「こっちに来たらやっちまおうぜ兄貴」
「あわわ、わ、私も、頑張ります!!」
「……ワイバーンは、助けたい」


 レインはワイバーンに同情的だ。
 同族意識みたいなもんが有るのかな?


「ワイバーンか、たまに空を飛んでるとこ見たが、青っぽい翼竜だったな。山脈に棲んでるなら勝負して眷属化してみるか。だが、今飛んで来てるヤツはテイムされてるからな、四匹の行動次第で処分を決める」

「……ああ、それでいい」

「なるべく殺さないようにするさ。さて、お前らの装備を変えよう、戦うかどうか判らんが、準備は万全にしておく」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 あぁぁ、面倒臭ぇ……

 来なくていいのに来やがった。
 中部の奴らを動かせよ馬鹿野郎が。

 これが良い事なのか悪い事なのか、今のところ判断はつけ難い。

 北浅部へ向かった魔竜の眷属達は、ハーピーの不在に怒りを表し、大木の上に組み上げられた木造の家屋を破壊して回った。

 巨木の上に在ったクイーンの小さな城は徹底的に壊され、その巨木も妖狐の火魔法で焼かれたそうだ。絶対ブッ殺す。

 暴れ回った妖狐達は東西の二手に分かれ、東浅部と西浅部を回って南浅部南側で合流。ここで奴らは魔族が居ない事を報告し合った。

 そして現在、今度は四組に分かれて浅部の南端からジグザグに飛びながら北上している。

 南浅部の西側から飛んで来た妖狸の一人がもうすぐガンダーラに辿り着く。


『あと4分でマハーカダンバの上空を通過します』

「じゃぁ、ちょっくら御神木様に登ってくるわ。獲物が落ちたらフクロにして殺せ」

「け、賢者様ぁ、私も一緒に……」

「心配すんな、殴り合うわけじゃねぇ。俺が一方的にヤルんだからよ」


 手も足も出させるかっつんだよ。
 ハーピーの家代は高ぇぞ狸野郎。



有り難う御座いました!!
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