snikka_old01_今回はスーパーニッカの古酒を飲んでみます。

スーパーニッカは1962年にニッカウヰスキーより発売されましたが、創業者の竹鶴政孝が、前年に亡くなった最愛の妻、リタに捧げる、ともに臨んだ夢を具現化したウイスキーでした。

当時はまだ余市蒸溜所しかなく、カフェ式蒸留器もない時代。実際の内容はほとんど長期熟成された余市モルトだったと思われます。ボトルもカガミクリスタル製の手吹きボトルということで、とても高価なものになっていました。

その後カフェグレーン原酒が出来、宮城峡蒸溜所が建設され、宮城峡モルトも使えるようになり、涙滴型のボトルも量産化が可能となったことで、ブレンドも改められていき、徐々に購入しやすいものへと変化していきました。

その間に、ニッカはスーパーニッカを積極的にテレビCMで宣伝を行い、ライバルのサントリーリザーブ、ローヤルへ対抗していきました。


現在のボトルは、2009年より余市の新樽原酒をキーモルトに加え、従来よりもまろやかさを強調したブレンドに改められています。当時は「S」の文字を背負ったようなデザインでしたが、2年前に現在のシンプルなボトルに改められました。

今回入手したボトルは、特級表記が書かれたものであり、ラベルは「SUPER」の表記が大きく、ボトルも量産化されたものですので、1977年から酒税が改正される前の1989年3月までのものと思われます。

早速飲む前に、対象として現行品と比較していきます。
ちなみに容量において、古酒では主に760mLのものが多いですが、これはアメリカでの0.8クォート(=757.082mL)に相当すると言うことで、スコッチウイスキーでも古い物はこの容量になっています。
その後はメートル法準拠で750mL→700mLへと変化しています。
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まずはストレートから。特級ボトルのスーパーニッカをグラスに注ぐと、液色は中庸な琥珀色、香りはレーズンとナシ、ピートが織り交ざってきます。

口に含むと、ゴム、レーズン、ナシが強く口に広がり、後からスモーキー、バナナ、カラメルへと続きます。
味わいは、アルコール由来の辛さはそこそこありますが、その後は甘さが主体となり、酸味、ビターが引き立てる感じです。

一方で現行品の場合、香りは全体的に薄く、ピートからのスモーキーさの後にナッツとカラメルが比較的表に出ており、後からレーズン、ナシ、バニラへと続きます。
味わいはアルコールからの辛さが比較的しっかり出ていて、後から酸味、奥から甘さが追いかける印象です。

次にロックにした場合、特級ボトルではピートとナシが先に突き抜け、後からレーズン、バナナ、バニラ、カカオと続きます。
味わいは、酸味が先に現れるがほのかで、後から甘さがしっかり覆い、ドライフルーツの印象が強く感じられます。

現行品では、特級ボトル以上にピートとナシが大きく開き、後からバニラ、カラメル、マンゴーへ続きます。
味わいは酸味がメインになり、甘さは控えめです。後味としてほのかにしょっぱさもあります。

最後にハイボールにすると、特級ボトルの場合、香りはゴム、レーズン、リンゴ、バナナと、1:3で割ったにしては比較的しっかりと香ります。
味わいはドライフルーツのような甘さが主体で、奥から酸味をほのかに感じる印象です。

一方で現行ボトルの場合、香りはバニラと青リンゴが訪れるものの、その先はあまり感じ取れません。
味わいはほのかに酸味と甘みが少し来る程度で、特級ボトルよりも淡麗です。

今回入手した特級ボトルは、現行品に比べると香りがワンランク上で、ハイボールでも香りが消えない点でも、スーパーの名にふさわしいといえます。
現行品も悪くはないですが、特級時代に比べるとライトな印象に思えます。

一方で初号の復刻版に比べると、余市モルトの持つピーティでソルティな面は、宮城峡モルト、カフェグレーンによって丸められ、品格の高く豊かな印象に仕上げられたように思えます。

どの時代のスーパーニッカが一番だ、と軽々に比較、評価すべきではなく、消費者がどういう香り、味わいを求めるかによって、ブレンドをシフトしていったとみたほうがいいでしょう。

中古ボトルを扱う酒屋さんだと1万円オーバーがざらですが、ネットオークションであればかなり安い値段で手に入るでしょう。
ただし、保存状態はピンキリなので、あまり過信してはいけません。

<個人的評価>

  • 香り A: 余市のスモーキーでバニラやバナナの目立つ原酒と、宮城峡のレーズン、ナシの繊細さが織り交ざり、とても豊か。
  • 味わい AA: ノンエイジながら、アルコールの辛さが少なく、甘く飲みやすいボトル。
  • 総評 AA: スーパーの名にふさわしい、上品で芳醇なウイスキー。