性被害条例 県民に検証報告を示せ
県の「子どもを性被害から守るための条例」が成立から1年たった。反対意見を押し切って制定されたのに運用状況は不透明だ。
一人の男性の自殺が波紋を広げている。条例に規定された深夜外出制限の違反容疑で書類送検されていた。
条例は、保護者の委託や同意などがある場合を除き、18歳未満を深夜(午後11時~午前4時)に連れ出す行為を禁じている。違反は30万円以下の罰金だ。
茨城県の地方公務員男性(当時23歳)は、1月下旬の深夜、南信地方の10代後半の少女を誘い出し、公園に駐車した自身の車に一緒に乗った疑いで摘発された。端緒は職務質問。県警が公表しているのはここまでだ。
遺族への本紙の取材によると、スマートフォンの出会い系アプリで少女と知り合い、2回会った。深夜になったのは、親が仕事で家にいない時間を少女が指定したためという。
男性は「相手の嫌がることは一切してない」と話していた。だが、「仕事を失い、悔やみながら人生を送るのがつらい」という内容の言葉をパソコンに残し、自室で首をつった。
少女の母親は、自殺を知った娘が2時間以上泣き続けたことや、父親を早くに亡くし、寂しさがあったことを証言している。
浮かび上がるのは、性被害が起きていなくても、深夜に親の許可なく一緒にいたというだけで処罰される現実だ。改めて処罰規定の妥当性が問われる。
深夜外出制限は、18歳未満が自由意思で外出しようと、相手が恋人、友達であろうと関係なく適用対象になる。子どもの自由が過度に制約される。県弁護士会はそんな指摘もしてきた。
問題は、摘発された事例が十分、検証されていないことだ。県が先月、条例の適用状況を報告した青少年問題協議会で事例の詳しい説明はなかった。
条例にはもう一つ、処罰規定がある。威迫や欺き、困惑によって18歳未満に性行為やわいせつ行為を行ったり、行わせたりすることに対してだ。真摯(しんし)な恋愛でも捜査対象になると懸念されている。摘発例はないが、検証されなければ懸念は払拭できず、捜査の歯止めにもならない。
条例は「施行の状況等を勘案しつつ検討する」という見直し条項を設けている。県は詳細な検証報告書を少なくとも1年ごとにまとめるべきだ。それを県民に示してこそ見直し条項が生きる。
(7月2日)
一人の男性の自殺が波紋を広げている。条例に規定された深夜外出制限の違反容疑で書類送検されていた。
条例は、保護者の委託や同意などがある場合を除き、18歳未満を深夜(午後11時~午前4時)に連れ出す行為を禁じている。違反は30万円以下の罰金だ。
茨城県の地方公務員男性(当時23歳)は、1月下旬の深夜、南信地方の10代後半の少女を誘い出し、公園に駐車した自身の車に一緒に乗った疑いで摘発された。端緒は職務質問。県警が公表しているのはここまでだ。
遺族への本紙の取材によると、スマートフォンの出会い系アプリで少女と知り合い、2回会った。深夜になったのは、親が仕事で家にいない時間を少女が指定したためという。
男性は「相手の嫌がることは一切してない」と話していた。だが、「仕事を失い、悔やみながら人生を送るのがつらい」という内容の言葉をパソコンに残し、自室で首をつった。
少女の母親は、自殺を知った娘が2時間以上泣き続けたことや、父親を早くに亡くし、寂しさがあったことを証言している。
浮かび上がるのは、性被害が起きていなくても、深夜に親の許可なく一緒にいたというだけで処罰される現実だ。改めて処罰規定の妥当性が問われる。
深夜外出制限は、18歳未満が自由意思で外出しようと、相手が恋人、友達であろうと関係なく適用対象になる。子どもの自由が過度に制約される。県弁護士会はそんな指摘もしてきた。
問題は、摘発された事例が十分、検証されていないことだ。県が先月、条例の適用状況を報告した青少年問題協議会で事例の詳しい説明はなかった。
条例にはもう一つ、処罰規定がある。威迫や欺き、困惑によって18歳未満に性行為やわいせつ行為を行ったり、行わせたりすることに対してだ。真摯(しんし)な恋愛でも捜査対象になると懸念されている。摘発例はないが、検証されなければ懸念は払拭できず、捜査の歯止めにもならない。
条例は「施行の状況等を勘案しつつ検討する」という見直し条項を設けている。県は詳細な検証報告書を少なくとも1年ごとにまとめるべきだ。それを県民に示してこそ見直し条項が生きる。
(7月2日)