今、海外で注目を集めている1人の女性がいます。
工作家の乙幡啓子さん
工作家兼ライターとして、多数のメディアで脱力系工作の連載をもつ乙幡啓子さん。
ラーメンズ・片桐仁氏と工作合戦を繰り広げるテレビ番組「また、つまらぬ物を作ってしまった」はDVD化されるほどの人気ぶり。
自ら商品企画・製作を行うレーベル「妄想工作所」からは、数多くの人気商品が誕生しています。
そんな乙幡啓子さんが作る工作は、たびたび海外メディアにも取り上げられています。
中でも最新作の「ハトヒール」は、乙幡さん自身も驚くほど世界中に拡散されていきました。
世界へ羽ばたいた「ハトヒール」
かみーじょ
ハトとハイヒールを組み合わせた「ハトヒール」が世界を賑わせているようですね。早速見せてください。
乙幡さん
こちらが世界に羽ばたいた「ハトヒール」です。
かみーじょ
思っていたよりリアルですね…足とか、羽とか…。
乙幡さん
そう言ってもらえるとうれしいです。作るのに丸5日かかりましたからね。2羽の羽の色が違ったり、細かい部分までこだわって作りました。
かみーじょ
なぜ「ハトヒール」を作ったのでしょうか。
乙幡さん
テーマに沿って作品を作る「おバカ創作研究所」というイベントがあって、前回のテーマが“ハト”だったんです。
そこで、ハトでダジャレを効かせた作品はできないかと考えて、出たのが「ハイヒール…ハト…ハトヒール」でした。
単純に、ハトをヒールにして、ハトの群れにわっと飛び込んだらどうなるのかなっていうのも気になっていましたし(笑)
かみーじょ
実際に上野公園でハトの群れに飛び込んでいましたね(笑)
乙幡さん
はい。でもあんまりハトの反応は良くなかったですね……たまたま出会ったおじさんが私の周りにエサをまくファインプレイをしたおかげで、ちょっとは集まってきましたけど。
かみーじょ
「ハトヒール」の製作過程を公開したら、またたく間にDaily Mail OnlineやMETROなど海外メディアに取り上げられましたね!
乙幡さん
ね〜、びっくりしました。ただ名前が「Kyoto Ohata」になってるんですよね(笑)最初に取り上げたロシアのメディアが間違えたらしく、そのままどんどん違う名前が拡散されてしまいました。
かみーじょ
だからTwitterの名前が「乙幡 a.k.a Kyoto Ohata」なんですね(笑)
乙幡さん
そうですね、海外を意識しました。ちなみに私が連載を寄稿しているサイト、デイリーポータルZでは「Kyoto Ohata(キョート・オーハタ)」のページもできちゃいました!
かみーじょ
架空の名前がひとり歩きしてますね(笑)日本と海外の反応はどんな感じでした?
乙幡さん
日本では、「良い意味で狂ってる」とか「おもしろい」という反応が多かったのですが、海外からは「可愛い」とか「欲しい」というコメントが多かったです。これ、欲しいんだ〜って驚きましたね。
かみーじょ
欲しい……んですね。さすが海外は思想もスケールがでかい。
乙幡さん
海外は陽気なコメントが多くて、中には「ハトたちは思うだろうね、彼女がラリーとジムを靴男にかえた、ってね」というエッジが効いたのもありました(笑)
かみーじょ
片足ずつ名前つけられてる(笑)
「ハトヒール」の他にも、世界を良い意味でざわつかせた作品があるのだとか……。
焼き魚のリアルなプリント「ホッケース」
乙幡さん
こちらの「ホッケース」も海外で反響が大きかったです。見ての通り、ホッケの柄のポーチです。
かみーじょ
すごくリアルですね……なぜ「ホッケース」を?
乙幡さん
自宅でホッケの開きを食べていた時に、ふと「ホッケってどんな形なんだっけ?」と思い、パタンと二つ折りにしてみたんです。その畳んだ感じが、ポーチに似てるなと思って。西友で生のホッケを買って撮影して作りました。
かみーじょ
凄まじい行動力。「ホッケース」の海外の反応はいかがでしたか?
乙幡さん
「面白い」とか「可愛い」という反応が多かったですね。台湾や香港からは「仕入れたい」というお問い合わせもいただき、実際にいくつか輸送しました。
かみーじょ
「ホッケース」が人気となり、その後アジ、鯛、金目鯛、サンマが追加されたそうですね。
乙幡さん
ありがたいことに。全種類並ぶと圧巻ですね(笑)
かみーじょ
「ホッケース」の人気の裏に、日本の食品サンプル人気があるのではと思いました。
乙幡さん
あ〜、あるかもしれないですね。海外にある食品モチーフの商品は、ハンバーガーやピザなど割りとデフォルメされて可愛いデザインが多いから、このリアルさに日本っぽさを感じてくれたのかもしれませんね。
聖書からヒントを得た「モーセの奇跡ポーチ・ノアの方舟ポーチ」
乙幡さん
あとは「ノアの方舟ポーチ・モーセの奇跡ポーチ」も海外からの反応が多かったです。名前の通り、聖書のお話からヒントを得たポーチです。
かみーじょ
一見、可愛らしい普通のポーチに見えますが。
乙幡さん
開けてみてください。
かみーじょ
動物たちが中にいる!!
乙幡さん
「ノアの方舟」のストーリーに合わせて、方舟にみたてたポーチの内側に動物たちのつがいをプリントしました。
かみーじょ
「モーセの奇跡ポーチ」も開けてみますね。
乙幡さん
こちらはモーセが海をふたつに割っている伝説のシーンを再現しています。ポーチの底には、海底の砂地や逃げ遅れた魚たちがいます。
かみーじょ
芸が細かい(笑)ゆるいモーセのイラストも可愛いですね!
乙幡さん
海外からは「よく出してくれた!」というお褒めの言葉をいただきました。キリスト系の雑貨としては今までにない新鮮な感じがあったのかもしれません。アジアの果ての国からは「うちの国で売れそうだからぜひ商品化したい」って言われました。
かみーじょ
大人気ですね!まさか聖書のお話がポーチになるとは、驚きました。
アイデアは考えるから出てくるもの
唯一無二のアイデアを生み出す乙幡さんの「ものづくりの心得」を伺いました。
乙幡さん
アイデアは考えに考えて出てくるものです。お風呂に入っている時や電車に乗っている時に、ぱっと閃く時もありますが、それも頭の片隅で常に作品のことを考えているからです。
かみーじょ
まっすぐ作品に向き合う姿勢が素敵です。作品をつくる上で大切にしていることは何でしょうか。
乙幡さん
シンプルであることです。誰が見てもわかるものって、意外と難しいんですよね。あとは興味がないものでも積極的に情報収集をすることですね。本や画集、民芸品などからもトレンドや温度感がわかります。
こちらは乙幡啓子さんの仕事場。引き出しには、制作に使う道具や素材などが、ぎっしりと収納されています。
たまにペットのワンちゃんも仕事場に遊びにくるそうです!
日本に留まらず、海外でも注目を集める“突き抜けたアイデア”は、作品へのまっすぐな愛情と学びの姿勢から生まれるものだとわかりました。
乙幡さんの最新情報や過去の作品はTwitter(@otsuhata)や「妄想工作所」公式サイトをご覧ください。