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 朝鮮半島は冷戦構造が今も残り、民族が分断されている。その現実を背負う韓国で、民主化宣言が出て30年を迎えた。

 軍事独裁政権の終わりを告げた宣言までの過程では、日本の支援活動も大きく寄与した。

 以来、韓国は民主化とともに飛躍的な経済成長も遂げた。いま直面する少子高齢化や低成長下の財政難など様々な悩みは、日本も共有する難題だ。

 活発な市民交流を背景に、今後も日韓ともにより成熟した民主主義を目指していきたい。

 韓国ではかつて、権力による弾圧と抵抗する市民の壮絶な闘いが繰り返された。初代大統領の李承晩(イスンマン)氏は独裁を強め、不正選挙に怒りを爆発させた民衆らによって国を追われた。

 その後、クーデターで権力をつかんだ朴正熙(パクチョンヒ)、全斗煥(チョンドゥファン)の二つの軍事政権は、反体制勢力を徹底的に抑圧した。だが、自由への渇望は絶えることなく人々は街頭に繰り出し、1987年6月、大統領直接選挙制をうたう民主化宣言を勝ち取った。

 その後も人々は行動で民意を表してきた。

 朴槿恵(パククネ)前大統領は韓国憲政史上初めて弾劾(だんがい)、罷免(ひめん)された。封建的なふるまいに民主主義の危機を感じた市民が毎週、通りを埋め尽くし、政治を動かした。

 非暴力に徹して目的を遂げたことは、民主化の進展と評価される。一方で、議会や政党などはなぜ権力の暴走を許してしまったのかという、構造的な不備を指摘する声もあがる。

 大統領への権力集中や財界との癒着など、確かに問題はあろう。どの国であれ、民主主義に完成型はなく、容易に後退もするものだ。不断の改善を積み重ねるほかあるまい。

 日本政府はかつて外交青書で韓国を「我が国と、自由と民主主義、市場経済等の基本的価値を共有する重要な隣国」と表現してきた。だが、2年前からは「基本的価値」を削除し、最近では「戦略的利益を共有する最も重要な隣国」としている。

 産経新聞の記者が大統領の名誉を傷つけたとして起訴されたことなどが理由とされるが、日韓が自由と民主主義を土台とする基本的な価値を共有しているのは明らかだ。

 一方、韓国民主化の過程で芽生えた日韓の市民交流は、世代を超えて広がっている。政治の関係が悪化してもこの絆がしっかりと両国をつないできた。

 NGO、文化、学術、経済など、連帯の裾野をもっと広げていきたい。隣国との交流による学びあいは、日本の民主主義の発展にも役立つだろう。

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