手は打ったのに、なぜ破綻してしまったのか――。最近の破綻事例を見ると、人口減少やグローバル化など、企業を取り巻く環境の激変に対応できず、古いビジネスモデルから脱却できないケースが目立つ。破綻する企業と成長する企業、その分かれ目はどこにあるのだろうか。7つの破綻事例を見ながらベテランデスクと記者が座談会で明らかにする。
司会/北方雅人・日経トップリーダー編集長
宮坂賢一/破綻担当記者、デスクを通算7年担当
井上俊明/前・破綻担当編集委員(現在は日経BP総研 中小企業経営研究所主任研究員)
久保俊介/破綻担当歴4年の記者
最近の破綻事例で、特徴的な傾向を挙げるとすれば何だろうか。古いビジネスモデルから脱却できなくて、破綻するケースが増えているように感じるが。
井上:増えているね。人口減少やグローバル化に伴い、どの業界も市場が大きく変化しており、古いビジネスモデルのままではもたない。その危機感は、成長企業の経営者も破綻企業の経営者も持っている。ただ、新しい販路を開拓したり、新事業を立ち上げるのはなかなか簡単ではない。
例えば、シンエイ(2016年7月民事再生申し立て)。主に百貨店向けに婦人靴を販売していたが、業績が低迷。アウトレットモールに直営店を出し、インターネット販売にも力を入れたが、事業の柱になるまでには至らなかった。
破綻企業も対策を打っていないわけではない。それが成功するかどうかの差だと思う。
宮坂:百貨店の低迷に伴い、百貨店向けの商売をしていた中小企業の多くが、事業の見直しを迫られている。輸入食品卸の日食(16年4月自己破産)も、百貨店向けに高級菓子を販売していたが、00年代以降、低迷期に入った。百貨店向けは単価も高いので、そこから転換し、新しい販路を開拓するのは並大抵のことではない。
井上:日食は、大阪にできた新しいショッピングモールに新店を出した。うまくいったら横展開をしようと期待していたのだろうが、結局駄目だった。そのモールは、テレビで紹介されるような注目店が軒を連ねている。1店だけシャッターが閉まっている光景は一種異様だったね。