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ゴブリンサバイバー〜転生したけどゴブリンだったからちゃんと生き直して人間になりたい!〜 作者:坂東太郎

『第三章 漁村 ペシェール』

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第五話 俺、復活! スキルをゲットしたからゴブリオ無双のはじまりゴブ!


 VRMMOのキャラメイクみたいな空間で、俺は種族とスキルを選んだ。
 種族はいままでと変わらないノーマルなゴブリンで、雑魚のまま。
 でも今回は溜まってたライフポイントでスキルを二つ取った。

 よーしよしよし、今日からゴブリオは雑魚ゴブリンじゃなくなるゴブ! 強ゴブリンとして生き直すゴブな! さあ、ゴブリオ無双のはじまりゴブ! ゲギャギャッ!

 なんとなく体の感覚が戻ってきた気がする。
 背中には地面の感触があって、体はもふもふな毛並みを感じる。

 もふもふな毛並み?
 俺は目を開ける。

 視界いっぱいに見えたのは、犬の顔だった。
 いや、犬じゃない。
 オオカミだ。

 ……。
 …………。
 これオオカミの群れじゃんね。
 俺が死んだ時と同じ状態じゃんね。
 つまり俺の体がたかられてるところゴブな! おう、俺はアンパンじゃないゴブよ? お前らに食べさせる顔はないゴブ!

「ゴブリオ、ゴブリオ!」

『ゴブリオさん、大丈夫ですか!? 私、わたし、ゴブリオさんが死んじゃったら、私』

 オオカミたちの隙間から、丘を下ってくるオクデラとシニョンちゃんが見える。
 オクデラはタワーシールドをかざして、メイスを振りかぶって突進するつもりっぽい。
 そこまで見て。

 視界が、真っ白になった。

『きゃっ!? ま、また光が!』

「ニンゲン、魔法、アリガトウ! ゴブリオ、元気、ナッタカ!?」

 前に復活した時と同じように、また俺の体が光ったらしい。
 間近にいたオオカミたちは相当まぶしかったらしく、キャンキャン鳴きながら俺の体から離れる。

退()ケ! ゴブリオ、ゴブリオ!」

 俺から飛びのいたオオカミたちが何匹か、突進してきたオクデラの盾にはね飛ばされる。
 続けてオクデラがメイスを振り回したら、オオカミたちはちょっと離れた。

 俺の横に駆けつけるオクデラ。
 シニョンちゃんも後に続く。
 やっと体が動くようになってきた。

「オクデラ、ただいま。『シニョンちゃん、心配、ない、ゴブ』」

 ……だからただいまってなんだよ! オクデラから見れば俺はずっとここにいたからね! 時間経過ないっぽいから!

 それにしても。
 今回はまぶしくてオオカミたちが退いたからいいけど、これ気をつけないと死に続けることになるっぽい。
 たとえば水中とかマグマの中とか、継続ダメージ入る場所だったら何回も死に続ける感じゴブ! こわっ!

「良カッタ、ゴブリオ、オデ、オデ」

『ゴブリオさんゴブリオさんゴブリオさん!』

 寝そべってた俺を抱き起こすオクデラ。
 シニョンちゃんも俺に抱きつく。
 くっ、コレが天国と地獄ってやつゴブな! おっぱいちゃんのおっぱいの感触に集中したいけど、同時にオクデラのお肉の柔らかさも感じちゃう! 悔しいけど感じちゃう! ビクンビクン……ってならねえし! 誰得だよ!

 なんか、生き直しで復活してすぐはテンションがおかしい気がする。
 でもいつもこんな感じな気もする。
 こまかいことを気にしたら負けだ。

「オクデラ、短剣を貸してほしいゴブ。俺さっき投げちゃったから」

「ワカッタ! ソウダ、オオカミ!」

「俺が殺ってくるよ。オクデラはここでシニョンちゃんを守っててほしいゴブ」

「ゴブリオ、デモ、アイツラ、タクサン」

「大丈夫、まあ見てろって!」

 オクデラから短剣を借りて、また包囲をはじめたオオカミたちに向き直る俺。
 オオカミたちを気にしながら、地面に転がってた一角ウサギの角と剣シカの角を拾う。
 さっき坂を転げ落ちた時に荷物が飛び散って、ここまで飛んできてたヤツだ。

「おりゃ! おお、すごい、すごいゴブ!」

 俺が投げた一角ウサギの角は、けっこうな勢いで飛んでってオオカミに突き刺さった。
 バランスも何も調整してないのに尖った方が先になってたゴブ! ゴブリオの短い手足なのにすげえ速かったし! スキルぱねえ!

 続けて剣シカの角を投げる俺。
 ギャンッ!って悲鳴を上げて、しち、しし、えっと、七支刀(しちしとう)みたいな角がオオカミに傷を付けた。
 おおおおお! やった! あんな変な形で、しかも根元も刃だからまともに握れなかったのにちゃんと飛んで行った! スキルぱねえ!

 俺たちを囲んでいたオオカミは、俺の投擲で二匹が倒れた。
 モンスターの角がまっすぐ飛ぶのも速度が上がってるのも、新しくゲットしたスキルの効果だろう。

 【投擲術】。
 コレやっぱりくっそ便利ゴブ! 今回はアレだけど、罠と投擲のコンボで近づかないで強敵を倒せるかもしれないゴブなあ! 元人間の知恵が活躍しそう! 罠を作って【隠密】しながら【覗き見】して、罠にかかったら【投擲術】! 相手は死ぬ! ゲギャギャッ!

 角は弾切れになったけど、足下の石を拾って投げるだけでオオカミたちにダメージを与えられる。
 オオカミたちの包囲の輪が広がってきた。
 これだけ注目集めれば、さっきのニンゲンもきっと逃げられたはず! 色っぽいニンゲンの女と幼女を失ったら人類の損失ゴブ! 俺人類じゃないけど! ゴブリンだけど! 鬼畜生!

 遠巻きにこっちを囲むオオカミたちに向けて走り出す俺。
 シニョンちゃんにはオクデラが付いてるし、オオカミたちは逃げ腰だし大丈夫だろう。

 オクデラから借りた短剣を構えて、群れで一番大きいオオカミに襲いかかるゴブリン。
 ヒャッハー、いい毛並みしてんじゃねえか! 高く売れそうなその毛皮おいてけ! シニョンちゃんの水着のために! 俺の夢のために!

 なんかゴブった思考になってるけど、気にせずオオカミに襲いかかる俺。
 でかめのオオカミは素早く動いて俺に飛びかかってくる。
 頭で考えるより先に、すっと腕が動いた。
 短剣がでかめのオオカミに突き刺さる。
 おおおおお! これ、これが武器スキルの効果ゴブか! すげえ、すげえ! 俺いま達人っぽくなかった? スキルパねえ!

 首元に刺さった傷は深かったのか、オオカミはけっこうな血を流す。
 体が自然に動いたのも短剣の威力が上がったのも、俺がゲットした二つ目のスキルの効果だろう。

 【短剣術】。
 武器スキルを取って正解だったゴブ! 俺のメイン武器はショートソードだったし【剣術】と迷ったけど! まあでかい敵はオクデラに任せて、ちっちゃい俺は小まわりがきく【短剣術】にしといたゴブ! 【覗き見】と【隠密】と【短剣術】と【逃げ足】で暗殺者スタイルゴブな! 忍者でも目指すゴブか? おっと、忍ゴブか! ゲギャギャッ!

 血を流して地面に倒れたでかめのオオカミに、あっさりトドメをさす俺。
 11まで減ってたライフポイントが12に増えた。
 【投擲術】で倒したオオカミは獣で、ボスのコイツだけはモンスターだったらしい。
 ボスが殺られて戦意をなくしたのか、オオカミの群れが逃げて行く。

「ゴブリオ、スゴイ、スゴイ!」

『よかった、ゴブリオさんが無事で、それにオオカミをやっつけて……すごいです!』

 俺の戦いを見守っていたオクデラとシニョンちゃんから褒められる。
 俺そんなたいしたことないゴブよ? でも俺にかかれば、たかがオオカミなんてこんなものゴブ! ボス入れて三匹のオオカミを瞬殺! 最初に殺ったのとあわせて四匹! ゴブリオ無双ゴブな!
 さっき一回死んだけど。

 さーて、仕留めたオオカミの皮を剥ぐか。
 毛皮は売れそうだけど……あとは牙とか爪?
 おっと、迷うぐらいならすぐそこの漁村に持っていけばいいゴブな!
 そう思って顔を上げた俺の目に、走ってくるニンゲンたちの姿が映った。

『こっち、こっちです!』

『オオカミを村のすぐ近くにのさばらせる訳にはいかんからな』

『ねえ女将、ホントにゴブリンだったの? 人間を助けるゴブリン、ねえ』

 さっき逃がしたニンゲンの女と、お揃いの皮鎧を着て武器を持った男たち。
 どうやらさっきのニンゲンは無事に逃げ切れて、ついでに助けを呼んできたらしい。

 まあオオカミは俺が仕留めちゃったけどね! 【投擲術】と【短剣術】スキルをゲットして強くなったこのゴブリオが! ゴブリオ無双伝説のはじまりゴブ! ゲギャギャッ!

■ ゴブリオ(ゴブリン)
 【ライフポイント】
  12
 【スキル】
  夜目
  覗き見(ピーピング)LV2
  逃げ足
  隠密
  短剣術  ※NEW!
  投擲術  ※NEW!
  ゴブリン語:LV2
  人族語:LV1
 【称号】
  森の臆病者(チキン)
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