ガレージキット製作代行品のレビュー(発注先 アイウエブアート 現在ショップ名を Kzスタジオジャパン/KzStudioJapan に変更)

あれぐろぶるーさんが制作代行会社へ発注した「魔法少女まどか☆マギカ 佐倉杏子 / あおしんごう」の納品物を撮影しました。外箱、組立説明書、版権証紙(シール)が返却されないという重大問題のほか、顧客から代金を頂く仕事として好ましくない品質ですので、改善すべき点をコメントします。


発注先 アイウエブアート 現在ショップ名を Kzスタジオジャパン/KzStudioJapan に変更
・製作代金…64,000円、発送直前に後払い
・製作進捗…ブログで確認
・納期…2ヵ月(むしろゆっくりの方が助かると依頼
・指定…原型師さんのブログを参考にその製作方・調色でするよう依頼、キット発送時に紙印刷の上指示もあり


ディーラーの見本は、参加した方のイベントレポートに掲載されており、現在も見ることができます。このblogには横1600pxの貼り付けコードを使用していますが、撮影データ原寸サイズはflickrで見ることができます。

flickr 佐倉杏子@あおしんごう Paint work iWebart

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上半身全体を引きで撮ったものです。肌のテカりが悪目立ちしますので艶は消すか、艶を抑えるコーティングを施したほうが良いかと思います。続きます。
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右頬に欠けがあります。ここまで抉れてしまうとなると、恐らくですが顔と襟を強力に接着したあと、襟側に頬側のレジンを持っていかれたのだと推測します。顔面はフィギュアの命とも言える重要なパーツです。あってはならない瑕疵です。
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ブーツの折り返し部分と太ももの接着箇所ではエポキシ系接着剤が大量にはみ出ており、さらに黄変を起こしています。概観を損ねるレベルの接着剤使用はNGです。ベースへの固定のため膝下に金属線が打ち込んでありますが、概観をここまで損ねるのであれば、固定することにこだわる事のほうがおかしいと思います。フィギュアをぐるっと回し見たとき、こんな軸がザックリ刺さっていたら、嬉しいと感じる人は居ないでしょう。
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ブーツと折り返しパーツの間にエポキシ系接着剤が大量にはみ出て黄変しています。フィギュアは立体物ですから、前からだけではなく後ろからも見ることはあたりまえです。接着面に対してここまで大量の接着剤が必要とは思えません。ここでも右足の金属線が見栄えを損ねてしまっています。
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スカート本体とフリルの生地の縫製を考えれば、赤いスカートの断面がフリルの白色なのはおかしいです。発色の順番を考えても、白を塗ったあとにフリルをマスキングテープにてマスキングし、あとでスカートの赤色を塗れば良いことです。筆によるリタッチで白を塗り直されていますが、これは蛇足です。白と赤の境界はマスキングテープを使ったほうが理想的なラインになると思いますが、フリルに残留した緑色の物質から、マスキングゾルを使っていることがわかります。
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フリルの内側のパーティングラインが未処理です。フィギュアは立体的なのですから、裏側だからとか、後ろ側だから消さなくていい、という判断は安直過ぎます。見える部分は奇麗に処理すべきです。マスキングゾルも奇麗に除去すべきです。
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左膝に大きな白点。白飛びハイライトにしては、片足にしかありませんし唐突です。塗料の飛びや零したあとに見えてしまいますので、この白点は消すのが妥当だと思います。膝中央には気泡がありますので、埋めたほうが良いでしょう。また番手の低いヤスリの磨きキズが目立ちますので、せめて400番か600番くらいまでは磨くべきだと思います。
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太ももから膝にかけて、パーティングラインが残っています。裏側ならばまだ妥協できるかもしれませんが、表になる側のパーティングラインは、パッとみたくらいではわからないくらいに奇麗に処理すべきです。肌色の上にタイツの色がはみ出ていますので、マスキングはもっとまっすぐきっちり行ったほうが良いでしょう。もっとも、このリタッチ痕を見ればわかるとおり、筆塗りのようですが…。
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上述しましたが、スカートの断面は赤色でないと不自然です。また中央部には緑色のマスキングゾルが残留していますので、奇麗に除去してから納品すべきです。
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ブーツの底面に湯口のカット跡やパーティングラインがそのまま残っています。また、接地しているわけでもないのに靴底がろくに塗装されておらず、レジンの色のままになっています。繰り返しになりますが、フィギュアは立体物ですから後ろから見ることもあたりまえにあります。右足のつま先は垂直になっておらず、斜めにずれたまま軸打ち&エポキシ系接着剤にて固定されていますが、大きく見栄えを損ねています。ブーツのロール角から間違っています。正しい角度で固定すべきでしょう。
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上着の白いラインがよれよれです。筆ムラにより白の発色がまちまちです。赤色で塗ったあとで極細マスキングテープでマスキングし、発色のよいクールホワイトやEXホワイトなどをエアブラシ塗装すれば、ここまでひどいムラにはならないはずです。髪の毛のパーティングラインも消えていませんので、奇麗に処理すべきです。上着の赤色についてですが、おそらく塗料が薄すぎます。エッジ部分はハイライト表現ではなく、単に塗料が流れてしまって色が薄くなっています。適切な濃度に調整した塗料で塗り重ねるべきです。
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ブーツのサイドの白いラインに、赤色がざわついたようにはみ出ています。白を塗ったあとで赤がはみ出てしまったのなら、さらに赤い部分をマスキングをして白色を塗り直すべきです。
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顔面に続き、指はフィギュアの命と言っても過言ではないパーツです。人差し指のパーティングラインが処理されておらず、ナイフで切り落としたような平坦な面ができています。原型が持っているであろう指の丸みを尊重するなら、ナイフで平坦に切削するのではなく、スポンジヤスリで丸みを残したままパーティングラインを処理すべきです。
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金色の部分に黒が大きくはみ出ていますが、こういったミスはきちんと修正して塗り分けるべきです。武器は瞬間接着剤にて固定されていますが、白化するのは明白ですので使用すべきではありません。航空機モデルのキャノピーにも使える白化しない接着剤がありますので、模型用品や接着剤メーカーの情報にはアンテナを張っておくべきです。車のヘッドライトなどスケールモデルの組み立て経験があれば常識的なノウハウだと思います。
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右手人差し指、中指の側面が肌色ではありません。陰影にしては黒すぎますし単なる汚れにしか見えませんから、ここは肌色で統一したほうが良いでしょう。手のひらからはエポキシ接着剤がはみ出ていますが、ここまで見栄えが悪くなるほど大量に使うのはNGです。
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胸の中央部、ソウルジェムでしょうか。顔料塗料により塗り潰されていますが、ここはキットが透明パーツですのでクリアカラーで塗装するのが大前提でしょう。肌にも番手の低い大きな磨きキズが残っていますし、右脇はパーツが浮いたままで気泡入りのエポキシ系接着剤が黄変硬化して大惨事です。右脇の白いラインには大きな糸くずが混入していますから、本来であればここまで酷い状態になったのならドボンして下地処理からやり直すべきです。
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筆の運びや筆ムラが見える塗り方は好みもありますので一概には言えませんが、まゆ毛、まつ毛、虹彩の輪郭などは、超人的なテクニックをもって第一線で活躍するプロでもないかぎり、一発描きではなくトリミングしたほうが良いのではないでしょうか。高い工賃を取るのであれば、せめて肉眼で見た時に違和感が出ないくらいには塗ってあるべきだと思います。
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接着剤を大量に使いすぎです。黄変する・しないに関わらず、もともとの造形を尊重せず隆起を起こすレベルのはみ出し方は異常と言っても過言ではないでしょう。右の太ももにはスカートの赤色が付着していますし、女の子のキャラクターのフィギュアであることをきちんと意識して欲しいと思います。
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キットではひし形の部分がクリアパーツですが、ここも顔料塗料で透明度が封印されてしまっています。原型をつくり量産する過程において、なぜクリアレジンパーツで複製品を用意したのかは、そこまで深く考えなくともわかることです。常識的な判断ができるのならば、クリアレッドでの塗装が妥当でしょう。
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スカートのリタッチ跡、艶の調子が違ってしまっています。面倒がらずに白い部分をマスキングし、赤いスカート用の塗料でエアブラシ塗装しなおすか、せめてつや消しコーティングをすべきです。雑なリタッチ痕は素人でも容易にわかります。手を抜くべきところではありません。
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アホ毛の根本を見てわかるように、雑な接着がされています。展示や移動を何度か行うことを考えれば、アホ毛は接着すべきではないように思います。0.3mm前後の金属線で接続し、万が一ぶつかったりしてテンションがかかったときに、折れる前に外れるという逃げ道を用意すべきではないでしょうか。頂上のアホ毛は案の定折れてしまっていますが、こうなると奇麗に修理するのは困難です。ガレージキットは塗膜の食いつきがプラモデルほど強力ではありませんから、剥がれたり、またパーツが折れたりすることも多々あるでしょう。のちのち分解して修理することを十分考慮すべきかと思います。

総評としては、あえて指摘するまでもありませんが、全体がまんべんなくとんでもなく非常に雑いと感じます。プロを名乗る業者である以上、自身の技術を常に磨く努力と知見を持つべきですし、時代なりの流行、同業者はもとよりアマチュアの技術レベルにも注目し、己がいまどこに立っているのかという客観的な視点が必要ではないでしょうか。

もしガレージキットの塗装をインターネットから発注することがあれば、大きな写真を掲載している業者から順に選んだほうが良いでしょう。小さな写真ではある程度まともに見えてしまいますが、実物を肉眼で見てそのギャップに驚愕してしまう事もあると思います。もし鮮明な写真の提供を渋るような業者であれば、見られたくない品質である可能性がありますし、そもそも鮮明な写真を撮影する技術も機材もないとなれば、セルフチェックをして改善箇所を洗い出すといったブラッシュアップができていない可能性もあります。見えていなければ塗ることができません。見えていれば、見えていない状況よりもきちんと塗ることができるでしょう。見えていることは非常に重要なのです。

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