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ゴブリンサバイバー〜転生したけどゴブリンだったからちゃんと生き直して人間になりたい!〜 作者:坂東太郎

『第四章 港町 デポール』

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第九話 川をさかのぼった俺たちの前についに大群が現れたゴブ! 開戦ののろしをあげ……アレ?


 俺たちは、小舟に乗って川をさかのぼっていた。
 冒険者ギルドのコワモテのおっさんが手配した小舟をアニキが取りにいって、合流して。
 ゴブリンとオークの大群を前にどうするか、話し合った結果だ。

『ゴブリオさん、本当に本当に大丈夫なんですね?』

『シニョン、この前見せたゴブ。俺は死んでも復活するって』

 一人、いや、一ゴブで戦う。
 そう言った俺は、とうぜんシニョンちゃんとオクデラとアニキに止められた。
 いくらニンゲンを守りたいからって、死ぬつもりはないとわかってもらうために、俺は死んでも復活するところを見せた。
 自殺するのは怖いから、偵察に来たっぽいゴブリンとオークの集団に殺されて。

 事前に説明しておいたのにオクデラは暴れまわるわシニョンちゃんは泣き叫ぶわで大変だったゴブ! アニキもウロコが逆立ってめっちゃ怒ってる感じだったし!

 いくつかスキルをゲットして復活した時には、敵ゴブと敵オークは肉塊になってた。

 オクデラもアニキも強すぎィ!
 あ、種族は雑魚ゴブリンのまま変えませんでした! なにしろ大群に立ち向かうわけだからね、ゴブリンリーダー程度じゃ死なずに勝てるわけないゴブ! 節約節約!

『それより、シニョンは舟から下りないように。オクデラもあんまり離れちゃダメゴブよ?』

『わかりました、わかりましたけど……』

『オデ、ゴブリオ守ル! オーク殺ス!』

 シニョンちゃんは納得してない感じだ。
 そんでオクデラは気負いすぎだね! 俺は復活するって言ってるのに! 純情弱気オークどこいった! しょうがないか【オーク the END】だから!

『アニキは水辺でシニョンちゃんを守ってほしいゴブ。陸でも水辺でも水中でも戦えるのはアニキだけだから』

『……ああ』

 あれ? アニキも納得してない感じ? また「弟たちを守る」とか思っちゃってる感じ? 俺は問題ないからおとなしくシニョンちゃんを守っててほしいゴブ!

 コワモテのおっさんが用意した小舟はオールで漕ぐタイプだった。
 でもいま、舟の上にいる俺とオクデラとシニョンちゃんは漕いでいない。
 小舟の前、川に入って泳いでいるアニキが、舟を引っ張ってるから。
 さすがアニキ、リザードマンっぽいだけあるゴブな! 【水中行動】スキル便利すぎゴブ!

 ゴブリンとオークは泳げない。
 だからシニョンちゃんは小舟から下りないで、その護衛は【水中行動】スキルがあるアニキに任せる。
 いざって時は舟に逃げ込めば、泳げない敵ゴブと敵オークは追いかける(すべ)がない。

 退路も確保した完璧な作戦ゴブな! ボスオーガが近づいてきたらそっこーで逃げてやるゴブ! なんたって【森の臆病者(チキン)】で【逃げ足LV2】だからね! 船上から【投擲術】でチマチマ嫌がらせしてやるのもいいゴブなあ! 卑怯? 鬼畜生相手になんのことゴブか? ゲギャギャッ!

『見えたゴブ!』

 港町の横を通って、川をさかのぼっていた俺たち。
 まだ遠いけど、俺の【覗き見LV2】で敵の姿が見えた。

 ドーンドーンと、太鼓の音が聞こえる。
 ニンゲンの村から奪い取った太鼓の、進軍の合図。

『ゴブリオ、オーク、イルカ? オデ、オーク殺ス! オーク滅ボス!』

『お、おう、落ち着こうなオクデラ。いのちだいじに、だから』

 俺以外はだけどなあ! 俺は生き直せるからいいんだけど!

 遠くが見えるようになった【覗き見LV2】を持つ俺以外は、まだ敵の姿が見えていないらしい。
 称号が変わって【オーク the ED】から【オーク the END】になったオクデラは血気盛んだ。
 川辺から離れて突出しないかちょっと心配になる。
 俺は突出しても問題ないんだけど。
 というか突出するつもりだ。

 そもそも、なんで俺は5000ものモンスターの大群の前に立ちはだかるのか。
 理由はシンプルだ。
 幼女のプティちゃんに若女将、お世話になった漁村のニンゲンを守るためゴブな!
 それ以外に理由があるわけないゴブ! ほんとゴブよ?

 草原の先を【覗き見】すると、並んで近づいてくるゴブリンとオークが見える。
 キョロキョロ見渡すけど、見える範囲にあのボスオーガはいない。

 よーしよしよし、雑魚だらけゴブ! 大量のライフポイントが向こうからやってくるゴブなあ! 大群? 一匹殺せば殺されても収支トントンだからね! 雑魚ゴブを選べば1LP(ライフポイント)で復活できるから! いまの俺なら殺されるまでに二匹殺すとか余裕ゴブ! つまり収支はプラス!

 ボスオーガと強敵に気をつければコレただのボーナスステージゴブゥ!

 待てよ、雑魚ゴブ相手に無双してライフポイント稼ぎまくって新しくスキル取れば、強敵もボスオーガも倒せる可能性も? 別に、アレを倒してしまってもかまわんのだろう?

 おっと、俺が立ちはだかるのはニンゲンを守るためゴブな! そりゃ確かにLP(ライフポイント)稼げば強くなるし、レアなゴブリンを殺せばコスパよく強い種族になれるし、100万LPでニンゲンになれる可能性も近づくけど! それはついでゴブ! ついでゴブよ?

 それに、俺は一人じゃない。
 船上とはいえシニョンちゃんがいる。
 強くなったとはいえオクデラもアニキもいる。

 LP稼ぎだって調子に乗って死なせる気はないゴブ!
 変わり者揃いの〈ストレンジャーズ〉だけど、復活できるのは俺だけだから!……俺だけだよね?

 ゴブリンとオークの大群はまだ遠い。
 でも、オクデラとシニョンちゃんの目にも見えるようになったみたいだ。
 オクデラはフゴフゴと鼻息荒く、シニョンちゃんの顔色は悪い。

『シニョン、大丈夫ゴブ?』

『……はい。はい、ゴブリオさん』

 隣に立つと、シニョンちゃんは俺の手を握ってきた。
 震えが伝わる。

『シニョン、危ないことはしなくていいゴブ。俺の合図でいろいろ渡してくれればそれでいいから』

『でも、ゴブリオさん。復活するって言っても、ゴブリオさんは』

『俺は死なないから。いや死ぬんだけど復活するから。ほかの誰かが死ぬよりいいゴブな』

 チラッと振り返って港町を見る。
 シニョンちゃんもつられて振り返る。
 俺が言いたいことは通じたみたいだ。

 シニョンちゃんは、俺の手を両手で抱え込んだ。
 ちょっ、手が、腕がおっぱいちゃんに包まれてやわらか、じゃなくて。

『ゴブリオさん。ぜったい、帰ってきてください』

 俺の目を見て、シニョンちゃんは言った。
 俺を心配して。

 よーし、ゴブリオ殺る気でてきたゴブ! おらおら雑魚ども、死んでライフポイントになれ! そんで大量にライフポイント溜めてゴブリオ強くなって100万LP(ライフポイント)稼いでニンゲンになってシニョンちゃんとデデデートしたりお付きあいしたりキキキスとか、そ、その先とか……ゲギャッ。

『もちろんゴブ! シニョン、舟で待ってて!』

 それだけ告げて、俺はしゃがみ込んで、舟に積んでいた小石を手にした。

 小舟に乗ってるのは人だけじゃない。
 投擲用の石やナイフ、予備の短剣、それに俺のミスリルの短剣に、まきびしやら火炎ツボやら、積めるだけ積んできた。
 敵までまだ距離があるのにしゃがんで小石を持ったのは照れ隠しだ。
 俺の顔はきっと赤く……ならないゴブな! 肌が緑な俺はいま何色になってるゴブか? ゴブリオゴブリンだからよくわからないゴブ!

 さーて、開戦ゴブ!
 ごまかすように【投擲術】で投げた小石は、ゴブリンとオークの大群のはるか手間に落ちた。

 …………。
 試し投げ、試し投げゴブ! だいたいあの距離まで届くゴブな! アイツらがあの辺りまで来たら俺のライフポイント稼ぎ、おっと、港町の防衛戦がスタートゴブ!

ちょっと短めですが、
6/25が『ゴブリンサバイバー 2』(オーバーラップノベルス)の公式発売日ですし、
明日6/24(土)と明後日6/25(日)にも更新します!たぶん。

また、活動報告に6/25発売『ゴブリンサバイバー 2』の特典情報をアップしました!
そちらもぜひご確認ください!
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