美坂 景

定まった形はなくても、いま、確かにそこに在る そんなものを、私はずっと追いかけている 目、耳、指では捕まえられない それは心で感じるもの 自分を偽ろうとする気持ちや、悪意や善意からではない 原点の心で感じるもの ぼんやりとした、輪郭のない、けれど確かにそこに在る その名は、希望

心寂しさにあてられて 行き場が無い 居場所が無い どうしよう このまま消えてしまおうか そんなことを考えるたび 沈んでいく冷たさが胸を湿らせて まるで快楽のように感じてくる 波にのまれ翻弄されることを 時に望み、時に拒んで そんなわがままが通るうちは きっとまだ、大丈夫なんだろう

手がかじかむような寒い日も 二人で手を繋いだら、感触を無くさないでいられるだろう みんながみんな、こうしたら 誰も見失わないですむのかな そんなことを考えている 私の二つだけの手

飛べなくても変われないアヒルの子 湖を泳いで、静かなまんなかにたどりついた 水面に映る空、一匹、浮かんで 頭の上に空、足元が空だ 飛べなくても、変われなくても 今、私は空の中にいる 頑張ることに疲れたら この場所で思い出すんだ 空の色、雲の形 そうしながら、生きていこう

あなたを励ますのにふさわしい言葉を、私は持たない 「だいじょうぶ」「元気をだして」 ありふれた言葉ばかり でも、私は諦めない 手を差し伸べたら、握ってほしい 一緒に踊ろう 上手じゃなくたっていい 格好悪くたっていい 人にどう思われようと 二人で同じだけの一歩を、踏み出してみようよ

出会い 言葉を交わせば、それだけで、幸せが溢れるようで 辛い思いもしたけれど 飛び上がるほど嬉しい瞬間があって 夢のような時間を過ごした 今、二人の手が離れる時 それぞれの場面を、忘れないでいようと 自分を奮い立たせた 小さな雫がこぼれる前に、私はとめたい ありがとうでさよならを

目を閉じて感じてみる 私の周りにある、気がついていなかったもの 例えばほのかなシャンプーの香り、頬を撫でるささやかな風 とりとめもなくて、日常の役にはたたないけれど ずっと、そばにあったもの ひとつずつ、拾っていこうと思う

私はいつも、あなたの後ろ なのに気持ちはいつも前のめり 目が合いそうになる 雲をぬける月よりもかすむ私の心 いつまでも気づかれずとも 私はここで 強く、強く輝きを増して 過去の後悔と共に あなたに抱かれる時を待っている いつか、きっと

嫌なことは心の影に隠してしまえ コインの裏表なんか見たくない どちらが真実でどちらが嘘でも 胸をしめつける苦しみは変わらない あなたを思う、私のくるしみ 本物の痛みをくれる、あなたのくるしみ

本当は 私の一番大切なものを君にあげたい でも臆病な私はいつも 君の喜ぶものを選んでしまう いつか渡そうと思いながら ずっと胸にしまってる 「あなたの大切なものが欲しい」 そう言ってくれたなら すぐにでも

つまずいたりしないで歩き続けたいな でもいつも何かに気を取られて 振り返っては転んでる 向かい風のせいにして 足を大きめに踏み出すたび また焦って転んだ 今度は何のせいにしよう

スローテンポで刻む足音 わざと小さくした歩幅 離れていく君の手を 引っ張ってみたりした 夏がかすむような日 さよならになった日 僕は君の前にいなかったことを 後悔したんだ いまさら

はるか空に浮かんでいれば 雲も旅客機も変わらないよ

光を避けて生きていて いつしか自分も見えなくなって 光を追いかけはじめた頃にはもう 照らされている気がしない 諦めきれずに両手を重ねて 祈るみたいに力を込めたら ぼんやり、光りはじめた 暖かくて、憧れに似た光

ベッドの中で、泥のようにしている日々は 怠け者に見えたって、全然楽じゃないんだ 眠る時間を惜しむほど、夢中になれるものがあれば それだけできっと幸せ

伝えたいことがあるけど、言わない 君へのいじわるになればいい くせっ毛の前髪が鼻先をくすぐる 君の吐息が触れる 同じことを間違えないように繰り返そう 何度も何度も、続けていこう

辛いほうを現実なんだと思ったほうが 案外、気が楽になるものだよ

両思いなんて夢物語 恋愛はいつも傾いていて どちらかがいつも余分に努力をしてる 不公平だから、辛くなければ実らない 私は辛さをやわらげたくて 最初からそうなんだ、と思うことにした 夢物語という言葉を使って

夢をみたんだ 私は自由に空を飛べる それを今でも諦められない そんな子供っぽさを、いつまでも大切にしたいと思う

想ってるだけはやめにしなくちゃ 何も伝えてないのと同じだろ 嫌われてもいい、言葉にしないと 誰もいないのと同じだろ 君にとってさ