挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ゴブリンサバイバー〜転生したけどゴブリンだったからちゃんと生き直して人間になりたい!〜 作者:坂東太郎

『第三章 漁村 ペシェール』

54/79

第十五話 しんがりは死亡フラグ? 罠とか投石とか卑怯な手を使って追撃を遅らせるだけゴブ!


 ゴブリンとオークの群れに連れ去られた『斧槍亭』の若女将とプティちゃん。
 俺は二人を助けるために群れに潜入して、オクデラはシニョンちゃんを背負って突進してきた。

 いまシニョンちゃんはオクデラから下りて、今度は若女将とプティちゃんをオクデラの背負子に乗せようとしてる。
 若女将がプティちゃんを抱いたまま、二人まるごとオクデラにおんぶされる感じだ。

 幼女と未亡人サンドイッチはともかく、もうちょっと急いでほしいゴブ! ゴブリオ、雑魚ゴブとオークと戦っててけっこう大変なんですけど! 雑魚ゴブは弱くてジャマなだけだけど、オークは一撃が重いから気を遣うゴブな! くっそ、スキル【回避】あたりを取っておけばよかった!

 雑魚ゴブリンは投擲で倒して、力任せのオークの攻撃は避けてそのスキに短剣で傷つける。
 いまは戦えてるけどけっこうギリギリゴブ! 疲れたり集中力が途切れたらヤバい! 正々堂々戦うのって大変ゴブなあ! ゴブリオ騙し討ちと不意打ちと卑怯な戦いばっかりで知らなかったゴブ! 並べると俺の戦い方が酷すぎてさすがゴブリン、鬼畜生!

『ありがとうオクデラさん。重くないかしら?』

『大丈夫! ゴブリオ言ッテタ、オデ、力強イ! 女将モ、プティモ、助ケル!』

『ゴブリオさん、準備できました!』

 シニョンちゃんに言われてチラッと後ろを見る俺。
 オクデラはプティちゃんと女将を背負って、タワーシールドを両手で構えてる。
 シニョンちゃんは長い法衣の裾をまくって余った部分を結んでる。

 そうそう、シニョンちゃんの法衣はロングスカートみたいで走りづらそうだもんね! ペロッとめくって結んだら走りやすいよね!
 っておいいいいい! シニョンちゃん生足むき出しじゃん! 普段見えないところが見えるってエロい、じゃなくて、これで走ったらばいんばいんもついてきておいいいいい! 罠ゴブな? これ俺の視線を釘付けにする罠ゴブな!? いてっ!

 予想外の光景に目をとられて、ゴブリンの棍棒が肩に当たった。
 くっ、シニョンちゃんが天然すぎて俺がヤバい件!

『ゴブリオさん!?』

『大丈夫ゴブ! オクデラ、シニョンちゃん、走れ! 俺が後ろを守るゴブ!』

 ちょっと痛かったけど、おかげで正気に戻った。
 危ない危ない、シニョンちゃんのせいで危うく死ぬところだったゴブ! まあ俺死んでも復活するんだけど! でもちょっとタイムラグあるし、そのせいでシニョンちゃんが襲われたら大変だからね! 痛いだけですんで良かったゴブ!
 とにかくこれで準備オッケーゴブな!

 さあ脱出だ!
 しんがりはこの俺、ゴブリオが担当するゴブ!
 退却戦のしんがりってめっちゃ死亡フラグだけど大丈夫ゴブな?
 ……まあ俺死んでもまた生き直せるし! 問題ないっちゃ問題ないんだけどね! ハハッ!


 リーダーが死んでまとまりがなくなったゴブリンとオークを、オクデラが突進して突破してく。
 オクデラは長柄のメイスを持たずに、タワーシールドを両手で構えてはね飛ばしてく感じだ。
 スピードが違うからか、同じオークでさえ突き飛ばしてく。

 オクデラのすぐ後ろをシニョンちゃん、最後尾を俺が走る。
 俺は残り少なくなった投剣を転んだオークに投げて【投擲術】で仕留めてく。
 よし、これでオークを2匹殺した! オークはあと5匹ゴブな! 雑魚ゴブリン? いっぱいいるけどしょせん烏合の衆ゴブ! 鳥じゃなくて小鬼だけど!

 先頭のオクデラがゴブリンとオークの群れを抜けた。
 ここからは最後尾の俺の見せ場だ。

「んじゃ最初はコイツで妨害してやるゴブ!」

 俺たちを追おうとするゴブリンは多い。
 投剣はさっきので打ち止めだし、俺は漁村の武器屋で作ってもらった道具を地面にまき散らす。
 小さいウニみたいなトゲトゲの形。
 まきびしだ。

 アイツら裸足だから予想通りよく効くゴブ! あ、俺とオクデラは靴をはいてます! 俺はゴブリンだからゴブリンの弱点はよーく知ってるゴブ!

 最初に俺たちを追おうとした集団は、まきびしで足を止めた。
 よーしよし、逃げながら時間を稼ぐのは俺に任せておけ! 元人間の知恵を見せてやるゴブ!

 女将とプティちゃんを背負ったオクデラが先頭を走って、すぐ後ろにシニョンちゃん。
 ちょっと離れて、俺は逃げながらゴブリンとオークを足止めする。
 スキル【逃げ足LV2】と【覗き見LV2】と【隠密】持ちの【森の臆病者(チキン)】にぴったりの役割ゴブなあ! ほらほら、まきびしの次はボーラでも食らうゴブ!

 もたつくゴブリンたちを追い越してきたのは2匹のオークだ。
 オークの足下に向けてボーラ、重りを付けたヒモを投げたら、引っかかってゴロゴロ転がる。
 デカい体が後続のジャマになってるゴブなあ! 思った通りにかかって俺の笑いが止まらないゴブ! ゲギャギャッ!

 俺はわざとゆっくり走って敵を妨害して、そのスキにオクデラたちは距離を稼ぐ。
 追いかけてくるモンスターとちょっと距離が開いたスキに、俺は木と木の間にロープを渡す。
 低い位置に張ったけどロープは丸見えだ。
 でも。

 はい引っかかりました! さすがゴブリン、しょせん鬼畜生! ちょっと挑発したらすぐまわりが見えなくなるゴブなあ!
 くっそ、ちゃんと結ぶ時間がなくてあっさりほどけちゃったのがもったいない!
 ついでに時間差はナシで、煙が出る罠を仕掛けておいたゴブ! もっと後ろのヤツらが来る頃には煙で見えなくて迷うかもしれないからね!

 自分の手際に満足してうんうん頷く俺。
 ゴブリンの巣穴でも使った罠は、すぐにモクモク煙を出す。
 洞窟じゃないからいまいち効果は薄いかもだけど。
 投剣にまきびしに煙幕って、これまるでニンジャみたいゴブな! 俺ゴブリンだけど! ゴブリンのニンジャ? (ニン)ゴブリン? ゴブ(ニン)

 そんなくだらないことを考えてた俺は、油断してたんだろう。
 煙の向こうから、()()()()()()()()()()

「ゴブッ!」

 ゴブリンが当たって倒れる俺、ゴブリン。
 気を失ったっぽいゴブリンとからまってもがく俺、ゴブリン。

 ニヤニヤと嗤いながらオークが走ってくる。
 このオークが煙の向こうからゴブリンを投げつけてきたらしい。
 オクデラとアニキの協力技の大ジャンプとは違って、ただモノを投げる感じで。
 くっそ油断してたゴブ! おごれるゴブは久しからず! オクデラたちは……よし、見えないぐらい先に行ってる! すぐ立ち上がってコイツらを……。

 なんとか仰向けになってゴブリンをどかした俺、ゴブリン。
 走ってきたオークがジャンプして、両足で俺にストンピングした。

「ゴブゴブッ」

 倒れてた俺の腹と胸を踏みつける感じで、思いっきり体重を乗せて。
 俺の口からゴパッと血が出る。ゴブッと血が出る。

 いた、痛すぎるゴブゥ! これきっと内臓破裂して、あ、やべ。
 視界いっぱいに棍棒が見えて。

 俺は死んだ。
 ひさしぶり!

  □ □ ■ ■ □ ■ ■ □ □

 俺はまた謎の空間にいた。
 緑色のグリッドっぽい線が光るステージと、半透明のスクリーンがある空間だ。

「はあ、ほんと油断してた。あとめっちゃ痛かった」

 腹をさすりながらステージに近づく俺。
 死んだからか今は痛くないけど、できればもうあんなのは二度と体験したくない。

「死ぬほどの痛みとか言うけど、俺の場合はホントに死んでるからなあ。まだ痛い気がする」

『種族を選んでください』

 無機質な女の声に従って、片手でスクリーンにタッチして起動する俺。
 つっこまないで言う通りにするあたり、俺もすっかり慣れたもんだ。
 おっと、迷ってるヒマはない。
 こっちで過ごした時間だけ、生き直しの時にタイムラグができるかもしれないし。

 その辺も検証したいけど、そのためにいちいち死ぬのはなあ。
 痛すぎるからちょっとご遠慮したい。

「さーて、今回はライフポイントも溜まってるからね! ゴブリンもめっちゃ倒したし、選べる種族は……おお、増えてる!」

 ゴブリンベイブ1、ゴブリン1、ゴブリンリーダー10、ゴブリンシャーマン20、ゴブリンヒーラー20、ゴブリンジェネラル200……。

 いままでゴブリンベイブとゴブリン以外はグレーの文字だったけど、ゴブリンリーダーが白文字になってる。
 ライフポイントが足りててもグレーは選択不可で、白はOK。
 つまり。

「これ選択可能ってことだよね! よし、ゴブリン殺し(キラー)って呼ばれるほどゴブリンを殺しまくったかいがあったゴブ! 洞窟にいたアイツかな? それとも今回の群れのリーダー?」

 独り言を言いながら俺はゴブリンリーダーをタッチする。

 ライフポイントが82も溜まってたから、ベビースライム10、スライム20、ホーンラビット50あたりも選べるんだけど。
 でもアイツら雑魚モンスターだったし、だったらゴブリンリーダー10を選ぶのは当然だろう。
 せめてソードディア200なら考えたんだけど。
 まあポイントライフ足りないけどね!
 それに【短剣術】も【投擲術】も使えないしなあ。

 そんでやっぱり普人族、ニンゲンは100万ライフポイントって遠すぎでしょ……。
 あと99万9918LP(ライフポイント)! このままじゃ溜まる気がしないです! だから同じゴブリンでも、雑魚ゴブより強そうなゴブリンリーダーを選ぶんだけど!

 ゴブリンリーダーの文字をタップしたら、画面にはYES・NOの選択肢が出てきた。
 迷うことなくYESを押す俺。
 画面が一瞬暗くなる。

『スキルを選択してください』

 はい次、次! ニンゲンになるまで遠すぎるとかいま考えてもしょうがないからね! それにほら、雑魚ゴブでスキルもなかった頃と比べたら、俺かなり強くなってるから! この調子でガンガン強くなってLP溜めるスピードを上げてけばきっとなんとかなるって! ゴブリオ無双でライフポイントがっぽり!

 そんなことを考えながらスキル欄を見る俺。
 左側はスキルと必要LPの一覧で、右に選んだ種族の初期スキルっぽいものが並ぶ。
 右側には、【夜目】【統率】【ゴブリン語LV2】があった。

 え、待って、【統率】? スキルが生えた覚えも取った覚えもないけど? ゴブリンリーダーだから? ……おっと、検証はあとだあと! いまオクデラたちがピンチかもしれないから!

 考えるのを止めて、これまで持ってたスキルを選んでく俺。
 【覗き見LV2】【逃げ足LV2】【隠密】【短剣術】【投擲術】【人族語LV2】。
 スキルレベルは上げられないけど、元々上がってた分はレベルキープしたまま取得できる。
 やっぱりライフポイントの消費はない。

「よしよしよし、俺どんどん強くなってくゴブなあ! ライフポイントはあと72あるし、あんまり時間はかけられないけどスキルをちょっと追加してくゴブ!」

 急ぎ気味でスキル一覧をスクロールする俺。
 今回の死に方で、俺は思ったことがある。

「くっ、耐性系スキルに【苦痛耐性】がない! あればラクに死ねるのに!」

 いやラクに死ねるっておかしいんだけど! 俺自殺願望ないからね! 毎回死にたくないのに死んでるからね!
 あわよくばと思ったんだけど、やっぱりこの世界の神様は俺に優しくないみたいだ。
 神様が実在するのかどうか知らんけど。

「んんー、じゃあやっぱりコレかなあ。あとは……おっ、コレこれ!」

 言語系以外のスキルは、取得するのに一つ10LP以上かかる。
 俺が選んだ二つのスキルのうち一つは10で取れたけど、もう一つは30も必要だった。
 82あったライフポイントはゴブリンリーダーを選んだことで10減って、このスキルセレクトで40減ってあと32だ。

「もう一つか二つ取っても大丈夫だと思うんだけど……迷って時間経って、生き直しにタイムラグができたら最悪ゴブ! 初めての種族変更だし、とりあえずコレで!」

 ライフポイントは残機。
 そう考えてるから、やっぱりここは慎重に。
 まあ雑魚ゴブリンより強くなったし、スキルも二つ取ったしひとまずこれで充分ゴブ! いま逃げてるところだし、時間かかってオクデラたちが追いつかれたら大変だしね!

 スキル選択画面に出ていたYESをタップして、続けてスキル選択を終了しますか? YES・NO、と出てきたので、またYESを押す。
 スクリーンとステージの光がだんだん暗くなっていく。

「あいかわらず合図なしかよ! 盛り上げるためにここは改善してほしいんですけど! がんばれ運営! いるのかどうか知らんけど!」

 俺の叫びも虚しく、薄暗い空間はどんどん暗くなっていく。
 死んだ時みたいにだんだん頭もぼんやりしてくる。

 待っててねシニョンちゃんと若女将とプティちゃん! ゴブリオすぐ復活してまたしんがりを務めるゴブ! オクデラ? 覚悟決めて殺る気になったみたいだし、そうそう殺られないって信じてるゴブ!

 さあ、ゴブリオはこれまでのゴブリオとは違うゴブよ? 雑魚ゴブからゴブリンリーダーになって強くなったはずのゴブリオのお披露目ゴブ! ゴブリオ無双伝説のはじまりゴブなあ! 待ってろゴブリンとオークども! 内臓破裂と撲殺の恨みを倍返ししてやるゴブゥ!

■ ゴブリオ(ゴブリン → ゴブリンリーダー)
 【ライフポイント】
  82 → 32
 ※スキルは次話公開します!
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ