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ラグビー日本、根本から強化見直すべきとき
「19年W杯8強」実現へ不可欠

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2017/6/29 6:30
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 世界との距離は縮まっているのだろうか――。そう考えさせられる、ラグビー日本代表の6月の3連戦だった。

 初戦のルーマニアに勝ったところまでは悪くなかったが、続くアイルランドとの対戦は2試合とも完敗だった。

 この1年、日本は欧州6カ国対抗に参加する3チームと戦っている。昨年6月はスコットランドと国内で2連戦し、13―26と16―21の接戦だった。11月には敵地でウェールズと対戦し、30―33と競り合った。3戦ともどちらに転ぶかわからぬ試合だった。

 しかし、今月のアイルランドとの対戦では2試合とも22点以上の差をつけられた。しかも、いずれも前半で大差をつけられた時点で勝ち目は薄くなっていた。

 この3チームの序列を考えると、世界ランキング3位のアイルランドが一番上だが、ほかと大差があるとは思えない。今年の6カ国対抗ではアイルランドの3勝2敗に対し、スコットランドも3勝2敗でウェールズは2勝3敗。両チームともアイルランドとの直接対決では勝っている。

 一方、相手の陣容は昨年と今年で大きく違った。スコットランドとウェールズは主力がほとんど参加していたのに対し、今回のアイルランド戦は主力11人以上が抜けていた。ほぼ二軍のアイルランドが、一軍のスコットランド、ウェールズに勝るとは考えにくい。

強豪国との差開いたとの懸念拭えず

アイルランド代表に大差で敗れ、肩を落とす日本代表選手=共同

アイルランド代表に大差で敗れ、肩を落とす日本代表選手=共同

 つまり、今年の日本代表は、昨年より力の落ちる相手に昨年より悪い内容で負けたことになる。極めて残念なことだが、2015年ワールドカップ(W杯)の後、強豪国との差は開いてしまったのではという懸念が拭えない。

 何が変わってしまったのだろうか。15年W杯の日本の映像を見返してみると、すぐに気づく違いがある。タックルなどで地面に倒れてから立ち上がるまでの速さである。

 例えば、W杯の南アフリカ戦の最後の攻撃。ボールを持って突っ込んだ選手も、サポートに入った選手も、密集で倒れた後にすぐに立ち上がっている。タイミングとしては、ボールが展開されて次の密集ができるころには、ほぼ全員が立っているという具合である。

 ガソリン切れが起こるはずの時間帯なのに、脅威の運動量。これは南ア戦に限ったことではなく、最終戦の米国戦でも同じだった。

 今回のアイルランド戦。同様の連続攻撃のシーンを見ると、寝て起きてのテンポが遅い。密集で倒れた後、その2つ先の密集から球が出ようとしているのに、まだ数人が片膝を地についたままというシーンが何度もあった。

 選手が倒れる回数がサッカーなどの他競技より格段に多いラグビーは、立ち上がるまでのスピード、グラウンドに立っている人数の数が勝負のキモになる。体格やスピードで劣っていても、立っている人数で上回れれば勝機は広がる。

 アイルランド戦では、むしろ相手の方が立っている人数で上回っていたのではないか。戦った選手の感想がそれを裏付ける。フランカー松橋周平(リコー)は相手の肉弾戦について、「差し込む強さがあるというよりは、速くて次々顔を出してくる」と話していた。相手の運動量への称賛は、15年W杯なら日本の方に向けられていただろう。

 試合終盤の運動量を増やすために必要な力は、心肺機能などの持久力だけではない。筋肉量や、1対1のコンタクトプレーの技術も密接に関係する。毎回の肉弾戦で受け身になるほどダメージが体に蓄積し、試合の終盤で脚が止まりやすくなるからだ。

 持久力や筋力アップといった総合的な体づくりはストレングス・アンド・コンディショニング(S&C)と呼ばれ、現代のラグビーでは欠かせない要素となっている。この分野の成功が、15年W杯の躍進の大きな要因だった。

S&Cでの戦略的な強化足りぬ

 当時のジョーンズ日本代表ヘッドコーチ(HC)は、S&Cに徹底的に時間をかけていた。各ポジションでW杯に必要な持久力や筋力の数値を提示。試合の2日前まで高い負荷の鍛錬を課して鍛えた。目先の結果だけを見ていてはとてもできないこと。実績豊富な専門家も多数招き、選手の体調管理、トレーニング量の調整のためのアプリまで企業と共同開発している。

 W杯までの4年間で各選手は筋肉量を数キロ増やしながら、持久力も向上。相反する2つの能力を高めるという難しい作業に成功した。

 今の日本が肉弾戦で負ける回数が増え、立ち上がる速度が遅いのは、S&Cでの戦略的な強化が足りないことが主因だろう。

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