人を他人より賢くするものは何だろうか? スコットランドに住む家系の遺伝子解析の結果によると、「賢さ」はDNAの突然変異によってもたらされるというよりも、変異が少ないことでもたらされるという可能性を示唆している。
ここから読み取れることは、健康に悪い突然変異を遺伝子編集技術で修正することで、私たちは健康になるばかりか賢くもなるということだ。
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失われた知性の謎
知性が部分的には生まれ育った環境に左右されるということは明白である。事実、きちんと栄養を与えられ、安全かつ汚染されておらず、また刺激が豊かな環境で育った人はそうでない人に比べてIQが高い傾向にある。
同時に遺伝子もまた重要だ。双子の研究は、全体的な知能の50〜80パーセントが遺伝子に起因することを示唆している。しかし、知能に関連する遺伝子の突然変異の特定は難航してきた。
これまでに行われた無関係の大勢の人々のDNAの研究が示していることは、知能の変動が30パーセント程度しか遺伝していないということだ。このゲノム解析の結果と双子の研究との大きな隔たりは、”失われた遺伝率の謎”と呼ばれている。
新たなる研究で失われた知性の謎が明らかに
ここに新しい知見をもたらしたのが、スコットランド・エディンバラ大学のデビッド・ヒル氏らのチームである。
彼らは「ジェネレーション・スコットランド」という家系の健康とゲノムをテーマとする研究に参加した2万人から集めたデータを利用し、ある家族が共有する珍しい遺伝子の突然変異が知能に与える影響を調査した。
その結果、珍しい突然変異が両研究の隔たりを説明することが判明。失われた遺伝率の謎が解決される可能性が浮上した。
賢さは生まれつき?
理論的には、賢い人はIQを向上させるうえで有利な遺伝子の突然変異を持っているゆえに賢いのだと想定される。そうした突然変異は自然選択を通じて拡散し、一般的なものとなることが予測される。
実はこうした遺伝子はわずかながら有害な変異であり、健康を害す可能性が高い。進化はこうした遺伝子を取り除くことが得意ではなく、それは徐々に蓄積していく。
この”突然変異の負荷”は人によって異なっており、ヒル氏の研究によれば、知能の良し悪しはこれに依存しているというのである。
もし知能が完全に環境に依存していたら・・・
知能を遺伝子に結びつける試みには賛否がある。IQが個人のDNAによって決められてしまうという考えを好きな人はあまりいないからだ。
しかし、それにも良い点はある。もし知能が完全に環境に依存しているのであれば、しかるべき環境を与えられなかった人と恵まれた人との知能の格差はより一層広まってしまう。ひいては社会的な格差を広げる結果となるだろう。
理由は定かではないが、賢い人たちはより健康で長生きする傾向がある。もしかしたら知的ゆえに健康的なライフスタイルを送る傾向があるのかもしれないが、ヒル氏らの研究からは彼らが遺伝的にも健康であることが読み取れる。
CRISPRのような遺伝子編集の技術が開発されているが、現時点で人間の胚のゲノム編集はまだ行われていない。だが、そうしたことが将来的には不可避であるという意見は存在する。
ヒル氏らの研究からは、いずれわずかに有害な突然変異が除去されるようになれば、それは知能も向上させるであろうことが推測される。だがそれは劇的な変化ではなく、平均的に上がるという意味だ。
via:newscientist/ translated hiroching / edited by parumo
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