何歳が区切りになるかは、個人により、お勤めの会社の事情により異なるだろうが、多くのサラリーマンが「セカンド・キャリア」(大まかには、定年後の職業人生)について、考え、準備する必要がある。
健康であるなら、定年後もまだまだ働けるし、社会全体が長寿化する中で人生はまだまだ続く。ただし、それは「仕事があれば」だし、長い人生に対しては「お金が足りなくなるかも知れない」という心配がある。
「定年後」を何歳から意識させるかは会社によるが、社員の人生に対して意識の高い会社は「45歳」くらいから定年後の生活設計をテーマにした研修を行うようだ。俗に「たそがれ研修」などと言われることがあるという。
この種の研修の講師経験者によると、「ご自身のお宅では、一月の生活費が幾ら掛かっているかご存じですか?」「将来、年金は幾ら受け取れるかご存じですか?」といった質問に続いて、「知っている人は手を上げて下さい」と呼びかけても、ごくまばらにしか手が上がらないらしい。
この年代のサラリーマンの多くは、セカンド・キャリア、さらには定年後の生活に対する意識が薄いようだ。
では、「セカンド・キャリアについて何歳から考え始めるのがいいか?」と問われたら、筆者も「45歳が目処です」と答えることにしている。セカンド・キャリアの準備には、かなり長い期間が掛かることが多い。
後でご説明するが、筆者がセカンド・キャリアについて真剣に考え始めたのは42歳になる少し前だった。
セカンド・キャリアには、(1)仕事の「スキル」、(2)仕事の「顧客」、(3)「健康」、の3つが必要だ。
例えば、セカンド・キャリアに税理士や司法書士のような「士業」で独立しようとするなら最低限資格が必要だが、その取得には何年も掛かるのが普通だ。また、資格を取っただけでは業務のための知識として不十分だろう。
大学教授を目指す場合は、近年、博士号などの学位が応募の条件になっているケースが多く、しかも、それだけでは競争力がない点も士業の場合と同様だ。
ペンションや飲食店を開業したいといった場合でも、料理や接客、店舗の作り方など身につけるべきスキルや知識の範囲は広いし、それを獲得するには相応の時間が掛かるだろう。
また、エンジニアやビジネスマンが、現在仕事で使っているスキルを使ってコンサルタントなどで独立開業したい場合でも、将来にわたって競争力を持つためには、関連分野に関する最新の学問的知識等を仕込んでおかなければならない場合がある。
個人的には、社会人大学院は無駄な場合が多いと思うが、最新の論文を継続的にフォローしたり、個人として学会に入って論文を書いてみたりなどの「自己教育」を、仕事を続けながら行う必要がある。
いずれも、何年もの時間が掛かりそうだと想像できよう。