転職はより自分に合った生き方を見つける人生の転機。とはいえ、「今の仕事を辞めたい!」という勢いだけで辞めてしまっては、後々「こんなはずじゃなかった……」と後悔することもありますよね。

そこで今回は、今の仕事を辞めていいのか迷ったときに自分に問いかけたい質問について、キャリアコンサルタントの藤井佐和子さんに伺います。

 

勢いで辞めてしまうことのリスク

まず、勢いで仕事を辞めてしまうことのリスクについて、藤井さんは次のように語ります。

 

◎次の仕事がすぐに決まるとは限らない

「今の仕事を辞めて、ゆっくりしてから落ち着いて転職先を探そうと思ったのに、実際はなかなか自分の希望に合う求人がなかった、ということはよくあります。そうした場合、就職までに思いのほかブランク期間が空いてしまったり、採用が決まらないことへの焦りで、面接時に自信を持ってアピールできなくなってしまうなど、次の行動へ影響を及ぼしてしまうことがあります」(藤井さん:以下同じ)

 

また、会社を辞めた後に自分の納得できる転職先を探し始めようとすると、こだわりを追求するあまりブランク期間が長くなり、採用段階で不利に働いてしまうこともあるのだそうです。

「ブランク期間が長くなると、面接の際に『この期間は、何をしていたの?』とブランクの理由を心配されたり、その期間が長ければ長いほど現場から離れていたと判断され、即戦力としてみなされなくなることがあります。

半年以上空いていると、面接でブランクについて聞かれることも多いので、可能であれば1年は開けないほうが安心です」

 

◎働いていない自分を人と比較して不安になる

「最初は会社を辞めたことで自由を満喫していても、だんだん仕事をしていないことへの不安、罪悪感を感じるようになり、友人などが集まる飲み会への参加を避けるようになる人が多くいます。

そうした人は『今、何をしているの?』と聞かれて『無職である』『転職活動中である』『仕事を辞めて次を探している』などと答えたときの、自分の発言に対してあがる周囲からの心配を『周りから同情されている』と置き換えて考えてしまうため、楽しかったはずの自由が不安に感じられてしまうのです」

 

仕事を辞めたいと思ったときに問いかけたい5つの自問

このように勢いで仕事を辞めて後悔しないためにも、「仕事を辞めたい」と思ったときには、まず、今仕事を辞めてもいい状態なのかをしっかり考える必要があります。藤井さんによると、そのための判断材料として、以下の5つの質問を自分に問いかけてみるといいのだそうです。

 

1:いつも同じ理由で辞めていないか?

「実は転職の理由が毎回一緒という人は多く、そうした人は、また次も同じ理由で仕事を辞める可能性があります。同じところを堂々巡りしているうちは、『なぜ辞めたくなるのか』『なぜ転職を繰り返しているのか』という根本的な問題に向き合えていないのかもしれません。

今の会社を辞めたいと思う理由が、これまでの転職の理由と同じだという人は、一度、今の職場で踏ん張って克服することを考えてみてはいかがでしょうか」

 

2:目の前のことだけを解決するために辞めようとしていないか?

「目の前の嫌なことから逃げたい、楽になりたい。これが転職の目的になっている人も多いのですが、そういう人に共通しているのは、辞めた後のビジョンがないことです。

将来どうなりたいのかという目指すべき自分像が明確であれば、目の前の状況で踏ん張る意味が見えてきますが、それが明確に描けていないため、目の前の解決が中心の転職となってしまうのです」

 

3:他部署に異動すれば解決することはないか?

「特に今勤めている会社の規模が大きい場合は、辞めると判断する前に、他部署への異動ができないかも確認するといいでしょう。実は、会社全体を知らない、ほかにどんな仕事や部署があるのか分からない、といった理由から、比較対象が『自部署か、よその会社か』になってしまっている人も多いのです。

会社を辞めるのは、社内の他部署もよく調べて理解し、本当に自社でやれること、やりたいことはないのかを確認し尽くしてからでも遅くないと思います」

 

4:給与額が下がる可能性があっても納得できるか?

「まず、未経験分野へキャリアチェンジする場合は、それこそ一からのスタートなので、給与額がダウンするのが当然だと思ったほうがよいでしょう。そして、自分はそれでも納得できるのかを考える必要があります。また、会社によっては、これまで携わった分野の仕事であっても、まずは試用期間として多少条件がダウンしての入社になることもあります。

もちろん、ヘッドハンティングや、今までの役職を評価されての転職であれば、給与額の交渉はできますし、好条件でのお誘いもあると思いますが、そうでない場合は給与額が下がることのほうが一般的でしょう。多くは今までの会社で評価されていたことのお手並み拝見、となるため、新たな職場では、一から認めてもらうための行動やアピールが必要となります」

 

5:人間関係で辞めようとしていないか?

「転職理由で一番多いのが『人間関係や社風が合わない』といったものです。一度であれば偶然合わなかったとも考えられますが、毎回同じ理由では、『実はあなたにも問題があるのでは?』と採用担当者に思われてしまうし、実際に転職しても、また外的要因が出てくると転職を繰り返すことになります。

人間関係の問題は、自身のコミュニケーションスキルを鍛えたり、臨機応変な対応能力を磨くことで解決する場合もあるので、まずは今の職場で克服できないかと考えてみることも大切です」

 

辞めた後ではなく、今考える

自分の将来を真剣に考えることが転職活動ならば、それは今の会社にいながら始められることですよね。目の前の現状から逃げることだけが会社を辞める理由になっている人は、会社を辞めた後の自分はどうありたいかという、もう一歩先の未来を考えるところから取り組んでみてはいかがでしょうか。

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識者プロフィール

藤井佐和子(ふじい・さわこ) 株式会社キャリエーラ代表。大学卒業後、カメラメーカー海外営業部のOL経験を経て、大手総合人材サービス企業にて、派遣事業部、人材紹介事業部の立ち上げに携わる。主に女性を対象とした転職支援チームを立ち上げ、数多くの転職を支援。その後、独立。延べ13,000人以上のキャリアカウンセリングを行う一方、数多くの企業に対し、研修やスキーム作りなど人材育成支援を行う。その他、大学の非常勤講師、講演、キャリアセミナー、執筆など幅広く活動。