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ゴブリンサバイバー〜転生したけどゴブリンだったからちゃんと生き直して人間になりたい!〜 作者:坂東太郎

『第四章 港町 デポール』

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第十一話 様子見&乱戦に持ち込むために、ゴブリオちょっと煽ってやるゴブ! 正々堂々? それ美味しいゴブか?

遅くなりました……

 俺の左側には川、後ろには農地があって、さらにその後ろに港町。
 正面と右手には丈の低い草原が広がっている。
 正面はゴブリンとオークだらけで草原って感じはしないけど。

 俺が【投擲術】で石を投げて何匹か倒しても、モンスターどもは足並みを乱さなかった。
 敵ゴブは数が多くて気が大きくなってるのか、自信満々でニヤニヤ嗤うだけ。

 ちょっとイラッとして、俺は川原から駆け出した。
 雑魚ゴブリンのクセに余裕ぶるとか生意気ゴブ! おっと俺も雑魚ゴブリンでした! 余裕ぶって大群に向かってく雑魚ゴブリンでした!

 走りながら小石を投げて、近づくゴブリンを倒す。
 仲間が死んでもゴブリンどもはまだ余裕だ。
 生意気なゴブリンにほえ面かかせてやるゴブ! いや俺のことじゃなくてね? 敵ゴブのことね?

 近づいたのはイラッとしたからだけじゃない。
 足並みを乱さない行軍で、敵は5000の大群。
 全滅狙いじゃない嫌がらせだしライフポイント稼ぎだけど、これだけ統率がとれてたら殺りづらい。
 例えば俺たちを包囲して数でじわじわ押してきたら、俺はともかくオクデラやアニキやシニョンちゃんは危なくて撤退するしかないわけで。

 だから俺は混乱させるために近づいたゴブ! だいたいなんでゴブリンとオークのくせにちゃんと整列してんだよ! それじゃ俺が入り込めないじゃん! 入り込んで不意打ちとか騙し討ちとか暗殺とかできないじゃん! 卑怯? しょうがないゴブ、こちとら鬼畜生だからね! ゲギャギャッ!

「コイツなにゴブ?」
「ガキ、ヒドい目に合わせてやるゴブ!」
「裏切りゴブは殺してやるゴブ! 喰われずに腐ってけ!」

 敵ゴブの声が聞こえてくる。
 俺の【投擲術】で何匹も殺されてるからか、俺はすでに敵認定されているらしい。当たり前か。
 でも、俺を目の前にしても突っ込んでこない。
 統率がちゃんとしてて厄介そうゴブなあ。
 まあ気にせず突っ込むんだけど! さーて、ついにゴブリオの無双タイムがスタートゴブ! ゴブリオ雑魚ゴブリンだけど雑魚ゴブリンなんて相手にならないゴブ!

 整列して進んでくるゴブリンに突っ込む。
 雑魚ゴブの武器は、いままで相手してきたゴブリンと変わらず棍棒だ。
 たぶん小隊の指揮官的なヤツだけ、木の盾やニンゲンの武器を持ってるっぽい。

 目の前のゴブリンを【短剣術】でひと刺し。
 横のゴブリンの棍棒は【回避LV2】でかわす。
 ゴブ垣の隙間から見えた、ショートソード持ちのゴブリンに【投擲術】でナイフを投げて仕留める。
 ゴブリンはやっぱり雑魚ゴブなあ! ライフポイントを稼ぎまくるチャンスゴブ!

 あっという間に5匹倒して、ちょっと横に移動して前面のゴブリンにちょっかいをかけていく。
 最前列が倒されたうえに、俺を攻撃しようとして足並みが乱れてきたゴブなあ! 狙い通りゴブ!

「たくさんいてもしょせん雑魚は雑魚! 弱すぎてビックリしたゴブ! ゲギャギャッ!」

 煽るように嗤ったら、ゴブリンどもの顔色が変わった。いや緑色なのは変わらないけど。雰囲気ね雰囲気。

「ガキ、殺してやるゴブ!」

 死体をまたいでゴブリンが突っ込んできて、左右のゴブリンも俺に近づいてくる。
 つまり、隊列は乱れた。

『やっぱりゴブリンはバカゴブなあ! 乱戦の方が殺りやすいゴブ! ほら俺ゴブリンだから! 中に入っちゃえばどっちが敵だかわからなくなるから!』

 おっと、テンション上がってついついニンゲンの言葉でしゃべっちゃったゴブな! 失敗失敗!
 それにゴブリンからしたら見分けられるのかもしれないし! 元人間の俺には見分けられないけどね! 敵ゴブが一瞬でも迷えば儲けものゴブ!

 すぐ横のゴブリンの群れに突っ込む。
 ゴブリンどもに囲まれて、棍棒で攻撃される俺。
 でも、〈果ての森〉のゴブリンの里でボコられそうになった時とは違う。
 ニンゲンの装備があるし、武器スキルも補助スキルもある。

 俺は短剣と投げナイフでゴブリンたちを倒していく。
 この前スキルを取って減ったライフポイントが、みるみるうちに増えていく。
 神様ありがとう! 5000の大氾濫(スタンピード)とかほんとボーナスステージゴブな! ほらほら、俺に殺されてライフポイントになるゴブ! ゲギャギャッ!

 いまのところ攻撃はぜんぶ【回避】して、一発も受けてない。
 ひとしきりゴブリンを倒したら、またちょっと場所を移動する。
 ゴブリンの死体を踏んで転んだら危ないからね! さすが油断しない男ゴブリオ!

 【回避】しながらするすると【逃げ足】で移動して【短剣術】と【投擲術】で攻撃する。
 あっという間に30匹ぐらい倒したけど、疲れを感じないのは【体力回復】の効果だ。たぶん。
 あ、『【逃げ足】発動のコツですか? 逃げることを意識するだけですよ?』って教えてくれたのはあの行商人ゴブ! 単純すぎィ! おかげで明らかに移動スピードが上がってるゴブ! まあ実際包囲から逃げてるしね? ウソじゃないしね?

 囲まれて抜けられそうになかったら、隠れることを意識して敵ゴブリンの背後にまわる。
 そうすれば【隠密】が何匹かに効いて俺を見失うから、あとは攻撃するもよし、その場を離れるのもよし。
 ゴブリオのスキル構成、いつの間にか乱戦向きになってたゴブ! ほらほらお行儀いい行進が乱れまくってきたゴブなあ! あ、やべ。

 敵に突っ込みながら、まわりを【覗き見】することは忘れない。
 そうすれば状況が変わったことに気付くから。
 いまみたいにリーダーっぽいゴブリンが指示して、何匹かのオークとほかより装備が整ったゴブリンがこっちに向かってることに気付けるから。

 精鋭のお出ましゴブな! んじゃ敵ゴブリンを盾にしながら逃げますか!
 目の前のゴブリンを短剣で仕留めて、俺は逃げ出す。
 あ、ちなみに短剣は普通のヤツを使ってます! ミスリルの短剣は切り札だからね! 乱戦で落としたらおっさんに返せなくて借金地獄……じゃなくて! ボスオーガへの攻撃手段が減っちゃうゴブ!

 オークと精鋭ゴブリンがゴブ垣を抜けるのにもたついてる間に、俺は走り出した。
 川原に向かって。

 ほらオクデラ、オークを釣ってきたゴブよ! 混乱させたかっただけでオークが釣れたのはたまたまだけど! それに釣ったというか、精鋭が強かったら逃げやすいように川のそばに行くだけだけど!

 とりあえず。
 俺がひっかきまわして、ゴブリンとオークの大群の足並みは乱れた。
 5000の大群のうち、川に近い側の最前列周辺がちょっとだけだけど。

 まあ俺たちが相手するあたりが混乱してれば充分ゴブな! それに様子見だったし!

 さーて、ライフポイント稼ぎ、おっと、港町防衛戦の本番はこれからゴブゥ!

遅くなりました……
『ゴブリンサバイバー 2』公式発売日前後の更新はこれで終了です!

次話、6/30(金)18時更新予定!

■ ゴブリオ(ゴブリン)
 【ライフポイント】
  88 → 136
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