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『なぜペニスはそんな形なのか』―その理由を真面目に考えてみると…
『なぜペニスはそんな形なのか ヒトについての不謹慎でまじめな科学』(ジェシー・ベリング:著、鈴木光太郎:訳/化学同人)とあるが、「なぜ」と聞かれても、その理由を答えられる人が果たしてどれだけいるのか。誰がどうして、そんな形にしたのか。神様にでも聞いてみるしかないが、実験心理学者でコラムニストのジェシー・ベリング(著者)は、物心がついてからずっと、「不適切な」ことに真摯な興味を抱き続けてきたという。
確かに「なぜそんな形?」とは思いながらも疑問止まりで、理由を辿ってみようとする人はなかなかいない(と思われる)。しかしベリングは“それ”がどうしてぶら下がっているのかや早漏のなにが「早過ぎ」なのか、はたまたカニバリズムから自己フェラの道などを探求し、果敢に答えを導き出していく。タイトルだけ見れば毎日モンモンムラムラしている男子中学生のための本に思えるが、彼の姿勢は実にユーモラスかつ真面目だ。
で。なぜそんな形なのか。曰くほかの霊長類と比べると異様にでかく、チンパンジーやゴリラ、オランウータンのそれと比べて「派手なデザイン」の理由は、
「長いペニスは、膣の届きにくい部分に精液を残すために有利だっただけではなく、膣を満たして膨らませることによって、自分が父親になる確率を最大にする手段として、ほかの男性の残した精液の置換を容易にする」
そして
「ヒトのペニスがパートナーの女性の膣から競争相手の精液を効果的に置換するように――性交中のスラストに同期して精液を『掻き出す』ように――形作られたというものだ。とりわけ亀頭冠は、ほかの男性の精液を拭いとることによって、特別な除去装置の役目をはたす」
とある。
要するに「俺のパートナーを俺が100%妊娠させてやる!」ために、あんな形になった、そうだ……。
ただしこれは、ベリング自身の研究成果ではない。進化心理学者のゴードン・ギャラップとレベッカ・バーチの説を用いて、ベリングは自論を展開している。他の章もそうだが、彼はあちこちの文献から集めてきた論文をベースに、話を進めているのだ。だから中には「これってトンデモじゃないの……?」と思ってしまうものもあるが、その出典はすべて海外で発表されたものなので、裏を取るにはかなりハードルが高い。しかしこの本の目的はおそらく、ベリングの主張を伝えることではない。
性に関するトピックを「○○にこう書いてあったんだけど、これってどうよ?」的に世界中の読者に提示し、分かち合うためのものなのだ。
ベリング自身はオープンゲイ(カミングアウト済みのゲイ)であることから、女性の身体にまつわるオルガスムや射出(いわゆる潮吹き……)などについては、やや他人事っぽいテンションになっている。また「なぜ女の子どうしは残酷なのか?」という、女性からしてみたら失礼極まりないテーマもある。それでも彼がセレクトした性にまつわる33の「不真面目な科学」は、ふむふむとうなずきながら読むことができる(「タイムスリップして子供時代のヒトラーに会ったら、一体あなたはどうする?」を問いかける「ヒトラー問題で考える自由意志」は例外だが)。
「トシもトシだし、性のことなんてもう卒業~」と思っていても、ページを開けば誰もがきっと、男子中学生の“性春”時代に逆戻りしてしまう(あなたがたとえ女性であっても)。ここで得た知識は決して大声で人には話せないけれど、知っておくとちょっとだけ人生に明るさが増す、かも!?
文=霧隠彩子
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