節子、それ科学やない...! 進化論がトルコの教科書から外されることに

節子、それ科学やない...! 進化論がトルコの教科書から外されることに 1
Teguh Mujiono / Shutterstock.com

科学、世界各地追いやられてます

トルコの教育委員会が最近、進化論に関して新しい結論にたどり着いたようです。「真偽に議論の余地があり、意見の別れるもので、学生が学ぶには複雑すぎる」とのこと。そのためダーウィンの自然選択説を学校で教えるのを停止すると決定しました。

進化論に対する反対が無い日本からすると、「いつの時代の話だ」と突っ込みたくなります。が、人間が猿から進化して今の形になったという進化論と、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教などが説く創造説とに齟齬を見出す宗教的権威も多く、実はアメリカを始め未だに世界のいくつかの場所では争われている分野なのです。

教科書から排除される進化論

政治は特定の宗教の影響から独立するべき、とする世俗主義のグループからは、トルコ教育委員会のこの決定に対し猛烈な批判が起きているようです。小学校4年、中学校4年、高校4年の教育制度をとるトルコでは、高校1年生の時に進化論を学ぶことになっています。しかし教育委員会高官であるAlpaslan Durmuşが発表したところによると、高校1年の生物学の教科書からは進化論が取り外され、進化論は学生が大学レベルに達するまで教えられないことになったようです。ガーディアンが報道しています。

トルコでは長年、創造説を肯定する主張が多く聴こえており、学校での宗教教育に対する親からの要望も大きくなってきていました。今年初めにはNuman Kurtulmuş副首相が進化論は「古びて」おり「十分な証拠に欠く」と発言しています。

進化論がカリキュラムから外されるだけでなく、トルコの非宗教分野における歴史を学ぶのに割かれる時間も短くなるようです。世俗的慣習やしきたりの基盤を築き上げたトルコ共和国の元帥、初代大統領ムスタファ・ケマル・アタトゥルクについても学習する時間が減るとのこと。一方で宗教について学ぶ時間が増え、そして様々なトルコ人・イスラム教徒科学者たちの功績についても強調されることになるようです。全体的には「ヨーロッパ的な」アプローチから遠ざかる方向性が明確になっています。

エルドアン大統領のイスラム回帰

トルコ共和国は建国以来、政教分離原則を掲げる世俗主義国家です。現大統領であるレジェップ・タイイップ・エルドアンはこれまでもイスラム回帰的な政策を世俗主義グループから批判されてきましたが、今回のカリキュラム変更はその批判をさらに大きくさせています。教育はまさに次世代の国民を育てるわけですから、反対派の怒りもよく分かります。今回の教育改革、タイミングもかなり不吉な予感がするんです。というのも2カ月ほど前には大統領の権限を拡大する憲法改正の国民投票に僅差で勝利したばかり。新しく得た大統領権限でエルドアン大統領がどういう動きを見せるのかが注目されてきました。

うーん、僅差の国民投票だとか、大統領権限で改革だとか、世俗主義からの離脱だとか、世界中で神経衰弱でもやってるの?ってくらい似通ったニュースが毎日聴こえてきますね。ガーディアンでは、レポーターのKareem ShaheenとGözde Hatunoğluが次のように語っています。

中東における主流のイスラム聖職者の間では進化論の考えはほとんど受け入れられていない。彼らは聖書にある天地創造の物語(神が最初の人間であるアダムを土から創り、命を吹き込んだ)と進化論が矛盾すると考えている。それでも、この地域では多くの高校の生物学のクラスで進化論は短くだけれども、教えられている。

それが無くなってしまうということですね。

アメリカも負けてない

しかしアメリカに住んでいる身からすると、アメリカもなかなか危険な方向性へ駆け足をしており、身につまされます。

地球温暖化のコンセプトはアメリカの製造業の競争力を損なわせるために中国人が中国人のために作り上げたものだ。

トランプ大統領が就任してから半年が経とうとしています。筆者のようにニューヨークや西海岸に住んでいるとトランプがアメリカの代表であることに常々驚いてしまうのですが、ニューヨークや西海岸の大都市はむしろアメリカの例外なんだと気付かされます。

アメリカのメディアは「トランプ支持者とはどんな人たちか」とこれまで焦点を当てられてこなかったトランプ支持層の人たちについて追いかけています。メディアでは経済の中心である大都市が偏って取り上げられがちですが、実は国の全貌はそれだけじゃ見えない...そんな教訓が世界中で語られているようです。

NORTHERN KENTUCKY TRIBUNEによると、「4300年前のノアの洪水の時に絶滅した恐竜の展示」などで有名なケンタッキー州の創造説博物館は今年で10周年、来館者数は衰えるどころか上昇中で2007年の開館から合計で300万人を迎えたとのこと。こんなニュースを聞くと「これもアメリカなのだな」と気が引き締まります。しかし...ノアの洪水で絶滅した恐竜ですか...なるほど、そうきましたか。これも、アメリカです。

進化論は世界の主流

サウジアラビアの12年生の教科書では進化論という名前が登場するものの、アラーによる人間の創造を否定する考えとしてNielsen Labでは紹介されています。The Express Tribune blogによると、パキスタンでは進化論は大学レベルでしか教えられていません

しかし、こういった一部の地域を除くとほぼ全ての国で進化論は教えられています。ポーランド、アイルランド、そしてイランといった信仰の厚い国でも教えられています。英国やブラジルに至っては創造説を学校で教えることをはっきりと禁止しています。

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Image: Teguh Mujiono / Shutterstock.com
Source: The Guardian 1, 2, EBA, Donald J. Trump / Twitter, NORTHERN KENTUCKY TRIBUNE
Reference: The Washington Post 1, 2, 3, Business Insider, The New York Times, INDEPENDENT, Nielsen Lab, The Express Tribune blog, SCIENTIFIC AMERICAN, io9

George Dvorsky - Gizmodo US[原文

(塚本 紺)

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