アルツハイマー型認知症とは?原因と症状の変化、治療法、対応法について
2017/06/26
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認知症というと「アルツハイマー」という言葉をよく耳にするのではないかと思います。
おそらく、子どもでも知っているというくらい周知されている言葉です。
アルツハイマー病を原因とする認知症は認知症の中でも約50%を占め、認知症の中では一番多いタイプです。
しかし、実際にどのような症状が出るのか、というのはあまり知られていません。
認知症というだけで、何もこの人は理解していないと誤解され、本人を傷つけてしまったり、そのことによって逆に対応を難しくさせたりしてしまっていることも現実にはあります。
アルツハイマーについてまずは正しく知っていきましょう。
もくじ
アルツハイマー病と認知症の違いについて
まずは言葉を整理しておきましょう。
認知症には大まかに4つのタイプがあります。
その中の一つアルツハイマー病という病気によって引き起こされるのがアルツハイマー型認知症と言われるものです。
認知症は脳の中にできる病変によって引き起こされる症状です。
人格や人間らしさを徐々に失っていくのが認知症ですが、その症状は本人が好きで出しているのではなく、病気がさせている、という理解をして頂いた方がよいと思います。
認知症の他のタイプについてはこちらの記事も合わせてお読みください
▶関連記事 認知症の4つのタイプ
アルツハイマー病の原因は?
犯人はアミロイドベータとタウたんぱく
タンパク質を切断するときに出る老廃物「アミロイドベータ」と神経細胞の骨格を作る「タウたんぱく」が脳の中に蓄積されることによって、脳神経細胞を傷つけ、委縮させてしまうのがアルツハイマー病の原因です。
「アミロイドベータ」は通常であれば酵素によって分解されたり、脳を流れる脳脊髄液で処理されたりします。しかし、アミロイドベータが処理されず、脳の中に溜まってくると、脳神経を傷つけ老人班というシミを作ります。
「タウたんぱく」も人の脳を形作るのには必須のタンパク質で、誰でも持っている通常は無害のものです。しかし脳の中に蓄積されると脳神経細胞の繊維を絡め合わせてしまう「神経原繊維変化」を起こしてしまいます。
老人班や神経原繊維変化が起こると脳細胞が死滅したり、細胞同士の伝達が滞り、結果として脳機能の低下を引き起こすのです。
脳のどこに溜まる?
脳は4つのパートに分けることができます。
アミロイドベータはまず、側頭葉や頭頂葉に溜まり始めます。
特に、側頭葉の内側にはある「海馬(かいば)」という記憶の中枢に溜まります。
アルツハイマー型認知症が「もの忘れ」の症状から始まるのは、アミロイドベータが1番最初に溜まりやすいのが記憶を司る海馬だからです。
徐々に海馬から側頭葉そして頭頂葉に範囲が広がっていきます。
左半球の側頭葉には言葉を聞いて理解する部位があります。
また、頭頂葉には言葉の読み書きや、空間認知、計算、道具の使用などの中枢があります。
最後に前頭葉まで委縮の範囲が広がります。
前頭葉は、思考力、判断力、集中力、意欲、情動や行動の制御、創造性などの働きをもち、もっとも人間らしい活動をするための部位になります。
認知症の症状の変化
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初期症状はもの忘れ
例えば、今日の朝ごはんに何を食べたか忘れることは良くあると思いますが、認知症のもの忘れは朝ごはんを食べたことそのものを忘れてしまいます。(出来事記憶の障害)
また、今の時間や日にちの感覚、場所の感覚が分からなくなります。(見当識障害)
昔のことはよく覚えていますが、新しいことを覚えることは難しく、例えば入院している病室からトイレに行った際、自分の病室まで戻れなくなることがあります。
一番大変な中期
認知症の中期になると、数年単位で記憶が消えてしまいます。自分のことを20歳~30歳くらい平気でさばを読みます。
しかし、昔の記憶はしっかり残っていて、流暢に話すことができる場合が多いです。
認知症だからといって、今まで住み慣れていた家を離れて子ども夫婦と同居した場合によく起こるのが、新しい家を自分の家と認識できず、自分の家に帰ると言って聞かずあちこち歩き回り迷子になる「徘徊」という症状が出ます。
排泄行為も問題が出てくるようになり、家族としては一番介護の負担が大きい時期です。
歩くことも少しずつ難しくなり、転倒して骨折し入院して、さらに認知症が悪化したり、入院したことがきっかけで寝たきりになってしまうことは良くあります。
後期~終末期
後期には、脳の機能全般が低下し、自分が誰なのか、相手が誰なのか、それがたとえ自分の子どもでも分からなくなります。声をかけても返事をしなかったり、何もかもに意欲がみられなくなります。
最終的には嚥下能力も低下し、口から食べられなくなったり、誤嚥して肺炎をおこすこともあります。
アルツハイマー病の治療法
残念ながら、今のところ認知症を治す治療法は見つかっていません。
しかし、いろいろな研究がなされており、今元気な人が将来認知症にならないためにどうしたらよいのか、また、認知症が軽度なうちに対策を立てたり、薬を服用することで、認知症の進行を抑えることが出来ることが分かってきました。
認知症の方への対応の仕方
できるだけ早めに専門家へ
認知症の初期の段階では、本人にも認知症なのではないかという自覚がありとても不安に感じていることが多いです。
見守る家族としても、本人の様子がおかしいことに気が付き、不安に感じていることだと思います。
家族として、どのように対応していくのか、というのは悩ましいところなのではないでしょうか。
まず、認知症は病気が原因で起こっているものだと認識してください。
決して本人が悪いわけではありません。
病気がさせてしまっているのです。
本人もどうすることもできないのです。
そして、初期の段階で手を打つことで、認知症の進行を抑えることは可能なので、できるだけ早く専門の病院にかかることをおすすめします。
総合病院などでは認知症を専門に診る「もの忘れ外来」や「認知症外来」といった診療科があることもありますが、まずは「脳神経外科」や「神経内科」に相談するとよいと思います。
またこのブログで紹介している予防法を実践してみてください。
初期の段階では、まだ理解力は保たれている場合が多いので、自分で自覚して取り組むことも可能と思います。
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人として接する
認知症の方への対応として、忘れていけないことは、「人として接する」ことです。
一緒に暮らす家族としては、なかなか難しいことだとは思います。
でも認知症の方たちは「人として扱われないこと」にとても傷ついています。
感情を司る前頭葉は最後まで保たれているのです。
認知症の中期までの段階では、何もできない、何も分からないわけではありません。
楽しければ笑うし、不当に扱われれば悲しむし、怒るし、傷つきます。
「人として接する」という当たり前のことを忘れないでほしいと思います。
否定しない
こちらとしては、問題行動に思えても、認知症の頭の中ではちゃんと筋が通っているので、あからさまに否定するのは避けた方がよいと思います。
理屈で説得しようとしてもなかなかそれを理解することはできませんが、否定されたということは分かるのでそれに対して怒ったり、傷ついたりします。
物事の記憶は残りませんが、感情の記憶は残るのです。
まとめ
私は、これまでアルツハイマー型認知症の方を何人も見てきました。
私の勝手な印象ですが、認知症の方は、今まで普通にしていたことがだんだんできなくなって、家族からも頼りにされなくなったり、信頼されなくなったりし、人としての自信を失ってとても寂しいのではないかと感じています。
家に帰りたい……と歩き回るのも、そもそも寂しいからなのではないでしょうか。
自分で言うのもなんですが、できるだけ認知症の患者さんには人として尊敬の念をもって接するように心がけています。
症状は人それぞれ違いますが、昔の事など、ほんとうに楽しそうにお話ししてくださる方や、自慢話を流暢にされる方もいて、接し方を変えるだけで、この人は本当に認知症なの?とびっくりするぐらい素晴らしい一面を見せてくださることもたくさん経験しています。
世の中の常識とはずれているかもしれませんが、認知症の頭の中ではきちんと道理が立っていることもあり、逆にドキッとさせられることもあります。
確かに日常生活の異常行動に対応することはとても大変なことだと思いますが、認知症の方とのコミュニケーションは意外と面白いものだと感じています。
認知症の家族を介護されている家族にとっては、とても負担が大きく、とてもそんな風には思えないかもしれません。
でも、認知症であろうが、なかろうが、人として接するという当たり前のことを忘れないようにしたいものです。
参考文献
この記事は以下の参考文献を参考に書かせて頂きました。
『生涯健康脳』 東北大学加齢医学研究所 教授 瀧 靖之著
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