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【コラム】

筆洗

 物語の展開に困った作家がこんな方法を思い付いた。丸い紙に物語上、起こりえる出来事をたくさん書き込んでおく。たとえば、「予期せぬ来訪者」「ヒロインの愛の告白」「身内の裏切り」…。それをルーレットのように回し、止まった内容に従って物語を続けていく▼一九二〇年代、ベストセラー作家になった英国出身のエドガー・ウォーレスによる「回転プロット」▼何のことはない。「神さまの言う通り」式なのだが、その偶然によって物語に思いもよらぬ急展開を与えることができたか▼「安倍一強」の日本政治に急展開である。きのう投開票の東京都議選。自民党は歴史的な大敗となった。小池百合子都知事が率いる都民ファーストの会に苦戦するとは事前から伝えられていたとはいえ、わが世の春の政権与党がここまで大敗するとは▼無論、この結果は神の手による偶然ではない。このところの自民党があの回転プロットに書き込んでいた出来事は「加計学園問題への不十分な説明」「乱暴極まりない国会運営」であり「防衛相の愚かな発言」である。これではどうルーレットを回しても、国民の物語は必然的に大敗へと急展開する▼さて自民党はこの次の回転プロットに何を書くのか。「反省」や「丁寧な説明」なら救いもある。だが「都議選の敗北にすぎない」「マスコミが悪い」では物語の結末は見えている。

 

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