77/79
第十話 絶望的な数の差の戦いがはじまったゴブ! あ、退路は確保してあるゴブよ?
6/25『ゴブリンサバイバー 2』公式発売日直前の毎日更新です!
早売りももうはじまってるようです?
『ここでいいか。アニキはいまのうちに舟の向きを変えておいてほしいゴブ』
『わかった、ゴブリオ』
アニキに言って、俺は袋に詰めた小石を抱えて舟を下りる。俺に続いてオクデラも。
敵ゴブリンと敵オークはまだ遠くて、俺の【投擲術】でも届かない。
じゃばじゃばとヒザまでの水をかきわけて、俺とオクデラは川原に並んだ。
『オクデラはここで。あんまり舟から離れないように気をつけるゴブ』
『ワカッタ。デモ、オデ、ゴブリオ守ル!』
わかってねえし!
革鎧を着込んで、ゴツいタワーシールドとハルバードを持ったオクデラの腹をパシンと叩く。
首を傾げるオクデラ。
ああコレか、とばかりに、舟から担いできた小石入り布袋を俺に差し出してくる。
いやちげえし。そういうことじゃねえし。
『オクデラ、俺は死なないんだ。だから、俺よりアニキとシニョンを守ってほしいゴブ』
『ワカッタ!』
もう何度目かも覚えてない説明をする。
オクデラが頷くのも何度目なのか。
はいこれわかってないヤツゴブな! 俺がピンチになったらぜったい突っ込んでくるヤツ! そうだね〈ストレンジャーズ〉の仲間は守らないとね! ハハッ!
うん、俺もあんまり突出しないように気をつけよう。
いざって時はオクデラやアニキやシニョンちゃんを助けられるように。
そう決意して、俺は向き直った。
ドーンドーンと太鼓を鳴らして進軍してくる、ゴブリンとオークの大群へ。
『すごい数ゴブなあ』
『オーク、イタ! オデ、オーク殺ス!』
『お、おう、でもあんまり離れないようにな』
不安すぎるぞオクデラァ!
まあ舟の護衛はアニキがいるし、俺がオクデラから離れないよう気をつければいいか。
大群が近づいてくる。
でも、あんまり切羽詰まった感じはしない。
ゴブリオこれでも成長してるゴブな! 5000を前にしてビビってないんだからそろそろ称号【森の臆病者】は変化するかなくなりませんかねえ! 〈ストレンジャーズ〉で称号が変わってなくて追加もないのは俺だけゴブ!
『シニョン、そろそろ頼むゴブ』
『はい、わかりましたゴブリオさん!』
そう。
称号が【突然変異の革新者】から【突然変異の創始者】に変化したアニキ。
【オーク the ED】から【オーク the END】に変わったオクデラ。
二人に続いてシニョンちゃんの称号にも変化があった。
称号【運命神の愛し子】だけじゃなくて、【巡礼者】が加わったんだ。
アニキと同じように、称号が変わったことでスキルにも変化があった。
シニョンちゃんのスキル【光魔法LV2】は【光魔法LV3】へ、【魔力感知】と【魔力操作】はそれぞれLV2へ。
シニョンちゃんの【神聖魔法】が強化されたゴブな! まあ神聖っていうかただの【光魔法】だけど! でも喜んでるシニョンちゃんにそんなこと言えなかったゴブ! だいたい【巡礼者】って俺たち巡礼してないしね! まあ野営とか移動は多かったしきっとそのせいゴブな!
とにかく。
称号が増えたことでシニョンちゃんのスキルは強化されて、魔法が使える回数も魔法の種類も増えた。
シニョンちゃんは、新しい魔法を使おうと集中している。
『神よ、此の地を守る奇跡を与え賜え。聖域』
詠唱を終えたシニョンちゃんの胸の前から、やわらかな光が広がった。
舟に乗ったままのシニョンちゃんを中心に、光は半径10メートルぐらいを境にして留まっている。
俺とオクデラもその中だ。
聖域の魔法。
シニョンちゃんいわく、術者の味方の傷を癒し、敵の攻撃を弱める神聖魔法。
高位の神官になると、街ごと包み込む範囲魔法だとか。
よーしよし、これでモンスターどもが弓矢とか投石してきても安心ゴブな! あと邪悪なモンスターを排除するタイプの魔法じゃなくてよかったゴブ! 俺ゴブリンでオクデラはオークだからね!
さーて!
『んじゃ、投げるゴブ!』
『オデモ、殺ル!』
開戦ののろしとばかりに、俺はまた【投擲術】で小石を投げる。
今度は届いたらしくて、進んでいたゴブリンが倒れる。
俺に続いて、オクデラも運んできた拳大の石を投げた。
スキル【投擲術】はないから、オクデラが投げても狙いは甘いんだけど。
でも関係ない。
ほーら、敵ゴブが倒れたゴブ! ゴブも歩けば石に当たるってね! ほらほら、チンタラ進んでたらいい的ゴブよ? 一方的に攻撃できるって最高ゴブなあ!
どんどん石を投げる俺とオクデラ。
でもゴブリンもオークも、配下らしいオオカミも突っ込んでこない。
ときどき石を投げてくるヤツはいるけど、弓矢持ちはいないらしい。
まあそこは心配ないけどね! 大量に敵がいるところに投げるのと、四人しかいない俺たち〈ストレンジャーズ〉を狙うんじゃ難易度が違いすぎるゴブ! 聖域の魔法もあるから届いても威力が減退するしね! ヒャッハー、嬲り殺しゴブ! 卑怯? なんのことゴブか? こちとら鬼畜生、よくわからないゴブ! ゲギャギャッ!
『ゴブリオ、舟は繋いだ。俺も参加しよう』
後ろからアニキの声が聞こえる。
アニキは舟の方向転換を終えて、川岸の木に繋いだロープを切ればいつでも逃げられるようにしてくれた。
ヒザまで水につけたまま、アニキが弓を構える。
俺の身長じゃ子供用の弓矢しか扱えないし、オクデラは不器用だし。
でもアニキならいけるんじゃないかと思って、行商人に弓矢を手配してもらったんだ。
そんで、ほんとにやれました。
アニキすごすぎィ! え、やっぱりこれアニキが主人公? アニキ、チート持ち?
でもスキルがないからか、アニキの弓矢は狙った的にはほとんど当たらない。
これだけ敵がいれば充分だけどね! 敵は攻撃してこないんだし、当たって数が減ったらラッキーってことで!
俺とオクデラの投石、アニキの弓矢。
ときどき敵ゴブリンが倒れるけど、進軍は乱れない。
おバカなゴブリンのクセに統率が完璧すぎるんですけど! 揃って進んできてちょっとプレッシャー感じはじめたんですけど!
でも、下がらない。
別に俺たちがぜんぶ倒さなきゃいけない訳じゃないし。
港町には石壁があるからそっちに流れても大丈夫なはず! 大丈夫だよね? というか4対5000でぜんぶ抑えられるわけないゴブなあ! あ、一人一面担当すれば包囲できるゴブか? そんで殲滅……ってできるわけない、というかこっちが殲滅されるゴブ!
俺たち〈ストレンジャーズ〉がやるのはただの嫌がらせで、相手の戦力を削るだけだ。
あと俺のライフポイントを稼ぐだけゴブ! 背水の陣だけど小舟ありで退路は確保済み! 逃げ道があるのに背水の陣の意味? ほら、そっちから敵が来ないし多少はね?
嫌がらせなら、敵ゴブと敵オークが港町を攻撃しはじめたタイミングで背後からっていうのも考えたんだけど。
それだと、俺とオクデラは危ないと思って。
ニンゲンのシニョンちゃんとリザードマンっぽいアニキはともかく、俺はゴブリンでオクデラはオークだからね! 俺たちまで攻撃されちゃうゴブ! むしろ武装したゴブリンとオークって上位種っぽくて絶対狙われるゴブなあ!
だから、俺たちは港町から離れた場所で戦うことにした。
港町に入れるのに巻き込んじゃったシニョンちゃんとアニキは申し訳ないと思うけど。
でも二人は、自分たちも〈ストレンジャーズ〉なんだと行動をともにしてくれた。
ドーンドーンと太鼓の音が鳴って、ゴブリンとオークたちが近づいてくる。
投石と弓矢でばんばん倒れてるのに、ちゃんと統率されて。
4対5000。
もう、先頭は表情がわかるところまで近づいてきてる。
ニヤニヤと、嬲り殺してやる、とでも言いたげなイヤらしい嗤いで。
『イラッときたゴブ! オクデラ、そこで待ってろ! 俺ちょっと殺ってくる!』
そう言って、俺は駆け出した。
ヒャッハー、男は殺せ、女は犯せ……じゃなかった!
ヒャッハー、ゴブリンは殺せ、オークも殺せ! ボスオーガが出たら退却ゴブゥ!
ということで、6/25『ゴブリンサバイバー 2』公式発売日直前の毎日更新です!
早売りももうはじまってるようですね!
次話は明日6/25(日)18時更新予定です!
※6/25追記 更新、18時から遅れます。25日中にはなんとか……
ほんと、過去はよく一年以上も毎日更新やれたもので我ながら信じられません。
※ひさしぶりに各キャラのスキル一覧を書いておきたいところですが、
一部ネタバレになるので今回はシニョンちゃんだけ……
■ シニョン(普人族)
【スキル】
夜目
魔力感知LV2 ※UP
魔力操作LV2 ※UP
光魔法LV3 ※UP
受難LV2
人族語LV4
【称号】
運命神の愛し子、巡礼者
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。