視聴率が連日20%台を突破するなど、ますます注目を集めている放送中のNHK朝ドラ「ひよっこ」。毎朝早起きして、楽しみに見ているという作家の林真理子さんが、脚本家・岡田惠和さんにその舞台裏を伺いました。
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林:有村架純さんは、岡田さんの「ぜひ」というリクエストだったんでしょう?
岡田:はい、そうです。朝ドラはオーディションのイメージがありますよね。17、18歳の人を中心に書くなら真っさらな人でもいいんですが、今回のように18歳ぐらいから25歳ぐらいまでの話にちょうどいい役者さんで、実力がある人は、すでにある程度キャリアがあることも多いんですよ。
林:ええ。
岡田:特に工場の話は、ヒロインが主役然とした描かれ方ではない、ある種の群像劇です。その中でちゃんと芝居ができて引きつけられる人じゃないと、「みね子、いたっけ?」となってしまう可能性があります。彼女だとそういう心配がないのです。
林:なるほど。
岡田:彼女、人の話を聞く芝居が上手ですよね。台本上で中心に描かれていなくても、きちんと「みね子」でいられる演技は、ある程度の経験がないと厳しいと思っていたんです。基本的には、朝ドラのヒロインになるのは一生に1回。今、彼女に演じてもらいたいなと思いました。
林:毎朝心に残るセリフが必ずあるんですよ。「すずふり亭」(みね子が働く赤坂の洋食屋)のオーナーの鈴子さん(宮本信子)が、「仕事は、時間中は精いっぱいやって、終わったら忘れる。でないと、いい仕事はできないよ」って言うじゃないですか。今、ああいうことを言ってくれる大人はいないし、朝ドラは人生訓をたれるわけじゃないけど、聞いてよかったと思うセリフがあるかないかが、とても重要なことじゃないかと思うんです。
岡田:大人に若い子が憧れる職場だと、若い子は自由に成長します。後輩が入ってきたときにみね子ちゃんが同じことを繰り返してやると、それだけで世界はうまくいくんじゃないかという感じがしますね。
林:ああいうオーナーさんがいたらいいなと思いますよ。仕事をちゃんと教えてくれて。
岡田 朝ドラはたいていヒロインが働く話ですが、今回、日の当たらない職業を細かいところまで書いてみようと思ったんです。トランジスタラジオの基板に部品をチクチク刺していく仕事や、レストランで料理を運ぶ仕事などは、これまでなかなか描かれてこなかったと思っていて。
林:周りを芸達者な方が固めています。たとえば和久井映見さん、すごくいい味を出していますよね。
岡田:すてきでしたよね。
林:白石加代子さんがアパートの大家さんの役で出ていらしたときにはビックリしました。舞台の大女優さんで、独特の存在感で空気をさらっていましたが、それでも調和しているってすごいですよね。
岡田:そうですよね。テレビで何度かお仕事させていただく機会があったんですけど、ご本人も朝ドラに興味がなくもないという感じだったんです。「私が朝ドラに出て大丈夫かしら」と言ってましたけど(笑)。
林:うちの娘、アパートの大学生が出てきて喜んでましたよ。「最近人気のナントカカントカよ」って言うんですけど、私、わからなくて。
岡田:竹内涼真君ですね。有村さん以外の若者は、幼なじみの2人も、寮の女の子たちも、「すずふり亭」の若いコックたちも、全員オーディションだったんですよ。オーディションは1年ほど前で、当時は彼も今のように有名ではなかったんです。
林:このあいだ増田明美さんにもここに出ていただいて、「朝ドラのナレーション、すごくいいですね」と言ったら、岡田さんと日テレの番組審議会で会ったのがきっかけだとか。
岡田:そうです。僕、なぜかいつも増田さんの隣の席で、「いい声だなあ」と思っていて。マラソンの解説をされているのを聞いていても、彼女は日の当たらない人の味方じゃないですか。陰の努力を掘り下げる人だから、「頼んでみたらどうかな」と言ったら、NHKもノリノリで。
林:ご両親がすごく喜ばれて、「ひよっこ」を朝と昼と夜のBS、1日3回ごらんになると言ってましたよ。
岡田:ほんとですか。すごいな(笑)。
林:増田さん自身も、みね子さんみたいな感じの農家で元気よく育って、今も野菜とかお米を送ってもらえると言ってました。
岡田:今回、そこは自分の手柄だと思っています。「よく思いついた、俺」みたいな(笑)。
※週刊朝日 2017年7月7日号より抜粋
有村架純&増田明美の「ひよっこ」起用秘話 脚本家語る
岡田惠和(おかだ・よしかず)/1959年、東京都生まれ。雑誌のライターなどを経て、ドラマ「香港から来た女」(1990年)で脚本家デビュー。NHK連続テレビ小説「ちゅらさん」(2001年)で橋田賞、向田邦子賞を受賞するなど、受賞歴多数。近年の主な作品に「おひさま」(11年)、「泣くな、はらちゃん」(13年)、「私という運命について」(14年)、「ど根性ガエル」(15年)、「奇跡の人」(16年)など。現在、脚本を手掛けるNHK連続テレビ小説「ひよっこ」が放送中。(撮影/写真部・大野洋介)