挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
待て勇者、お前それジャングルでも同じ事言えんの? ~勇者に腹パン、聖女に頭突き、美少女騎士に回し蹴り~ 作者:吾勝さん

第二章

34/82

第三十四話『虐殺王は手を挙げろ。ノ』

宜しくお願いします。





 夜、ヴェーダ時計では22時50分。
 この世界では深夜と呼べる時間帯だ。

 俺達は干し芋やアハトミンCなどで腹を満たし、林の中で時が来るのを待った。

 5人のエルフ達は全員無事にメチャ達と合流出来ていた。
 今はFPで購入した木綿の布を体に巻き付け、草の上でグッスリ寝てもらっている。

 俺が持ち帰ったスモーキーの遺体を見たメチャは、その散りざまを俺から聞くと、深呼吸をしてから目を閉じ、合掌して「アンマンサン・アーン」と小さく呟き、かつて自分を犯そうとした男を弔った。

 スモーキーの遺体は大森林に埋めるつもりだったが、スモーキーをこの林に埋葬し、俺がこの地を征服して大森林の一部とすればスモーキーも喜ぶ、そうメチャに言われ、そんな誓いも良いと思った俺は、この林にスモーキーを埋葬する事にした。

 林に埋まっていた岩を抜き取り、岩に爪でスモーキーの名を刻んで墓標とし、埋葬した土の上にその岩を置いて食料を供え、皆で供養した。

 この地を征服した暁には、この墓の周りを花畑にしてやるよ、スモーキー。

 墓標にアハトミンCを掛けながら、そう誓った。
 酒は今度な。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 今回の作戦概要は『目標拉致・敵兵鏖殺(おうさつ)・魔族救出』の三つ。

 作戦遂行中は魔族である事を隠し、人間と従魔の行いとして偽装する事が必須条件だ。俺達は飽くまで“隣国から来た”人間と従魔である。

 今回、俺は基本的に教国語しか話さない、魔族しか居ない場所では魔族語を使う。眷属達は加護の恩恵で教国語を理解出来るが、救出目標の魔族達は理解出来ないので状況に応じて使い分ける。

 作戦概要は以上の通りだが、少しだけ内容に追加要素が加わった。

 夕方に保護した5人のエルフ、何の因果か眷属化した彼らの容姿は西方地域でよく見られる人間と酷似している。無論、容姿の美しさは彼らが圧倒している。

 違いと言えば、耳介じかいの上部が長く尖っている事だけ。
 瞳の色はみどりだが、人間にも近い色の者は居る。
 褐色肌の金髪も西方では当たり前の存在だ。当たり前の事だが、5人の金髪は人間のそれより美しい。

 つまり、彼らが耳を隠して街で暴れた場合、まず間違い無く人間として見られ、見る者によっては異国人認定されるはずだ。

 その際、想像する異国人として真っ先に思い付くのは、金髪褐色肌の人間が多く居住する西の隣国『メタリハ・エオルカイ教国』の人間の事だろう。

 その怪しい異国人達が、単独ではなく組織的に街を襲った事実が知れ渡れば、ただでさえ俺達は教国側からメハデヒ王国に入る姿を見せている状況だ、隣国への疑念は益々強くなる。

 しかも、教国語を流暢に話す俺が領主の三女をシバき上げた。これは予定より早まったが、良い感じに教国出身をアピール出来た。

 ついでに、今からもっと暴れる。二度手間になったが、バカお嬢様も頂いて有効に使わせてもらう。

 何段構えになったか分からんが、少なくとも辺境伯は自領と接する教国を敵視するだろう。メハデヒ王国の王がどういった判断を下すか見ものだ。

 エルフ達の指揮はヴェーダに完全委任。

 ヴェーダが有するネットワークは蟲眷属を加えた事により全方位警戒・哨戒・偵察が可能になった。エルフ達を危険な状況に陥らせずに見事な戦術を披露してくれると確信している。


『有り難う御座います』
「そこは黙っとけ」


 まったく、野暮は嫌われるぞ?

 寝そべるスコルの腹に頭を乗せ、俺は星空を眺めた。

 そろそろ時間だ。
 スコルの隣で寝そべるハティ、その美しい漆黒の体毛をメチャが手櫛でく。

 23時ジャスト。

 ヴェーダが作戦開始を告げる。
 俺は蜂達に≪殺せ≫と指示を出す。
 街の各所で物影に潜み標的を狙う蜂達が一斉に行動開始。

 蜂達はヴェーダが指定した人間達の後頭部や両耳に針を刺し、後の混乱を招く狙いで死因が特定され難いように殺していく手筈だ。と言っても、毒殺がバレたところでアハトマ種の毒も長過ぎる毒針の痕も初見初出、“毒と長い針で死んだ”事以外は特定出来ん。街の支配層や低ランク冒険者はこれで掃滅する。

 しかし、バカ姫様にだけは軍隊蟻の標的となってもらう。
 姫様には皮膚が焼け爛れたかのような激痛を味わう軍隊蟻の毒を流し込む。

 激痛で気絶も出来ない悪魔の毒、死ぬまで時間が掛かるが、今回の作戦ではそれが重要となる。


 ラヴは既に5時間前からヴェーダの支援を受け単独で行動中だ。

 彼女は兵舎の騎士達を闇魔法で確実に眠らせて殺し、レベルを上げながら死体と兵舎の装備品や食料を全て影沼に入れて市街に潜伏。現在は街の警備兵などを仕留めて回っている。それが終わり次第俺達と合流し、彼女のスパイ生活は今日で終了する。


 俺が跳ね起きるとメチャが慌てて立ち上がり、スコルが大きな欠伸あくびをしながらハティと共に体を起こした。

 エルフ達も飛び起きる。
 彼らに寝ぼけた様子は無く、その美しい翠眼をギラつかせている。

 俺は一同に「行くぞ」と告げ、お調子者の墓に軽く右手を上げて林を出た。

 皆で街道を通り、腐った街へ向かう。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 獣人の住む町に入ると、夜遊び中のネコ耳5人組を発見。

 素敵な毛皮のベストを着ていたので、スコルとハティが惨殺。
 しかも、二匹は猫耳を殺したあと魔核を食べてしまった。

 俺以外は危ない行為だったはずだが、ヴェーダが『気にするな』と言うので心配は要らないようだ。

 スコルとハティはこのまま町の獣人を皆殺しにしたいと俺に伝えてきた。

 しょうがないなと二匹の頭を撫で、殺すなら魔族の革を所持した者だけにしろと命じる。ここに住む獣人達にも生き証人になってもらう必要があるからな。

 無論、スコルとハティに害意を向けた者は問答無用で殺せと厳命。

 獣人達が所持するコボルトの革を森に埋めてやりたいが、今回はスコルとハティに無念を晴らしてもらうという形で仇討とし、獣人の死を以ってとむらいとさせてもらう。


 メチャと二人で獣人の町を抜け、都市を囲む堀まで辿り着いた。

 門の前に在る跳ね橋は上げられ、門衛は堀を越えた場所に在る詰所の中。
 だが、既に門衛達の息は無い。蜂の毒で死んでいる。

 深くもない空堀を軽く飛び越え、着地と同時にもう一度飛んで城壁の上に立つ。

 壁の上から街を見渡すと、明るい場所が在った。
 一つの通りに明かりが密集している。色街と言ったところか。

 夕方俺が騒ぎを起こしたにも拘わらず、騎士や衛兵が警戒態勢を敷く事も無く、冒険者や警備隊が街を巡廻している様子も無い。

 街に剣呑な空気は感じられず、至って静かだ。

 ラヴが敵戦力を壊滅させ、蟲達が支配層や冒険者を仕留めた結果、街の防衛機能がゼロに等しくなりこの状況が生まれた。

 まだ両段持ちの冒険者が何人も生きているが、ギルド長を含めた冒険者ギルド幹部は既に死んでいる、両段持ちに指示を出せる奴も状況を伝える奴も居ない。

 両段持ちは街の異変に気付いているらしいが、四段の戦乙女をボロクソに負かした教国人が敵ではないかと疑い、今は大人しく様子を窺っているようだ。


 太守の城は南寄り、淫乱バカ娘はその城内に居る。
 そして救出目標も城内に数名居る。

 逸る気持ちを抑え、ラヴの到着を待つ。
 メチャは静かに周囲を警戒していた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「陛下っ!!」
「おっと、よく俺だと分かったな、ラヴ」


 俺の胸に飛び込んで来たラヴを受け止め、キスの嵐もついでに受け止め、二カ月ぶりの再会を喜んだ。


「それはもう、陛下は“スッゴイ匂い”を放っておられますので」

「ハハッ、なるほど。今まで御苦労だったな、今日でゴミ当番は終わりだ、有り難う」

「いえいえ、簡単なお仕事でした。今夜は今まで溜まった恨みを存分に晴らせましたし」


 ラヴはそう言って影沼から裸の男を取り出した。
 男はまだ息があるが、状態は瀕死、その体は打撃によって紫に腫れ上がり、体中の骨を折られている。


「コイツは…… お前の頬を張った奴か」

「はい、ツバも掛けられましたし、靴も舐めさせられましたし、残飯を食べさせられていましたし、一日中裸で行動を命じられたり、犬のように――」

「もういい、済まなかった、すぐにでもお前を呼び戻すべきだった!! 畜生っ!!」

「陛下、お気になさらず。私はこうして屈辱を雪ぎ、村を襲った人間共に復讐する機会を得られました。私は今、とっても幸せです!!」


 ラヴが男の頭を右手で掴み、左手で砕けたアゴを持つ。
 ゴキュリと音を立て、男の首が半回転した。

 体を正面に向け、顔だけ真後ろを拝む事になった男は、再び影沼に沈んだ。

 野郎は俺が殺してやりたかったが、ラヴの恨みは俺が晴らしていいような軽いものじゃない。恐らく、いや確実に、まだまだ人間を殺すはずだ。

 今回、ラヴは兵舎内の兵を殺し尽くし、衛兵も警備兵も全て始末して影沼に沈めた。

 騎士団や兵士が失踪したように見せる偽装工作、これも作戦の一部だが、それを自分がやりたいと言って実行した彼女の人間に対する憎しみや怒りは、この程度の虐殺で消えるほど生易しいものではないのだろう。

 男を始末した彼女はスッキリした表情でニコリと笑い、俺の隣に立つメチャと挨拶を交わし、互いに眷属同士の力強い抱擁で親愛を示した。


「アナタ、相当強いわね」
「い、いえ、賢者様の~、えっと『くんとーよろしき』を得ましてぇ」

「アハハ、アナタ私より3つも年上でしょ? 普通に喋ってよ」
「え~っ!! と、年下ぁ~!? す、凄く大人っぽいねぇ」

「そう? たっくさん酷い目に遭ったからかな?」
「うあぁ、た、大変だったねぇ、も、もう大丈夫だよ!! 賢者様が居るからね!!」

「うふふ、そうだね、もう安心だ……」
「うんうん、安心だね!!」


 ラヴの安堵は、憂いを帯びたものだ。
 俺の眷属かぞくにこんなツラさせやがって……
 ラヴの村を襲った奴らを探し出し、必ず殺してやる……


『ナオキさん、ラヴがこの街に居る魔族達に話を通しています、今は彼らを救いましょう』

「……あぁ、そうだったな」

『外傷により体力が衰えた者には、ラヴが回復薬等で治療を施しておりますが、心の傷は癒せません。眷属化による隷属解除という心身の解放、眷属としての安心感を以って心を癒す。それが出来るのはナオキさん、貴方だけです』

「おう、任せろ。さてラヴ、MPは…… 三割減か、レベルも上がって総合力も40万を超えた、影沼に魔族達を全員入れても問題無いな、精気は要るか?」

「はい!! 頂けるのであれば、タップリと!!」
「分かった、じゃぁ、流すぞ」

「お願い致します」


 目を閉じるラヴに精気を注いでMPを回復させ、ついでに心身の疲れを癒す。

 頬を紅潮させながら薄い唇を少し開き、若干長めの犬歯を光らせて、湯船に浸かったような表情を見せるラヴ。

 精気を流し終えると、ラヴは首や肩を軽く回し、獰猛な笑みを浮かべながら恭しく一礼して俺の手を取った。


「では陛下、この街の“名所”に御案内致します」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 初めに訪れたのは工業区に在る地面に出来た“穴”だった。


 この穴に救出目標が囚われているらしい。

 穴を見張る兵士が詰める小屋に人影は無い、既に蜂が始末している。

 穴の直径は2mほど、穴の横に縄梯子が巻かれて設置されていた。

 縄梯子の端は一方が鉄杭で地面に打ち付けられており、それを穴に垂らして下へ降りると、思わず立ち眩みしてしまいそうになる臭気に襲われる。

 明らかに糞尿のニオイ。
 暗い足下を見ると、ソレが泥水のようになって足の甲まで覆っていた。裸足であったなら叫んでいたかも知れない。

 足下のソレを鑑定してみると人間の物だった。
 ワザワザ魔族の居る場所に捨てたのか、怒りが爆発しそうだ。

 蝿が飛び回りウジが蠢くこの穴はL字型になっており、横穴も直径は変わらず2mだ。

 ラヴを先頭にメチャと俺が並んで横穴を進む。

 暫らく進むと足下の糞尿は減り、20cmほどの段差が付いた通路に入ったところでようやく糞尿ゾーンを抜けた。

 そして、縦横10mほどの四角い空間に辿り着いのだが……

 そこには、百人近いドワーフ達が全裸で立っていた。

 いや違う、切断されている。
 彼らにはひざを少し残してその下が無い。

 本物の“膝立ち”だ。
 余りの光景に声を失った。

 彼らは俺達に気付いているはずだが、こちらを見ようとせず声も上げない。寝ているわけじゃない、しかし微動だにしない。無言で突っ立ったまま動かない。

 何なんだコレは?

 男女共に痩せている。
 男は筋肉で引き締まった体つきだが全身に傷跡有り。
 女性は臀部や胸部を中心に傷跡が有る。局部は恐ろしくて確認出来ない。

 大半の女性は腹が大きい、子供以外は妊娠しているようだ。
 子供達は地獄に住む餓鬼のように腹だけ膨れていた。

 そんな彼らが、何故、座りもせず膝で突っ立ったままなのか?

 何故動かない?
 何故声を出さない?
 何故小便を垂らしている?

 何故、お前達の目は赤い?

 俺は目の前に居る男性の状態を確認した。


【隷属・欠損・衰弱・不動】


「……不動?」

「監視兵が『直立不動、生命維持活動のみ可』と外から命令すると、こうなります」


 ラヴが彼らを見ながらそう言った。
 直立して不動、生命維持活動は可……?


『今回命令を出した監視兵は愚かだったのでしょう、生命維持活動を許可しておきながら、不動を指示して目蓋の動きも封じています、あれでは睡眠が取れません、眼球も乾いております』

「コレって遊びなんですよ、監視兵の。バカでしょう?」


 ドワーフの少女を抱き締めるラヴ。
 何やってんだ俺はっ!! ノンビリ考察なんかして!! クソが!!

 俺は目の前に居る男性に精気を流し込み、叫んだ。


「眷属化するっ!! 受け入れろっ!! 全員だっ!!」


 精気を流し込みながら自分の異変に気付いた。
 動悸が激しい、犬歯が伸びる、両腕が肥大化し鋼の体毛が覆っていく。

 急いで服を脱ぎ、人化を解いて周囲に精気を放出した。
 六万近く有る精気がガリガリ削られ、心臓の動きが緩やかになる。

 FPでアハトミンCを100本購入して1本飲み干し、能力の底上げを行って更に強く精気を放出した。

 先ほどの異変は気になるが、今は精気を撒き散らして全員一気に眷属化させる事が先だ。

 目の前に居る男の肌から傷が消え、白い髪に金色が混ざり、白人種に近い肌の色が褐色に染まる。

 髪の色と肌色が変わりだして間も無く、膝から下の肉が盛り上がり始め、徐々に失われた部分が形成されていった。

 俺は他のドワーフ達を見渡す。
 全員が眷属化を受け入れている。
 隷属化も解除され、生えてきた脚を撫でながら座り込んでいた。

 眷属化がスムーズに行えたのもラヴが前々から伝えておいてくれたお陰だ。
 彼女に目を遣ると、アハトミンCを少女に飲ませながら、こちらを見てウインクを飛ばして来た。

 俺は頷いて微笑み、もう一本アハトミンCを飲み干す。
 メチャは泣きながら妊婦達にアハトミンCを飲ませていた。

 メチャの涙は怒りの涙だ、眷属としての彼女から、その思いが強く伝わって来る。

 ラヴに涙は無いが、ドス黒い感情が渦巻いているのが分かった。
 出来ればその感情は俺が肩代わりしてやりたい、悪鬼は二人も要らない……

 今の俺なら、この街に住む4万人を全て殺せる。
 お前は復讐の羅刹に留めておけラヴ、メチャ達とガンダーラで楽しく暮らす為に。

 業を背負い魂を血反吐で染める悪い鬼は、一匹居れば十分だ。


『ナオキさん、スコルとハティが狩りを終えました、御指示を』

「予定変更、城に行って城内の人間をバカ娘以外全て殺せ、城内のエルフを確保しろ。バカ娘はスコルが咥えて持って来い」

『兵隊蜂と軍隊蟻も初段以下の冒険者暗殺を終えます、如何なさいますか?』

「蜂と蟻にはお前の命令に従えと伝えた。エルフを玩具にしている奴らを始末したら、毒が切れるまで無差別に人間を殺せ、ドワーフやエルフを救わなかった街の人間に容赦は要らん」

『了解しました。仮面と黒装束で人間に偽装した“メーガナーダ”と七匹のウルフが到着致しましたので、残りの両段持ち冒険者を排除しても宜しいでしょうか?』

「はぁぁ…… 好きにしろ」
『有り難う御座います』

「いや、魔族を救うまでの時間が縮まった、助かる。次は何処に行けばいいんだ? ラヴ」


 ドワーフの少女を抱えたラヴが、こちらを見ずに答えた。


「兵舎の横に在る、兵士の…… 慰安施設です」

「――クッ!!」


 まただ、体の中から何かが膨れ上がる感覚。
 人化を解いた状態でも関係無いらしい。
 俺の怒りと同調しているのか……


「……お前が、影沼で連れて来られなかった、理由は?」

「あの『慰安室』から彼女達を移動させる事は出来ません。兵士達が勝手に自室へ“持ち帰らせない”ようにする為、彼女達の首輪に死属性拘束魔法を施し、室外への移動を禁じています」

「何でそんな…… 兵士は【誓忠】状態だろ? 上司が『部屋への連れ込み禁止』って言えば済むんじゃないのか?」

「兵士は誓忠の契約を王家と結んでいますが、絶対服従の効果はありませんので、バカをする者が多いんです。拘束魔法と隷属魔法を重ねて首輪に施すのは時間が掛かるので王族も嫌がるのですが、誓忠が聞いて呆れます、本当に愚かです」

「もし、部屋から出たら…… 死属性って事は、死ぬのか?」

「はい、呪殺により心臓が破裂して、即死ですね。私やドワーフ達の首輪と違って、首輪を外す事でも呪殺が発動して即死します。私達はもう“首輪を外すな”という命令が無効ですので簡単に外せますが、彼女達は隷属化が解けてもそれが出来ません」


 何てこった……
 こりゃ、どうすれば…… ん?
 いや待て、ん? あ、イケるな。

 ヴェーダ、冒険者を狩るな、半殺しで持って来い。
 城内にも“手頃”な奴が居るだろ、お前が選り分けてスコルとハティに指示を出せ。


『……なるほど、では、不足分も用意致します』


 これで何とかなるな。
 街の人間が何人死ぬか想像出来んが。





有り難う御座いました!!
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ