挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ゴブリンサバイバー〜転生したけどゴブリンだったからちゃんと生き直して人間になりたい!〜 作者:坂東太郎

『第三章 漁村 ペシェール』

60/79

第二十一話 オクデラたちとも合流できて救出作戦は成功ゴブ! 俺は二回死んだけど成功ゴブ!


 ボスオーガとの戦いを終えた俺は、森を一人歩く。
 いやあ、アイツは強敵だったゴブなあ。
 まさに死闘だったゴブ。
 まあ死んだの俺だけですけど! ゲギャギャッ!

 ボスオーガが勝ったと思ってどっか行ってくれなきゃ俺は何回も死ぬハメになっただろう。
 たぶんライフポイントが尽きて、本当に死ぬまで。
 もしかしたら逃がしたオクデラたちも追いかけられて捕まったかもしれない。
 でも、俺は生きてる。
 ボスオーガはいなくなった。

 死合いに負けて勝負に勝ったってことゴブな! 俺もみんなも無事なんだし! おっと、無事かどうかはまだわからないか! 早く合流しないとね!

 そんなことを考えて、俺は走り出す。
 ボスオーガが去った方に背中を向けてるから【逃げ足LV2】は役に立つゴブな?
 そうだ、ゴブリンリーダーから雑魚ゴブリンに戻って体が小さくなったから革鎧を調整しておかないと! 10LP(ライフポイント)でコスパいいし、今度死んだらまたゴブリンリーダーにしようっと!

 俺たちが倒したゴブリンやオークの死体が転がる場所を通り過ぎて、さらに森を走って。
 倒しきってないはずなのに、ゴブリンとオークは見当たらない。
 けっこう殺したしボスオーガも撤退したし、雑魚たちもきっと逃げたんだろう。
 オクデラたち追われてないゴブな? まあただのゴブリンとオーク相手ならアニキとオクデラがいるし大丈夫か! 大丈夫だよね? オクデラ骨折してるし、アニキは昔ゴブリンに囲まれてボコられたけど大丈夫だよね?

 走るスピードをちょっと速める。
 いや不安になったわけじゃないから! 俺、オクデラとアニキのこと信じてるから! 早く合流したいなって思っただけだし!

 やがて森を抜けても、まだオクデラたちは見当たらない。
 どんどん不安になっていく俺、【森の臆病者(チキン)】ことゴブリオ。
 気がつけば、俺は全速力でダッシュしてた。
 ほら出番だスキル【逃げ足LV2】! 遠くが見えるようになった【覗き見LV2】も活躍する時ゴブ! LV2なのに二つともボスオーガとの戦いで役に立たなかったし!

 草原を駆け抜けて、ニンゲンたちの道に出る。
 ここまで来れば漁村まであと少し。
 道の先を【覗き見】する。
 いた。

 最後尾を走るのはアニキだ。
 いや、新型アニキだ。
 鉄の棒を持って、後ろと左右を警戒しながら走ってる。
 アニキ、あらためて見るとホントゴブリンっぽくなくなってるゴブ。
 全身ウロコにおおわれて尻尾があるゴブリンってどういうこと? 俺ひょっとしてアニキを倒したら新しい種族を選べるようになる? ダメダメ、そんなことしないゴブ! せっかく再会できたアニキなんだから!

 アニキの前を走るのはオクデラだ。
 若女将とプティちゃんを背負子に乗せて、ドタドタ小走りのオクデラ。
 ボスオーガと戦って一番ダメージを受けたのはオクデラなのに。
 俺? 俺のダメージはもうないからね! ほら俺一回死んだから! 死んで生き直しで全快してるから! ダメージなんてないゴブ!

 オクデラが若女将とプティちゃんを背負ってるのは、アニキを自由にするためだろう。
 ゴブリンとかオークとか、それ以外のモンスターに襲われたら誰も対応できなくなっちゃうから。
 これたぶんアニキの案ゴブな。
 もしかしたら「オデ、ミンナ、守ル! 運ブ!」とかオクデラが言ったのかもしれないけど。

 先頭を走るのはシニョンちゃんだ。
 若女将はまだ立てないみたいだけど、シニョンちゃんはもう走ってる。
 魔法を使い切ったからか、手に短剣を持って。
 危なっかしいゴブ! とりあえず短剣はしまって! 【受難】のせいで転んでケガしたら大変ゴブ! LV2になった【受難】とかマジで何があってもおかしくないから!

 走るシニョンちゃんから目が離せない。
 いや危なっかしいからだよ? そんな、走るおっぱいちゃんのおっぱいが大変なことになってるからとかじゃないよ? 本当ゴブよ?

 俺がボスオーガを前に一人残ったことはムダじゃなかった。
 みんな無事だ。
 俺は一回死んだけど、生き直しでいま生きてるわけだし。

 走る『ストレンジャーズ』と若女将とプティちゃんの姿がぼやける。
 悔し涙じゃなくて、うれしくて。
 走ってみんなに近づく。
 待ちきれなくて、叫ぶ。

『おーい、みんな!』

 俺の声が聞こえたんだろう。
 立ち止まったオクデラにアニキがぶつかった。

 あっぶな! これ順番間違ってたらアニキがシニョンちゃんにぶつかって、シニョンちゃん転んで短剣にブッスリとかあり得たゴブ! どうしたアニキ、俺たちのアニキはそんなに鈍くなかったゴブよ?

『ゴブリオ! オデ、オデ、心配デ、ゴブリオ!』

『ゴブリオさん! よかった、無事なんですね!』

 泣き出して意味のない言葉になったオクデラとシニョンちゃんの声が聞こえる。
 あ、わかった。

「アニキ! 俺、無事に逃げてきたゴブ!」

 アニキには【人族語】通じませんでしたわ! それで反応遅かったのねアニキ!
 俺は【ゴブリン語】でアニキに呼びかける。

「ゴブリオ! あの強敵を相手に切り抜けたのか! 立派なゴブリンになったのだな」

 そう言ってちょっと目に涙を溜めるアニキ。
 …………。
 ……アニキィ! 立派なゴブリン程度じゃボスオーガ相手に切り抜けられないからね! あいかわらずちょっとズレてるゴブなあ!

 三人と、若女将とプティちゃんの姿が近づいてくる。
 俺は駆け寄って飛びつい……これ誰に飛びついたらいいゴブか?

 やっぱりずっと一緒だったオクデラ?
 オクデラはないゴブな! オークに抱きつくのがイヤとかそういうことじゃなくてオクデラは二人を背負って左腕を骨折してるからね? イヤなわけじゃないよ?

 やっと再会できたアニキ?
 アニキもないゴブな! リザードマンだかゴブリンだがわからない新種っぽい種族に抱きつくのがイヤとかそういうことじゃなくてアニキは警戒役だから! 抱きついたらモンスターに反応できなくなっちゃうから!

 ってことで、俺はシニョンちゃんに飛びつきました!
 やわらかい感触で受け止められて天国はここにあったゴブゥ!

『無事に帰ってきたゴブ! ただいまみんな!』

『ゴブリオさん! 私、心配で、でも逃げないとみんな死んじゃうから』

『ゴブリオ、無事、ヨカッタ! オデ、仲間、置イテ行ク、ツライ! 無事、ヨカッタ!』

 シニョンちゃんは俺を受け止めてくれて、オクデラは泣きながら右腕で俺を触ってくる。

『ゴブリオさん、みなさん。本当に、ありがとうございました』

 オクデラの背中から声が聞こえる。
 ゴブリンとオークの群れから助け出した若女将だ。
 プティちゃんの声はない。
 幼女はまだ、震えていた。

「ゴブリオ、再会を喜ぶのは後にしよう。オクデラから聞いた。ニンゲンの村に行くのだろう?」

「あ、そうだねアニキ! 『みんな、詳しい話は漁村に帰ってからにするゴブ!』」

 俺とオクデラはどっちもわかるけど、シニョンちゃんたちは【人族語】しか理解できない。
 アニキの提案を【人族語】で伝えて。
 俺たちは、漁村に向けて歩き出した。

 小さな丘を越えて見えてきた、漁村へ。

 よし、若女将と幼女は救出してきたゴブ! これで人の被害はなし!
 俺たちがいない間にゴブリンとオークの群れに襲われた漁村だけど、俺たちまた入れるゴブな?
 アイツらとは違ういいゴブリンといいオークだって証明できたゴブな?
 冒険者ギルドのおっさんも「なんとかする」って言ってたしイケるって信じてるゴブ!

 せっかく文明的な生活ができたんだからお願いします神様ァ!
 あとシニョンちゃんの【受難】のスキルレベル下げてくれませんかね? なんだったらスキル削除して欲しいんですけど! いやこれが【受難】のせいとも限らないけどさあ!
 準備なしでフィールドボスと遭遇戦とか悪夢ゴブ!
次話、4/7(金)18時更新予定です。

【 お知らせ 】
『ゴブリンサバイバー』、書籍化します!
今日は4/1でエイプリルフールですが、マジです!
出版社さんの正気を疑う書籍化の詳細は活動報告をご覧ください!
発売は来月の5/25ということでいやホントまじかよ!
あ、ゴブリオ&シニョンちゃんのキャラデザインも活動報告で公開します!
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ