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115.みかん割り
朝、ニホニウムダンジョン地下二階。
遭遇するゾンビを片っ端からリペティションでたおした。
最終周回魔法で倒した事のあるゾンビを瞬殺し、ドロップする種もポーチで即回収。
前の約半分の時間で能力を上げれた。
念の為、外のナウボードで確認。
―――1/2―――
レベル:1/1
HP SS
MP S
力 SS
体力 S
知性 F
精神 F
速さ S
器用 F
運 F
―――――――――
力も、ちゃんとSSまで上がっていた。
☆
アルセニックダンジョン、地下一階。
中に入ると、すぐにエミリーと出くわした。
俺を見つけたエミリーは驚いた顔をして、ハンマーを担いだままトコトコと走ってきた。
「なにかあったです? ヨーダさんがお昼前からニホニウム以外のダンジョンに来るのは珍しいのです」
「力が上がったんだ――」
まわりをちらっと見て、SSという単語使わずに答えた。
俺の能力がA以上、Sというのになれるのは仲間内の秘密だ。
この世界の人間の能力は最高がAだ。戦闘ステータスもドロップ率も、両方ともAが最高だ。
最初はエミリーから聞いて、その後いろんな人に確認したけど、それで間違いない、という当たり前すぎる常識だ。
おれがS――いまやSSまで上がるのは内緒にした方がいいと思って、この普通に冒険者がいるアルセニックダンジョンではぼかして話す事にした。
まわりの冒険者はほとんどがエミリーハンマーを使ってる、俺が現われた事でエミリーがこっちに走ってきたのでちらちらこっちを見ている。ほとんどがエミリーのファンとかそういう冒険者だ。
普段以上に余計話せない状況である。
「上がったのです? 早いです、いつもは午前中まるまるかかっちゃうです」
「リペティションとポーチのおかげでな。普段よりも早く上がれたよ。それでここに力試しにきたんだ」
「なるほどなのです!」
大きく頷き、納得するエミリー。
アルセニックダンジョン、ある意味特殊なダンジョン。
このダンジョンのモンスターは全部岩タイプのモンスター。
ものすごく硬くて倒す手段は限定されるが、その分向こうから攻撃してくることは一切ない。
ここはミリーのようなハンマー使いの天国だ。
エミリーだけじゃない、他の冒険者たちも――老若男女全てが力自慢タイプで、ここで岩を割り続けている。
力試しにはもってこいの場所だ。
「私、ヨーダさんの力試しについて行っていいです?」
「ああもちろんだ」
「ありがとうなのです!」
エミリーはまるで、オモチャを買ってもらえた子供の様に喜んだ。
身長130センチはまるっきり子供だが、巨大なハンマーを担いだままピョンピョン飛び跳ねる姿は大人も真っ青な姿だ。
そんなエミリーと一緒に、一体のモンスターの前に立つ。
巨大な、椅子になりそうな岩。その真ん中に目と口――顔がついている。
ダンテロック、アルセニック地下一階のモンスターだ。
その真ん前にたっても攻撃してこない。おれはあごを摘まんで考えた。
「さてどうしようか」
「どうしようかってなにがです?」
「割るだけなら前も出来たんだ」
まわりにまだまだダンテロックがいる事を確認してから、無造作にパンチを放った。
軌道は子供にゲンコツを当てるような、しかし割と本気で。
パカッ。ダンテロックは割れて、タンポポをドロップした。
「こんな風にやれるから、やり方をちょっと変えないと力がどれくらい上がったのかわからないんだ」
「なるほどなのです。粉々には出来るのです?」
「粉々?」
「はいです!」
「……ふむ、ちょっとやってみよう」
あごを摘まんだまま少し考えて、それからエミリーと一緒に次のダンテロックの元に向かった。
やはり動かず攻撃もせず、ギロリとこっちを見てくるだけのダンテロックの前に立って、深呼吸をしてから、パンチのラッシュを放った。
マンガの守護霊のようなパンチのラッシュをダンテロックに浴びせかける。
慣れないやり方で大分無駄やロスがあったが、それでも20秒間殴り続けた結果。
「すごいです! 岩が粉々なのです。まるで砂だったのです」
またピョンピョンと飛び跳ねるエミリー。
ダンテロックがドロップ品に変わるまえ、俺のラッシュで文字通り粉々になった。
「うーん、なんかいまいちピンとこないな。これも昔からできたっていえばできたかも知れないし」
「言われて見るそうそうなのです」
「なんかないかな」
「なのです……」
エミリーも腕を組んで首をひねった。
ここにやってきたはいいけど、今ひとつ分からなかった。
もともとSでこの世界のどの冒険者よりも上なんだ、今回はその更に一つ上のSS。 検証が難しいのは……仕方ない事なのかな。
俺はエミリーと一緒に次のダンテロックの前に立って、それに頬杖を突きながら考えた。
ペチペチしたり、ツンツンしたり。
攻撃を一切しないモンスターなのをいいことに、適当にイジリながら考える。
「なんかトマトみたいにグチャ! ってつぶすのはどうなのです?」
「それも擬音的に結局思いっきり――トマト?」
「はいです?」
「……なるほど、それイイかもしれないな」
「トマトなのです?」
「いやトマトじゃないけど……見てて」
俺は改めてダンテロックと向き合った。
両手を出して、ダンテロックの両脇を掴む。
そして――力を入れる。
両脇を掴んだまま、二本の親指を真上から押し込むような形で力を込めた。
すると――ぺきっ。
小気味よい音を立てながら、岩が真っ二つに割れた。
「すごい! 今のまるでみかんなのです」
「だな」
興奮したエミリーが言うように、今のはまさにみかんを剥く感じでやった。
みかんの尻に親指を入れて、房と房でつながった一個のみかんを半球の二つに割る。
それを岩でやったのだ。
「さすがヨーダさん、その発想はなかったのです」
「エミリーのトマトから連想したんだ。うん、これは前できなかったかも知れないな」
ドロップしたタンポポを拾ってエミリーの魔法カートに放り込み、次のダンテロックの前に立つ。
同じように、みかんを割る要領でダンテロックを割った。
「またまた割れたです」
「うん、これでちょっとは力が上がったのが実感出来た。ありがとうエミリー」
「私は何もしてないです、ヨーダさんがすごいのを自分で考えついたのです」
ニコニコするエミリー。
ふと、彼女は何か思いついた顔で手を叩いた。
「どうした」
「あれはどうなのです?」
「あれ?」
「はいです、スチールスライムなのです」
「……おお」
☆
テルルダンジョン、地下八階。
エミリーと一緒にやってきたそこは、メタリックボディなスライムがうようよいた。
これは……試し甲斐がある。
何せこいつを最初に倒したときは、冷凍弾と火炎弾を順にうった、金属疲労を使って倒したんだ。
力試しをするのなら、岩以上の相手と言える。
「それじゃ、やるぞ」
「ファイト! なのです!」
エミリーの声援に送り出されたおれは一匹のスチールスライムとむきあった。
こっちをターゲットにしたそいつは飛んで体当たりをしてきた。
かなりの勢いだ、しかも金属ボディ。
まともに食らったら鉄球を喰らったくらいのダメージはある、結構手ごわいモンスターだ。
そいつをキャッチした、突き出した手で止めて、そのままガッチリ掴む。
両手で掴み直した、暴れるスチールスライムをがっちり掴んで、頭に両方の親指を押し当てる。
――ペキン。
軽い金属音を立てて、スチールスライムも同じようにみかん割りされた。
「さすがです! ヨーダさんすごいです!」
エミリーが応援するなか、更に飛んできたスチールスライムを掴んで、そのままみかん割り。
ぱっくりと割れた金属ボディのスライムをみて、俺はようやく力がSSになった実感が湧いてきたのだった。
下の同時連載も読んでくれたら嬉しいです。
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