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 「自民党に対する、厳しい叱咤(しった)と深刻に受け止め、深く反省しなければならない」

 自民党の惨敗に終わった都議選の投開票から一夜明けたきのう、安倍首相は「反省」の言葉を繰り返し語った。

 問題は、首相が何をどう反省し、具体的な行動につなげていけるのか、だ。

 首相は内閣改造を検討しているという。政権浮揚が狙いだろうが、国民が求めているのは看板の掛け替えではない。

 敵と味方を峻別(しゅんべつ)し、異論には耳を傾けず、数の力で自らの主張を押し通す。首相自身の強権的な体質を反省し、改められるかどうかが問われている。

 国会では協力的な野党をことさら持ち上げ、政権を批判する野党には露骨な攻撃で応じる。

 報道機関を選別し、自らの主張に近いメディアを発信の場に選んできた。一方で都議選では、首相や二階幹事長らから、自民党への逆風の責任をメディアに転嫁する発言が相次いだ。

 「1強」の異論排除の姿勢は自民党の活力も失わせている。

 政権復帰から4年半。選挙の公認権、人事権、政治資金の配分権などを一手に握る首相の前に、多くの自民党議員が黙って追従する。党総裁任期を連続3期9年に延長する党則改定を、目立った異論もなく認めたのも自民党の単色化を物語る。

 最後は多数決で結論を出す。それが民主主義の物事の決め方とはいえ、少数派の声に耳を傾け、議論を尽くすことも民主主義の欠かせぬルールだ。首相はそのことに思いを致し、異論排除の姿勢を改めるべきだ。

 都議選敗北を受け、安倍政権は国会の閉会中審査に応じる方針だという。審議が行われること自体は歓迎するが、それだけでは足りない。

 野党が憲法53条に基づいて要求している臨時国会を、すみやかに召集する必要がある。

 53条は、衆参いずれかの総議員の4分の1以上の要求があれば内閣は召集を決定しなければならないと明確に定める。少数派の発言権を保障するための規定であり、首相の反省が本物なら、まずこの憲法の規定に従うところから始めるべきだ。

 行政府のあやまちを正すのは立法府の重い責任だ。そこには本来、与野党の区別はない。自民党の議員たちも、国会議員としての矜持(きょうじ)をもって臨時国会召集を首相に求めてはどうか。

 加計学園問題での政権の対応について、都議選の本紙出口調査で71%が「適切ではない」と答えた。反省が言葉だけなら、民意はさらに離れるだろう。

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