ハイキングやセーリング、登山、キャンプ、または自然を楽しんでいるとき、心配なのは“水が切れてしまうこと”ではないだろうか。これらのシーンでは、すぐにアクセスできるお店もないため、飲み水が無くなってしまうことは重大な問題といえる。
かといって、重くかさばる大量の水を持ち運ぶことは避けたい…。そこで開発されたのが、空気中から飲料水を生み出す、魔法のようなボトル「Fontus」だ。
これがあれば、水の心配をすることなく思いっきりアクティビティに集中することができるだろう。
「Fontus」の基本的な仕組みは、「空気中に漂う水分を集めて飲み水として蓄積する」といったものである。地球の大気には常に13,000キロ立法メートルにも及ぶ未開発の淡水を含んでいるという。「Fontus」は、そのリソースを活用しているプロダクトである。
具体的には、集めた大量の空気を太陽光エネルギーで冷却することで、大気中の水分を凝縮し、水を生み出す仕組みである。空気から水を採取する方法は、2000年以上にわたって実践されてきた方法であるという。
「Fontus」の水生成の効率は、主に空気の湿度と温度に依存しているため、湿度と温度が高いほど、より早く水を生成することができるが、、一部の条件下では水をほとんど、または全く生成しない可能性があるので、この条件をあらかじめ理解した上、使用したい。
「水分の集め方」の違いにより、「Fontus」は次の2つのプロダクトを展開している。
「Ryde」は自転車のフレームに取り付け使用する。自転車走行時に発生する大量の「風」をボトル内に取り込み、太陽光エネルギーで冷却する仕組みのため、余分なバッテリーを必要とせずエコである。取り外しや取り付けも簡単にでき、ユーザーを煩わせることはない。
「Airo」は、バックパックなどに入れて持ち運ぶ用のタイプである。巻きつけられた大きなソーラーパネルを広げ発電し、風の代わりにファンを回して、空気を取り込み冷却する仕組み。USBケーブルにより、スマホなどのデバイスを充電することも可能。
2つのタイプに共通し、「空気」「太陽」をといった、自然が与えてくれたものを活用する仕組みでありエコフレンドリーなプロダクトである。
デザインにおいても、「Fontus」はシンプルなデザインで、すでに国際的な評価を得ており、多くのデザイン賞で高く評価されている。
「Fontus」を開発したのは、ウィーンに本社があり、カリフォルニアに開発拠点を置くスタートアップ「Fontus」である。インダストリアルデザイン、電気・機械工学、製品開発、国際的な事業運営など、さまざまな国や分野の若いメンバーで構成されているチームである。
彼らが開発した「Fontus」は、三大クラウドファンディングの一つとして知られる「Indiegogo」で、資金調達に成功している。
「空気」と「太陽光」というクリーンエネルギーだけで稼働する「Fontus」は、「アウトドア」での利用だけでなく様々な活用が期待されている。
例えば、水不足の地域や干ばつ時での活用。災害などで断水した際の飲料水の確保などである。
実際に2016年には、オーストリア政府(AWS)から資金援助を受けたとのことだ。この事実は、オーストリア政府が彼らにかける期待の大きさを物語っているといえるだろう。
“never runs dry”をキャッチコピーに掲げる「Fontus」。私たちのアウトドアライフだけでなく、世の中の水に関する問題をも変えてくれる可能性を持つプロダクトだといえそうだ。
Fontus
Courtesy of Fontus