Hatena::ブログ(Diary)

three million cheers.


  ::: BUT IT'S A TRICK, SEE? YOU ONLY THINK IT'S GOT YOU. LOOK, NOW I FIT HERE AND YOU AREN'T CARRYING THE LOOP.

 [ABOUT LJU]
 [music log INDEX] 
 

2017.05.20.Sat. 

[] シルヴァン・ヌーヴェル “巨神計画”


“Sleeping Giants”
 2016
 Sylvain Neuvel
 ISBN:448876701X, ISBN:4488767028




 SFとして設定や構図がすごく刺激的というタイプのものではないんだけど、寝食を忘れて没頭させるような読書体験を与えてくれる小説。
 3部作として構想されていて、原作は今のところ2巻 “Waking Gods” まで、邦訳は1巻 “Sleeping Giants(巨神計画)” までが出版されている。

 ストーリーは日本のアニメや特撮の嗜好に通じるものを持っている。異星人の技術でつくられたらしい巨大人型兵器が発見され、そのパーツを集めて駆動方法を確立させる… というのが1巻の内容。
 小説表現面での特徴としては、会話記録やパーソナルレポート、インタビューなど、基本的に台詞だけで記述されているというのが明記すべき点。
 なかでも素性のわからない〈インタビュアー〉との対話が最も目を引くところで、この謎の人物がどのような真意・来歴を持っているのかが気になる…… というのが1巻での大きな引力のひとつとなっている。(で、強大な力を持つこの〈インタビュアー〉をも手玉に取るようなキャラクターも出てきて、さらに興味を引きつける。)
 国際的な政治・軍事動向、技術解析や謎解きといった面も物語上の主要な要素ではあるものの、隙なく練られて書かれているというより勢いにうまく乗せられていく感じ。そうした諸々を次から次へ眩惑的に繰り出しつつも、語りの展開やキャラクター描写を堅固な芯として進んでいく構成。

 原文も含め簡潔でテンポのよい文章で、非常に読みやすい。それでいて先が気になる展開で、各パートごとに小さく引きを設けて関心を持続させ、結果として一気に読むことになる……といったような。空いた時間があれば常に読むぐらいに1巻を読み進めたところ、ラストでクリフハンガーに見舞われ、あたかも高速走行していたところを突然壁に激突し強制停止させられたかのごとき虚脱とフラストレーション。次巻の邦訳を待つのが我慢できず、続けて原作2巻に手を伸ばし、そのままのペースで読み通すことに。
 1巻もそれなりにいろいろな出来事が起こってはいるんだけど、本領発揮は2巻。怒濤と激変の連続となる2巻を読み終えてから振り返ると、1巻はどれだけ緩やかで平穏だったことか…。
 1巻をおもしろいと思った人はまちがいなく2巻を気に入るはず。






[] Sylvain Neuvel “Waking Gods”


“Waking Gods”
 2017
 Sylvain Neuvel
 ISBN:0718181700


Waking Gods: Themis Files Book 2

Waking Gods: Themis Files Book 2



 『巨神計画』の続編、3部作の第2作目。邦題にすると『神々の目覚め』あるいは『巨神覚醒』といったところ。タイトルが示す通り、巨大人型兵器が複数登場し本格的に話が動き出す、というのが2巻の内容。
 冒頭から即座に生じる動乱。1巻全体を通して起こることと比べてもはるかに大きな出来事が間髪入れずに襲いかかる連続。前巻はあくまで序章だったことがわかる。
 最初のロンドン攻撃だけでもわりと衝撃だったんだけど、あとは惨劇の指数的増大。数字の桁数がどんどん上がることに次第に麻痺していく。不特定多数の大量死が続く一方、愛着も湧くようになってきた具体的なキャラクターたちも次々と退場する。あらたなキャラクターも登場しつつ、翻弄されながらも精一杯抗う人々を描く。
 1巻で謎となっていたようなことの多くは2巻でだいたい明らかになる。2巻も再びクリフハンガーで終わるんだけど、1巻と規模がぜんぜん違う。インフレ展開の基本に沿っているようなスケールアップ具合。
 ミッションにちょっと強引なところもあって作中でも自覚的なやり取りもあったりする。でも全体としては納得に支障のない許容範囲。

 1、2巻ともに、必ずしも完全ではなく性格面での欠陥も備えた人物たちの群像劇。〈家族〉というのがひとつのキーワードに据えられていると思うけど、邦訳1巻解説でも書かれているように、主要人物たち全体が疑似家族的共同体になっているようでもあって、気質に長短を持った人物たち相互の関係における機微の描かれ方に魅力がある。








2000..01..
2004..05..06..07..08..09..10..11..12..
2005..01..02..03..04..05..06..07..08..09..10..11..12..
2006..01..02..03..04..05..06..07..08..09..10..11..
2007..01..02..03..04..05..06..07..10..11..12..
2008..01..02..03..04..05..06..07..08..09..10..11..12..
2009..01..02..03..04..05..06..07..08..09..10..11..12..
2010..01..02..03..04..05..06..07..08..09..10..11..12..
2011..01..02..03..04..05..06..07..08..09..10..11..12..
2012..01..02..03..04..05..06..07..08..09..10..11..12..
2013..01..02..03..04..05..06..07..08..09..10..11..12..
2014..01..02..03..04..05..06..07..08..09..10..11..12..
2015..01..02..03..04..05..06..07..08..09..10..11..12..
2016..01..02..03..04..05..06..07..08..09..10..11..12..
2017..01..02..03..04..05..06..



recent entries ::



music log INDEX ::
A - B - C - D - E - F - G - H - I - J - K - L - M - N - O - P - Q - R - S - T - U - V - W - X - Y - Z - # - V.A.
“でも、これはごまかしよ、ね。つかまったと思ってるだけ。ほら。わたしがここに合わせると、あなたはもう環 (ループ) を背負ってない”
―Angela Mitchell