格差社会のアンダークラスビジネス+テクノロジー=貧テックの残念さ

novtan.hatenablog.com

いやもう、ほんとヤヴァイ。

「貧テック」とはいい言葉を探して来たなぁ。
とはいえ引用の原義は
「ケチな人のお金を流動的にする」
みたいな意味だが、今回の場合、「貧テック」の少し定義が異なる。



【スポンサーリンク】



FINTECH≠貧テック

FinTech革命(日経BPムック)

フィンテックではなく、貧テックの定義を考えてみると、

・取引は少額に限られる(法的にゆるい)
・利益は、目一杯取る(法の許されるギリギリまで)
・サービス対象はあまり裕福ではない層(日払い、その日の小銭が必要な層)
・情報に関してもあまり詳しくなく、短絡的即物的なユーザーを狙う(目先の金)
・ファイナンス、キャッシングなど(言葉やイメージで)カジュアル化し心理的障壁を下げる(簡単に現金が手に入るように見せる)
・トラブルに関してあまり考えていない(あとでなんとでもなる)

こんなところか。
フィンテックの片隅から上がってきた、フィンテックからベクトルの歪んだビジネスモデル。

「貧乏人が吐き出す小銭だって、山ほど集めれば儲かる」

NOV氏の書いた「貧テック」という言葉もしっくりくる。
少額の金貸し…海外で一時期盛り上がったマイクロファイナンスを連想させるやり口は、さすが「ツケ払い」でお馴染みスタートトゥデイ卒だけのことはある。

元々、マイクロファイナンスは、貧困層に対してお金を貸すことで経済的な基礎を作る猶予を与え、貧困層から抜け出す手伝いをする、という名目でやってた。
ところが海外でもなかなか難しく、結果、焦げ付いて娘が誘拐されたり、自殺者がでたり、あるいは胴元が儲かり過ぎて社会的批判を受けたり、うまくいかずブームはかなり鎮火した。
マイクロファイナンスの失敗は、この辺の記事に詳しい。

www.bloomberg.co.jp

business.nikkeibp.co.jp

貧困層・富裕層

www.bloomberg.co.jp

ZOZOタウン前澤といえば、この前、バスキアの絵を買ってたが、あーやってバブリーな勝ち組が成功を見せつけ、一方でツケ払いやメルカリでキャッシング枠を売るような層が完全に別れるのが現代の日本。

貧テックの運営側からすれば、法律や倫理観というのは邪魔でしかない。
美味しいものはそこに転がってる。
だからグレーゾーンの商売に手を突っ込む。
グレーだからこそ儲かる。

金儲けに社会的倫理観なんざいらない。
マイクロファイナンスから法律と倫理観を取り去れば、そこにむき出しになった情報貧者と経済貧者相手の小銭ビジネス…貧テックが産まれる。

ひとつの貧テックの成功は、さらなる貧テックの土壌を生み、「オレも現金でバスキア買うぜ!」という新たなスタートアップが台頭するバブルな循環。
いわゆる情報商材ビジネスでひと山当てたネオヒルズ族にも見られたような光景が今や貧テック界隈に見受けられる。

jp.techcrunch.com

CASHは一気に盛り上がり過ぎてビジネスモデルとしての見通しの甘さが露呈した。
とはいえ資金調達をどっかでやって(こんなに儲かることを見せつけたのだから)このビジネスモデルは走り出すんだろう。
今や投資する金は余ってる。

走らせながらパッチ処理でその場をしのぎ、気がつくとビジネスが完成してる。
訴えてこようがどうせ相手は少額。
考えついても誰も手をつけなかった泥の中にあえて手を突っ込むビジネスモデルをやろうってんだからそんな覚悟はある。

CASHで、H&Mのヘアゴムを高値で売る裏技を見つけた人を見かけたけど、運営からすればそういう事例を積み重ねて穴埋めして学習するつもりなんでしょう。そんな錬金術がいつまでも通じるわけもなく。
資金的に体力が続けばいいですねー(棒

抜け穴を探すユーザーvs運営というのは、メルカリで現金を折り紙にして売ろうとしたりするのにも似て。

上と下と

貧困層はより貧困になり、アプリで給料を前借りし、ツケ払いで物を買い、余れば売り、キャッシング枠を現金化し、日銭ばかりで低所得から抜け出せず、車輪の中を延々と走り続けるネズミのように小銭で利益を生み続ける貧困層を囲い込んだ富裕層は、さらに富裕層の一角を担い、バスキア*1を眺めパガーニゾンダ*2を乗り回し、富裕層に憧れるスタートアップはそんな姿に憧れまたあざといビジネスモデルを展開させる格差社会の生み出す貧困ビジネス・スパイラル。
ディストピア以外の何物でもない気(ry

どっかの情報商材界隈と構造が似てる。
またネオヒルズ族の享楽と同じか。

結局、インターネットとデジタル化が産み出した新たな社会は、これまで届かなかった貧困層にまでリーチし、情報格差と経済的格差を広げるに過ぎない。
そりゃあISISに飛び込んでテロを起こして資本主義社会を打ち倒そうと考える輩も出て来る。

リーマンの破綻もアンダークラス相手に無計画に貸し付けた結果でしたけどね。

人は歴史に学ばない。
これもフィンテックの革命なのだとしたら、その革命は誰のためのものなんだろう。

貧困ビジネス (幻冬舎新書)
門倉 貴史
幻冬舎
売り上げランキング: 141,663

*1:jmバスキア。路上の壁に落書きしていたところアンディ・ウォーホルに見初められアーティストとしてデビューするもその後不幸な人生をたどる

*2:超超高級車