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 日本銀行の金融緩和が行き過ぎることへの懸念に対し、日銀の政策委員が講演で相次いで反論した。雇用改善は金融緩和の成果で、目標の「物価上昇率2%」も達成可能だとした。しかし専門家は「違和感がある」と指摘する。

 「ヒトラーが正しい金融財政政策をしたことでかえって世界が悪くなった。(ヒトラーの)前の人たちがやればよかった」。原田泰審議委員は29日の講演で持論を展開した。ナチス以前は景気刺激などに消極的だったために失業が増え、その後のヒトラーの公共事業拡大が支持され、大戦の悲劇を招いたと主張。金融緩和や積極財政の重要性を強調した。原田氏は「子どもの貧困率が減ったと最近報道された。これも金融緩和策のおかげだ」とも述べた。

 原田氏は市場に大量のお金を流す積極緩和を主張する「リフレ派」。同様の考え方の岩田規久男副総裁は22日の講演で、「2%」は「将来の物価上昇を先取りする動きが徐々に広がる」ことで実現可能だとし、達成を疑問視する見方に対し「民間の予想が日銀に近づいてくる」と語った。

 ただ物価上昇率はゼロ%台にとどまり、消費も本格回復していない。金融政策の専門家からは「自己正当化の主張に違和感を覚える」(みずほ証券の上野泰也氏)「苦しい釈明だ」(東短リサーチの加藤出氏)と批判する声が出ている。(藤田知也)

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