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待て勇者、お前それジャングルでも同じ事言えんの? ~勇者に腹パン、聖女に頭突き、美少女騎士に回し蹴り~ 作者:吾勝さん

第二章

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第三十五話『満腹ではない、腹八分目だ』

脱字衍字が多くて悶えます。
宜しくお願いします。





 衰弱していたドワーフ達は、精気注入による眷属化を経て身体の健康状態は正常になったが、精神、心の傷はそう簡単には癒えない。

 特に女性だ、口に出すのもおぞましい非道をその心身に刻まれた彼女達には、自分達が『もう大丈夫』と思えるようになるまで、ガンダーラの奥で子供達と静かに静養してもらいたい。

 ドワーフの男性も酷い仕打ちを受けていたが、その傷付いた心は強制的に怒りで癒したようだ。彼らの体は人間に対する憎悪で満たされ、今回の作戦に参加してその怒りを爆発させようとしている。

 しかし、今回の作戦で魔族の暗躍を知られてはいけない、彼らは眷属化で髪の毛が妖蟻の様に『金白色』となり、160cm前後だった身長も170cmを少し超えるほどになったが、その幅のある独特な彼らの容姿は、肌の色が変わった程度では誤魔化せない。

 彼らの編み込んだ長いアゴ髭と逞し過ぎる上半身を見れば、誰しも『日焼けしたドワーフ』かと勘繰るだろう。

 今回はその怒りを堪えて、女房や子供達と影沼に潜んでいて欲しい。

 その旨を彼らに伝えると、「次回は必ず」と言う条件で、今回は堪えてくれる事になった。次回はいつになるか分からんが、活躍してもらおう。


 97名のドワーフ達をラヴの影沼へ大量の食料と共に潜ませ、クソ溜めから地上へ出る。

 これから向かう場所は街の東に在る兵舎。
 正直言えば、出来るだけ慰安所を覗きたくはない。
 俺は前世でも強姦や凌辱といったモノが嫌いだった。

 悔しいだろう、辛いだろう、相手が憎いだろう。
 そうやって感情移入してしまう。

 女性を監禁して云々の事件や物語は、本当に気分が悪くなる。

 今回はその被害者の救出。
 いつも以上に気合を入れる必要がある。

 気合を入れて臨まねば、あの肉体が膨張するような感覚を再び味わう事になる。

 恐らくあれが魂の変化だろう。
 変化する分には構わんが、暴れ大猿になってしまうのは勘弁願いたい。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「では、扉を開けます」


 室内に居るエルフ達はドアノブに触れる事は出来ない、彼女達に「開ける」とラヴが優しい声で告げてから、扉を開ける事になった。

 ラヴが慰安室の扉にあるドアノブを右手で掴み、鍵の掛かったノブを強引に回して鍵ごと破壊、扉がゆっくりこちらへ開いた。

 目を閉じ、心を落ち着かせ、深呼吸。

 お願いだから、せめて体だけでもまともな姿であってくれ!!

 俺は意を決して目を開く。


 ――見た目は、まともだった。

 ラヴが兵舎を壊滅させた後、影沼を通して彼女達に兵士の服を与えたのだろう。彼女達は皆、男性兵士の服を着ている。

 しかし、それは彼女達の外見の話。

 問題は室内に有る様々な『道具』だ。
 前世の記憶に有る物から見知らぬ物まで、全て、気に入らない。

 ヴェーダが気を利かせて俺の知らない『道具』の知識を脳に注ぎ込む。

 魂の軋む音が胸に響いた。
 俺の歯ぎしりで室内に歪みが生じ、メチャとラヴが俺の両腕を掴んだ。



 嗚呼ああ、親愛なる我が母神アートマン様、貴女が見た私の未来に、人間の影は御座いましたか?

 母よ、私には…… その様な未来を想像出来ません。



 いつものように神の風が応える事は無く、ただ、頭に温かな何かが置かれた気がした。

 メチャとラヴが必死に俺の名を呼んでいる。
 あぁ、聞こえている、聞こえているさ。

 大丈夫だ、問題無い、少し頭にキタだけだ。

 上下の犬歯が牙へと変わり、上半身の筋肉が膨張を始め、皮膚に浮かぶ血管が脈打ち、周囲に放たれた精気が大熊のマントを翻らせる。


『ラージャ、私のマハー・ラージャ、今はまだ、その時ではありません』


 ヴェーダの優しい声が、俺の沸騰した頭を冷やす。

 それと共に、スコルとハティが走破した500kmを無駄にするなという強い思いが、俺の荒れ狂う心を落ち着かせた。

 そうだ、眷属の努力とその先に有る安寧を、俺の短気でドブに捨てる様な真似は出来ない、してはならない。


「ふぅぅ…… 悪かったなメチャ、ラヴ。もう大丈夫だ、落ち着いた」

「あわわ、お、お怒りは、御尤ごもっともで御座います!! それを鎮められた賢者様は、さ、さ、さすがです!! 大外刈りで一本取った感じです!!」

「そうですよ陛下、その辺に居る有象無象のエリアボスなら暴れています。今為すべき事は彼女達の解放と作戦の完遂、お怒りをお鎮め遊ばした陛下は御立派です!!」

『ベタ褒めですね』

「ああ、恥ずかしい限りだ」


 俺はもう一度深呼吸して気合を入れ直すと、何が何だか分かっていない慰安室の女性達16名と視線を合わせ、自己紹介する。

 既に俺の事をラヴから聞いている彼女達は、笑顔で挨拶してくれた。
 一人ひとりしっかり目を合わせ、その体には触れず、なるべく穏やかな声で語り掛けるように努める。

 そこで初めて気付いたが、少年が一人混ざっていた。
 十四歳の少年だ、日本ならまだ中学生、頭がクラクラする。

 俺は同性愛を否定しない、あれは仕方のないものだと思っている。
 異性を愛せない事は異常ではない、肉体的に同性を求める者もそうだ。
 ただ、同性愛者の絶対数が少ないだけの話、特に気にした事も無い。

 しかし、同性を求めるにあたって、同性愛に興味の無い者に対する一方的な求愛は、しつこい男女が異性を求めるのと同じく性質が悪い、そこに差別などない。

 そして、異性でも同性でも、肉体関係をガキに求めるのは論外だ。
 ガキはガキ、心も体も出来上がっていない。そんな子供を大人が求めるなど、性を問わず赦せるものではない。

 しかも今回はその求愛がレイプという形で表現されている。

 再び怒りの炎が燃え上がりそうだ。
 こんな思いをあと何度繰り返せばいいのか、怒りのストレスで胃に大穴が空くぞ。クソったれが。


「陛下……」
「賢者様……」

「少し、驚いただけだ、心配するな」


 メチャとラヴの頭に手を置き、彼女達を安心させながら、俺自身も冷静にさせる。

 気合は入れても腹が据わっていなければ、行動に毎回ストップが掛かる。胸糞の悪くなる光景に慣れたくはないが、今後の課題だな。

 気を取り直し、慰安室の彼女達に今回俺がやろうとしている事を話す。

 先ずは眷属化、隷属を解いたのち、【即死・呪殺耐性】を覚えさせる。
 これは、俺の耐性が眷属達に付与される特性を利用する。

 次に、室外へ出られない彼女達の許へ人間達を連行し、それを彼女達が殺す。彼女達が進化するまで殺し続け、進化後の耐性ランクアップを狙う。

 メチャは進化後に耐性がランクアップし、【即死・呪殺無効】となった。

 このエルフ達もメチャと同じ状態にする。
 眷属進化直後は、飽くまで即死・呪殺“耐性”だ、耐性は魔力依存、確実に無効化するにはランクアップするしかない。


 俺の説明を聞き終えた彼女達の瞳に、希望と憎悪の光が宿った。
 今はどんな光でもいい、生きる力を求めてくれるだけで十分だ。

 既にヴェーダが眷属達に“生贄”をここへ運ぶように手配し指揮している。

 生贄の優先順位は両段持ちの冒険者、次に城勤めの一般人よりレベルが高い者、その次が猟師などのカルマを比較的溜め易い奴らだ。

 実際のところ、レベルが高ければどんな奴でも構わない。赤ん坊でもレベルが高ければ死んでもらう、いずれ殺す事になる相手に情けは必要無い。

 群れのボスがブレる事は許されない。

 人間に対する姿勢に於いてなら尚更の事、俺は絶対にブレない。俺の優柔不断が眷属を危険に晒す、そんな馬鹿な事が有ってはならない。

 人間の事などどうでもいい、今はどうやって効率良くこの場に生贄を運ぶかを考えねばならん。


『ラヴに輸送してもらいましょう。影沼内に居るドワーフ達も少しは鬱憤が晴れるかと』


 ヴェーダがそう言うと、ラヴが手を叩いて喜んだ。
 メチャも釣られて拍手する。さすがホッコリ担当、和んだぜ。


「おぉ~!! ヴェーダは相変わらず良い事言うねぇ」
「そ、そうだねぇ、尊妻様は、良い事しか、言わないね!!」

「ラヴ、行けるか?」
「仰せとあらば、すぐにでも」

「すまんな、頼む」
「御意」


 ラヴは俺の頬に軽く口付けして、楽しそうに狩りへ向かった。

 ラヴが影沼に人間を放り込めば、あとは影沼内に居るドワーフ達が適当にド突き回すだろう。瀕死の人間を大量に運べて一石二鳥だな。


『ナオキさん、城を制圧しました』

「ハハッ、早ぇなオイ」

『生贄は七匹の狼が確保、ハティとエルフ五人衆が城内のエルフ41名を保護しました。ラヴを生贄と保護対象の引き取りに向かわせます。スコルは御指示通り、蟻毒に侵された娘を咥えてこちらへ移動中、娘には目隠しをしております』

「よし。民間に捕らわれていたエルフは?」

『街の有力者に奴隷として買われたエルフ救出はメーガナーダが遂行、9名を保護しました。保護したエルフ達をこちらへ護送後、メーガナーダはラヴと合流させます』

「この街に居たエルフは五人衆も合わせて71名か、ドワーフを合わせると168名。それが多いのか少ないのか判らんが、“貸した”分はキッチリ払って貰うぜ、人間」


 俺は慰安室に居るエルフ達が心置き無く生贄を殺せるように願い、人化を解いてアハトミンCを二本飲み干し、ドーピングした体で精気を思い切り彼女達に注ぎ、眷属化した。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 影沼から血だらけの冒険者が顔を覗かせ、騎士の長剣を持った少年エルフが冒険者の頭にその長剣を振り下ろす。

 頭を砕かれた冒険者は死に、再び影沼に沈む。

 影沼を16名のエルフが長剣を持って囲み、次々と出現する人間の頭を長剣で破壊していく。

 突き刺し、斬り裂き、刎ね飛ばす。
 レベルが上がると魔法で殺し、MPが減ると剣で殺す。
 ただ無言でその作業を繰り返すエルフ達。

 体の至る所に赤く腫れ上がった“虫刺され”を作り、目隠しされ痙攣しながら恐怖に怯える北の戦乙女。

 全裸でお漏らしするその姿は、影沼から頭を出してすぐ殺される冒険者達にとって、ステキな冥土の土産になっただろうか?

 虐殺が始まって約一時間経過。

 ラヴと五人衆、狼達とメーガナーダが狩りへ向かい、次々と生贄を影沼へ放り込み、ある程度生贄が貯まるとラヴがこちらへ輸送し、その間に他の者が生贄を集め、再びラヴがそれを運ぶ。

 バカ娘を咥えたスコルが、その余りにもデカ過ぎる純白の巨体を躍らせて部屋へ入って来た時には驚かされた。

 スコルのレベルは6しか上がっていなかったが、体長は2m伸びて6m、ゴリラ状態の俺を乗せて走れる大きさだ。総合力は740万になっていた。ちょっとオカシイ。

 彼らの働きで兵舎の周囲は既に人影は無く、兵舎の在る東地区は急激に人口が減っている。

 一度の運搬で300人ほど運ばれる生贄、もうそろそろ2千に届きそうだ。
 16人のエルフ達も殺しの手際が良くなってきた、殺しの回転が速まるな。

 彼らのレベルはもうすぐ25を超えるが、エルフの進化は50に達してからだそうだ。人間の皆様には是非とも協力願いたい。

 影沼に入りきらなくなったゴミの処分も考えないとな。
 そろそろ俺も手伝うか。

 この周囲に人間は居なくなった、警戒はヴェーダが万全の態勢で臨んでいる、慰安室の彼女達から俺が離れても大丈夫だろう。メチャを残しておきたいが、コイツは俺から離れんからな。

 しかし、総合力的にも彼女達をおびやかす存在は既に居ない。街に残っていた両段持ちは彼女達の手で始末された。

 全裸のバカ娘は体の自由が利かない、エルフ達には絶対に魔族語を話すなと厳命して、ひと仕事するとしよう。

 俺はあとをヴェーダに任せ、メチャを連れて狩りに出かけた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 俺は街の西に在る色街に向かった。
 ここなら深夜零時を回った今でも人間が溢れている。
 ヴェーダが眷属達を俺の許へ集合させた。

 酒臭い息を吐きながら俺を睨む男達を無視して、軽い【圧壊】を放ちながら通りを歩いて行く。

 バタバタと倒れる人間達を眷属達が拾い上げ、俺の後ろに付いて来るラヴの影沼へ放る。効率が良過ぎて影沼内の死体が邪魔になった。

 どう処分するかと考えていると、ヴェーダが名案を授けてくれた。さすがだ。

 俺は街の中央に在る噴水広場まで行き、噴水の池に据えてある岩を持ち上げて池から出し、僅かな鉄を抽出して岩を爪で削った。

 岩で簡単なアートマン神像を彫り上げた俺は、ラヴに頼んで死体を神像の前に山積みさせ、眷属達と共にアートマン様へ“貢物”を捧げた。

 すると、約2千体の死体が服ごと跡形も無く消えた、魂が天へ昇った様子も見当たらず、ただ忽然と死体の山は消えた。FPは僅かに増えたようだ、生ゴミ問題を解決して頂いたアートマン様に深い感謝を伝える。

 こうして、問題が片付いてからは狩りのスピードが上がり、街の東西と南に住む人間を処分した頃、ようやくエルフ達の進化が完了した。

 日の出はまだだが、もうすぐ朝の5時だ、急ごう。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 最初に部屋を出たのは少年だった。
 廊下で見守る俺達を見つめながら、その細い足をゆっくりと部屋の外へ出す。

 足を廊下の床に置き、安堵の表情を浮かべた少年は、泣きながら俺の胸に飛び込んだ。抱き締めて頭を撫でる。


「よく頑張った、お前は強い男だぜ、アーベ」
「うぅぅ、あでぃがどう、ごだいまずぅ、ぅぁあああん!!」


 アーベに続いて、また一人、また一人と地獄から抜け出す。
 彼女達は互いに抱き締め合い、他の眷属達から祝福を受けた。
 皆の声は小さい、こんな時でも俺の言い付けをよく守っている。

 最後に部屋から出てきたのは、バカ娘を咥えたスコル。
 バカ娘の姿を見た眷属達が会話を止め、魔族語を封じた。

 俺が教国語で皆に明るく告げる。


「さぁ、枢機卿が教会でお待ちだ、メタリハに戻ろう」


 眷属達は会心の笑みを浮かべ、大きく頷いた。
 ドワーフ達も影沼の中で喜んでいるだろう。

 もうこの街に用は無い、バカ娘を俺が担ぎ、神像と眷属達を影沼に入れて撤退だ。
 大きくなったスコル&ハティにバカを担いだ俺と、メチャとラヴに分かれて乗り、風の如く立ち去る。


 半日もせずに辺境伯の三女と街の戦力を全て失い、住民も半数以下に減り、同時に隷属状態の者全てが居なくなった事は、辺境伯と王家に混乱をもたらすだろう。ついでに隣国との戦火もな。

 バカ娘はラヴが持つ回復薬を飲ませてから王国側の国境砦付近で捨てる。

 道中で散々メタリハの陰謀などをバカ娘に吹き込んで、砦の近くを通ったところで「魔獣が暴れ出した、逃げるぞ!!」とか何とか、それらしい事を叫んで砦の守備兵が見付け易い場所にバカ娘を捨てる。

 毒は消えんが、体力が回復したお転婆娘は砦に行って良い感じにメタリハの悪行を吹聴してくれるだろう。そのあと確実に死んでもらう為に、蜂を10匹ほど忍ばせる。

 砦で保護されなくても構わん、吹聴してもらえないのは残念だが、国境付近で死んでくれれば十分だ。


 さぁ帰ろう、ガンダーラへ。


有り難う御座いました!!
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