女だから言えること | 引きこもり、精神病からの生還

太ったおじさんみたいなおばあさんの皮肉とメロドラマに満ちた遺言。

里親制度では中高生が行き場をなくしている

koshian.hateblo.jp

 

 実は私は、里親制度の里親登録というものをしています。実の親に何かしらの問題があり、実の親のもとで育つことのできない子供たちは、まずは施設に入るというのが、これまでの流れでした。ですが、最近は、虐待などで保護された子を施設ではなく、まずは里親宅に預けるという流れになってきているようです。

 

 里親になるには夫婦ともに1年に及ぶ里親研修(しかも平日)を受けて里親の審査に合格しなければなりません。平日に休みをとって1年にも及ぶ研修をこなしていくわけですから、並々ならぬ思いがあってのことでしょう。ですが、研修でお話した多くの里親候補さんたちは、「子供がほしいけど授からなかった」「第二子が生まれないから」というような、小さい子供がほしいという方たちばかりでした。

 

 私は上記のこしあんさんの「かわいそうランキング」の記事を見て、里親制度は「かわいい子ランキング」があるなと感じました。

 

 里親制度は本来、親に虐待されて行き場をなくした子供たちを、保護する目的のためにあるものですが、里親になろうとする人たちは「恵まれない子供たちに手を差し伸べる」という感覚ではなく、「(かわいらしい)子供が欲しい」といういう感覚で、里親登録をするのだと思います。少なくとも、はなから中高生を受け入れようなどと思って登録する人は、ほとんどいないと思います。我が家も、夫の「(小さな)子供が欲しい」という意向のために里親登録を始めたのが現実です。

 

 子供のいない夫婦、あるいは第二子がほしいというような夫婦にとっての子供とは、幼稚園、少なくても小学校低学年までの子供のことで、なおかつ自分の子供が欲しいわけですから、将来的に養子縁組をできる子供を探しています。

 

 ですが、日本では親に問題があっても親権がとても強く、里子に出したくても子供が小さいうちは実親が子供が里親になついて帰ってこなくなるではないかと、手放したがらないのだそう。そして、実親が子供を手放してもいい、里子や養子縁組に出してもいいと承諾し始めるのが、子供が中高生になり、思春期で難しくなってきたころなのだそう。

 

 里親たちはできる限り、小さい子がほしいと思っており、実際に里親を必要としているのは中高生たち。ここで、大きなミスマッチが生まれているのです。

 

 さらには、実子であれ、養子であれ、わが子には健康であってほしいと思うのが親心でしょうから、最初から障害のある子供を受け入れるという選択にはなりにくいでしょう。

 

 こしあんさんのかわいそうランキングとは逆に、里親制度の中ではかわいい子ランキングがあって、障害のない子供、小さい子供、女の子、などが人気のようで、逆に障害のある子供、中高生などは、育てる自信がない、あるいは最初から想定していなかったなどの理由で、里親たちの受け入れチェックシートではじかれる場合が多いのだと思います。

 

 ですが、我が家もそうですが、1年にも及ぶ里親研修の中で、子供たちの不遇な環境を知るにつれ、子供たちが不憫でたまらなくなるのか、私がやらなければ誰がやる、というような気持になるのか、難しい子供たちの受け入れを承諾する人たちも出てくるようで、里親先輩たちの講演などでは、年齢の高い子供や、障害のある子供を複数受け入れてきたつわものもいました。

  

 夫の小さい子供がほしいという利己的な理由から里親登録をした我が家ですが、今は中高生の受け入れをOKしています。

 

 問題のある親の元で育った子、または施設で育った子は、普通の家庭では当たり前だと思えるようなこともしりません。

 

 例えば、親が病気になるからと夏でも長袖を着させていた子は施設に入っても長袖を脱ごうとしませんし、のりしか食べさせてもらえなかった子は、施設に入ってものりしか食べません。ちいさいころから施設で暮らしている子は、昼も夜も友達と一緒なので、夕方になったら「家に帰る」ものだということを知らず、ずっと友達の家にいすわったりします。施設では毎食きちんと決まった時間に食事が出てくるので、里親宅でちょっとした段取りのずれで食事が遅れて出るだけで腹をたてたりします。施設では、子供が学校や幼稚園に行っている間に掃除をするので、掃除機を見たことがなく、初めて掃除機を見た子が驚いて泣いてしまったという話もありました。

 

 姿勢や、はしの持ち方、言葉遣い、などなど、なおしてやらなければならない点をたくさん持った子供たち。正直、責任感で押しつぶされそうです。ですが、私自身が、親に虐待されて非常識が服を着て歩いているような人間だったにも関わらず、同級生、上司、同僚などに支えられて、なんとか生き抜いてこられたように、里子たちにも、この世界はそんなに悪いもんじゃないと思えるような感性を持たせてやれたらと思うのです。