外国米混入 確認されず 京山問題 農水省が報告
2017年06月28日
農水省と京都府は27日、京都市の米卸売会社「京山」の中国産米混入疑いを報じた『週刊ダイヤモンド』の記事を受けた同社などへ立ち入り検査で、「国産米に外国産米の混入が疑われるような点はなかった」とする結果を公表した。
同省などは2月10日~6月1日に、京山や、同社子会社を含む仕入れ先と販売先など約160の業者に対し、米トレーサビリティ法に基づく立ち入り検査を延べ300回行った。
京山、仕入れ先と販売先の業者の帳簿とをそれぞれ突き合わせて調べ、関係者への聞き取りも重ねた。同法で定める記録保存が義務付けられる期間3年間に加え、京山が保管する5年分の取引をさかのぼって調べた。
同省は「外国産の仕入れや販売に関してや、(週刊ダイヤモンドが報じた)2016年産の国産米4品種に外国産混入が疑われるような点は確認されなかった」とした。米トレサ法に抵触する行為も確認されなかった。
通常、同法による立ち入り検査結果は、法律違反が確認され、悪質性が高い場合だけ公表される。本来、今回の案件は該当しないが、「国会で複数回、公表が求められ、社会的関心が高いことを踏まえて対応した」(同省)という。
JA京都中央会も京山を調査し、中国産や産地不明の玄米・精米の混入は一切なかったとの報告書を3月下旬にまとめた。京山と京都中央会は週刊ダイヤモンドを発行するダイヤモンド社を相手取り、4月に民事裁判を起こしている。
農水省によると、売買同時契約(SBS)による中国産米短粒種は、直近では12年と16年12月にしか輸入されていない。16年に輸入された中国産米が通関を経て業者の手元に届いたのは「今年2月下旬以降だった」(消費者行政・食育課)としている。週刊ダイヤモンドは、京山が取り扱う米を1月に入手し、検査機関に持ち込んだ。
同省の立ち入り検査の結果を受け、京都中央会の中川泰宏会長は「ご支援いただいた多くの関係者の皆様に感謝申し上げます」とコメントした。
ダイヤモンド社は「係争中につきコメントを控えさせていただきます」(法務担当)としている。
同省などは2月10日~6月1日に、京山や、同社子会社を含む仕入れ先と販売先など約160の業者に対し、米トレーサビリティ法に基づく立ち入り検査を延べ300回行った。
京山、仕入れ先と販売先の業者の帳簿とをそれぞれ突き合わせて調べ、関係者への聞き取りも重ねた。同法で定める記録保存が義務付けられる期間3年間に加え、京山が保管する5年分の取引をさかのぼって調べた。
同省は「外国産の仕入れや販売に関してや、(週刊ダイヤモンドが報じた)2016年産の国産米4品種に外国産混入が疑われるような点は確認されなかった」とした。米トレサ法に抵触する行為も確認されなかった。
通常、同法による立ち入り検査結果は、法律違反が確認され、悪質性が高い場合だけ公表される。本来、今回の案件は該当しないが、「国会で複数回、公表が求められ、社会的関心が高いことを踏まえて対応した」(同省)という。
JA京都中央会も京山を調査し、中国産や産地不明の玄米・精米の混入は一切なかったとの報告書を3月下旬にまとめた。京山と京都中央会は週刊ダイヤモンドを発行するダイヤモンド社を相手取り、4月に民事裁判を起こしている。
農水省によると、売買同時契約(SBS)による中国産米短粒種は、直近では12年と16年12月にしか輸入されていない。16年に輸入された中国産米が通関を経て業者の手元に届いたのは「今年2月下旬以降だった」(消費者行政・食育課)としている。週刊ダイヤモンドは、京山が取り扱う米を1月に入手し、検査機関に持ち込んだ。
同省の立ち入り検査の結果を受け、京都中央会の中川泰宏会長は「ご支援いただいた多くの関係者の皆様に感謝申し上げます」とコメントした。
ダイヤモンド社は「係争中につきコメントを控えさせていただきます」(法務担当)としている。
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7~9月 配合飼料1100円下げ 大豆安、円高推移 全農
JA全農は26日、7~9月期の配合飼料供給価格を、全国全畜種総平均で前期(4~6月)に比べ1トン当たり約1100円下げると発表した。大豆の相場下げや為替が円高で推移したことなどが影響した。2期連続で値上げが続いていたが、前年同期と比べると100円の値下げ。4~6月期については、配合飼料価格安定制度による補填(ほてん)が行われる見通し。
2017年06月27日
もう一つの「災害」 労災保険への加入急務
自然災害による減収分も含め、農業収入の減少をカバーする収入保険制度の創設を盛り込む改正農業災害補償法が、先の国会で成立した。だが、見落とされているもう一つの災害がある。労働災害だ。農業が全産業で最も危険な産業であっても、農家の命を守る法律はいまだにない。農家の労災保険への加入率はわずか6%だ。官民挙げた労災保険への加入促進が欠かせない。
労災保険は、個人経営の農家でも特別加入ができる。きっかけは、農作業事故で負傷し、入院した青年農業者の切実な声だった。相部屋だった他産業の労働者から手厚い補償があると聞き、「農家も他産業の労働者並みに全額無料の治療を受けられるようにしよう」と訴え、静岡県農協青年組織が決起。1964年の全国農協大会で決議され、65年に特別加入の道が開けた。
だが、せっかく加入できても、農家が保険自体を知らなかったり、掛け金が高くて敬遠したりと加入が進まないのが実態だ。厚生労働省によると、2015年度の労災保険の加入農家数は12万8297人。農業就業人口のわずか6%だ。残り94%の農家は重大事故を起こしても治療費は自腹となり、入院時の休業補償や死亡時の遺族給付もない。その危うさを「自賠責保険に入っていない車を運転するようなものだ」と指摘する専門家もいる。
個人農家が入れる労災保険は3タイプある。経営規模にかかわらず入れるのは「指定農業機械作業従事者」。トラクターや田植え機、刈り払い機などの事故に適用される。年間販売額が300万円以上か、2ヘクタール以上の経営面積がある農家が入れるのは「特定農作業従事者」。農機以外に高所作業や農薬散布、サイロでの作業なども対象だ。
労働者並みの補償があるのは「中小事業主」。常時300人以下の労働者を使用する事業主本人と家族(法人の場合は役員)または、年間100日以上労働者を雇用することが見込まれる経営者が入れる。年間保険料は3000円台からある。
さらに、知らないと大変なことになるのが「人を雇った時」だ。労働基準法75条では「使用者は労働者が業務上負傷し、疾病にかかった場合には必要な療養を行い、療養費用を負担する義務を負っている」と定める。従業員が事故に遭えば経営者の農家が全額、治療費などを負担しなくてはならない。従業員が重大事故を起こせば経営は立ち行かなくなる。
これをカバーするのが労災保険だ。規模拡大が進み、雇用労働なくして農業が成り立たない今こそ、労災保険の加入は欠かせない。
だが、この実態に制度が追い付いていない。従業員が4人以下の場合、労災保険は「任意加入」だからだ。意識して加入申請をしない限り手厚い補償は受けられない。労災保険の加入なくして命も経営も守れない。
2017年06月24日
目が覚めて夢だと分かり
目が覚めて夢だと分かり、ほっとすることが増えた。ミサイルや自爆テロに逃げ惑う人々の姿に心が凍る▼たびたび繰り返されるミサイル発射。日本海側では、北朝鮮からの攻撃に備えた避難訓練を行う市町村が増えている。トランプ米政権の強硬姿勢を意識してか、日本政府も警戒を強める。“その時”に備える雰囲気に、一筋の寒さを感じる▼専門家が指摘する冷徹な現実を、無視できない。何せ、日本海側には23基もの原子力発電所がある。ここを狙われたら「国の破滅」と東京大学名誉教授の和田春樹さんは、雑誌『世界』(7月号)で警告する。挑発を繰り返す相手と冷静に話し合うことの難しさはあっても、平和外交にこそ、望みをつなぐ。拉致問題の解決も、平和であればこそ▼67年前のきょう、朝鮮戦争が始まった。東西冷戦は終わったが、戦時は今も続く。「38度線」近くの韓国側から北朝鮮を眺めたことがある。双眼鏡を通して見える農場では、役牛を使った農作業を繰り返す人。近代的なハイウエーを高級車が行き交う韓国との違いに、実際よりも大きな「溝」を感じた▼米国と中国の影響力が増す中で、国際政治に翻弄(ほんろう)され続けてきた人々の対立はいつ消えるのか。ミサイル攻撃が「正夢」にならないよう、アジアの平和を祈る。
2017年06月25日
痛ましい命の終焉である
痛ましい命の終焉(しゅうえん)である。乳がんで闘病中だったフリーアナウンサーの小林麻央さんが34歳で人生の幕を閉じた▼「誇らしい妻、強い母でありたい」と始めたブログ。前向きに生きる姿は、病気と闘う人々を励まし、多く人に勇気を与えてきた。英BBCは昨年、世界の人々に感動や影響を与えた「100人の女性」に選んだ。ブログを見ては、きっと治って復帰すると、待ち望んでいた。残念である▼夫で歌舞伎俳優の市川海老蔵さんに残した最後の言葉は、「愛してる」。悲嘆の中での会見で、最期を説明する海老蔵さんの痛々しい姿に夫婦愛の深さがにじむ。「命のバトン」を渡した4歳と5歳の幼い子2人の成長を見守れない旅立ち。さぞ無念だったろう。安らかな眠りを▼国民の2人に1人ががんにかかる時代である。医療技術は日進月歩で進み、克服への期待は高まる。発病しても社会に復帰し長寿を全うする人も増えてきた。しかし、患者の心身の負担は大きく、いろいろな支えが欠かせない。職場でも受け入れられる環境整備をもっと急ぐ必要がある。病気におびえないで安心して暮らせる社会づくりは政治の大きな課題。政治の停滞を憂う▼最後のブログ。「皆様にも、今日 笑顔になれることがありますように。」優しい心遣いに感謝。
2017年06月24日
オリジナルしょうゆ 業界最小100本から受注製造 ラベルデザインも 岐阜市・山川醸造
岐阜市の山川醸造は、農産物の魅力を生かしたオリジナルしょうゆを、要望に応じて受注製造する。100本(1本300ミリリットル)単位からの受注は、同社によると業界最小のロット。農家や直売所の6次産業化を後押しする取り組みで、注目されている。
同社のプロジェクト「たまりやオーダーメイド100」は、しょうゆおけ一つ分に相当する30リットル、1本300ミリ入りの瓶であれば100本分から注文ができる。ラベルデザインも受け付けており、試作の費用は原則無料だ。
2年ほど前から試験的に始めた。「オリジナルしょうゆは欲しいが、売れ残るのは困る」とする全国の農家や飲食店、JAなどから注文が寄せられた。これまでに「焼きナス用」や「橙(だいだい)ポン酢」など、自慢の農産物を引き立てる50種類以上が誕生。6月から本格的に取り組み始めた。色や味わいだけでなく、小麦粉を使わない「グルテンフリー」といった細かい注文にも対応する。
同社の山川晃生社長は「大手メーカーだと最低でも5000本以上のロットが必要。ニッチな分野かもしれないが需要はある。」と話す。
2017年06月25日
農政の新着記事
EU チーズ全て開放要求 週内にも閣僚会談
日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)交渉で、焦点のチーズでEU側がハード系に加えソフト系でも関税撤廃を求めていることが分かった。交渉が大詰めを迎える中、EU側はなお強硬姿勢を崩していない。週内にも閣僚を日本に派遣し、日本側に受け入れを迫る考えで、大枠合意を急ぐ日本側が譲歩する懸念もある。譲歩した場合、国内酪農への打撃に加え、米国が経済対話で市場開放圧力を高めてくるのは必至だ。
貿易担当のマルムストローム欧州委員は訪日する意向を示しており、30日にも岸田文雄外相と会談する可能性がある。閣僚間での政治決着を図る構えで、交渉は大きなヤマ場を迎える。
EUとのEPA交渉で最大の焦点はチーズ。日本は環太平洋連携協定(TPP)でゴーダなどハード系での関税撤廃を受け入れる一方、カマンベールに代表されるソフト系は守った。政府関係者によると、EU側はチーズの市場開放に固執し、ハード、ソフト系含む全品目での関税撤廃を依然求めている。
交渉が大詰めを迎える中、EU側は日本が輸出を伸ばしたい自動車で譲歩するのと引き換えに、チーズで日本に譲歩を要求。一方、日本政府内でも「日本の生乳のうちチーズに向くのは1割未満。仮にEUにチーズで譲歩しても、国内対策の予算はそこまで膨らまない」と、譲歩を許容する声も上がる。
だが、農業団体幹部は「EUからの影響だけを考えれば済む話ではない。EUに譲歩すれば米国からも攻め込まれる」と、日本政府の安易な譲歩を懸念する。米国の酪農業界はTPPが合意した当初から、日本の市場開放が不十分だと不満を訴えている。こうした中で、日本がEUとの間でTPPを超える水準の自由化を受け入れる事態となれば、「米国の酪農業界がさらに不満を募らせ、米国からの自由化の圧力が高まるのは避けられない」(同)からだ。
日米で4月から始めた経済対話では、米国は自由貿易協定(FTA)交渉に発展させることに意欲を示している。世耕弘成経済産業相が経済対話の地ならしのため訪米し、28日以降、複数の閣僚と相次いで会談する。米国から乳製品での具体的な要求を突き付けられる可能性もあり、EUとの交渉の一方で、米国と日本政府の動向にも警戒が欠かせない状況だ。」
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29日付論説「 EUチーズ攻勢・・・」
2017年06月29日
[緊迫EPA] 乳製品 担い手投資 負債に 生乳需給が混乱 北海道
EUとのEPA交渉で、EUがチーズなど乳製品の市場開放を強く求めていることに、酪農家の不安が広がっている。生乳生産量の半分以上を占め、全国的な減産傾向に歯止めをかけてきた北海道は、出荷の8割がチーズをはじめとする加工用。EU産品とは正面から競合する。これまで規模拡大や効率化を進めて生産基盤の維持・強化してきたが、乳価が下がれば、そうした投資が負債に変わりかねない。専門家は、乳製品が市場開放されると加工原料乳の仕向先が不透明になり、生乳需給が全国で混乱する恐れもあると指摘する。
北海道東部に位置する厚岸町は、道内でも屈指の酪農専業地帯。乳牛330頭を飼う酪農後継者の大野尋人さん(32)は、EUとのEPAについて「打撃を受けるのは(生乳の生産量が多い)北海道だ」と強調する。
大野さんは今年、哺育舎を新築した。費用は計約2000万円。建材費高騰で、費用は以前の倍近いという。今後、乾乳舎や本牛舎の更新や、規模拡大も想定した搾乳ロボットの導入も進め、効率化による所得向上を目指す考えだ。一方、初妊牛価格も高騰するなど不安定要素も多い。「交渉より国内の生産振興対策が先。これ以上、不安要素を増やさないでほしい」と言う。
北海道でも、酪農家戸数は減り続けている。2016年の戸数は6490戸。10年前に比べ約2000戸も減った。同町が管内のJA釧路太田の河村信幸組合長は「乳価上昇や畜産クラスター事業などで、ようやく生産意欲が高まってきた。酪農家の努力に水を差さないでほしい」と訴える。
交渉の焦点、チーズの国内消費量は、ここ10年で2割増え、今後も増加が見込まれる。大手乳業の工場建設を国が後押し、チーズ向けに加工原料乳生産者補給金の支払いを始めるなど、チーズ振興を政策として強く推進してきた。
所得向上が見込めるため、個人や中小規模のチーズ工房も増えている。10年に全国で約150カ所だったチーズ工房(大手乳業者を除く)は、14年には240カ所となった。モッツァレラやカマンベールといったソフト系が国産の中心だ。
このためTPPでは、ソフト系チーズへの直撃を避け、ハード系の関税を撤廃。だが、EUはTPPを上回る市場開放をEPAで求め、ソフト系にも攻め込む構えをみせる。大手乳業メーカーは「酪農家の生産意欲が減退しないか心配。チーズの消費が過去最高を更新する中、意欲を維持できるようにしてほしい」と強く訴える。
生乳需給への懸念も上がる。生乳流通に詳しい北海道大学大学院の清水池義治講師は、米国が離脱したTPP11(イレブン)の動向にもよるとしながら「EUとのEPAで国産チーズ向け生乳需要の大部分が失われる可能性がある」と警鐘を鳴らす。(川崎勇)
2017年06月29日
日欧EPA チーズ EU譲歩を 農相電話会談
山本有二農相は27日、EUとのEPA交渉を巡り、EUの農相に当たるホーガン欧州委員(農業・農村開発担当)と電話会談した。大枠合意へ、双方のセンシティビティー(慎重を要する分野)を踏まえながら、協議を加速する必要があるとの認識で一致。山本農相は、EU側が市場開放を要求するチーズについて、日本が譲歩するのは困難と訴え、EU側に歩み寄りを求めた。
日本とEUは来月上旬の首脳会談での大枠合意を目指し、事務レベルの協議を東京都内で続けている。こうした中、両氏は今回初めて会談し、約40分間、国内事情などで意見交換した。山本農相は電話会談後に、記者団の取材に応じた。
山本農相は、日本が畜産経営安定法(畜安法)の改正など生乳の流通改革を進め、ソフトチーズの製造に踏み出す若い酪農家も多いと説明。酪農家の将来をくじくことがないよう、チーズ関税での譲歩は難しいとし、そうした「日本の要求を飲んでほしい」と訴えたという。ホーガン氏は、大枠合意へ事務レベル交渉での間合いを詰める努力を期待する考えを伝えたという。
山本農相は大枠合意に至るには「まだ努力がいる」と、日本とEU間で依然、主張に開きがあるとも説明。大枠合意にはチーズの関税交渉で「(EU側に)歩み寄ってほしいとひたすら思っている」とも述べた。30日以降にEU側の閣僚級が来日し、閣僚間の協議に発展する可能性もあるとの見通しも示した。
山本農相は当初、27日にも訪欧し、ホーガン氏と会談することを検討していたが、見送っていた。閣僚間で協議しても依然、進展が困難との判断に加え、「一方的に譲歩を迫られる」といった与党内の懸念にも配慮したとみられる。
2017年06月28日
[緊迫EPA] 緊急集会 再生産へ関税守れ 農家、JA代表500人訴え
日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)交渉が大詰めを迎える中、JA全中は27日、与党の幹部議員を招いた緊急集会を東京・永田町の憲政記念館で開いた。農家やJA組合長ら500人が出席。乳製品や豚肉・牛肉、麦、甘味資源作物など農産物の重要品目の再生産が可能となるよう、関税を確保する必要性を与党と改めて共有した。
全中の奥野長衛会長は「工業製品を売り込むために農業が犠牲になるというパターンは、もうやめていただきたい」と強調。副会長の森永利幸畜産委員長は、EU産の豚肉や乳製品は環太平洋連携協定(TPP)参加国より競争力が高いとし、「TPP以上に力のある国にTPP以上の譲歩をしたら、再生産の確保は困難」と指摘した。同じく副会長の田波俊明水田農業対策委員長は、十分な情報開示の必要性を訴えた。
自民党からは、日EU等経済協定対策本部の西川公也本部長が出席。「自動車で取ったから農業が譲るということはしない。守るべきは徹底的に守る」と述べ、EU側の輸入規制の緩和を求める考えも示した。安倍晋三首相が7月6日にもEU側と首脳会談し、「大枠合意に踏み込むのではないか」との見通しも明らかにした。
同本部の森山裕幹事長は、焦点のチーズについて「EUはソフト系(の競争力)が強いといわれるが、ソフト系もハード系も強いという認識で交渉を進めていくことが大事だ」と語った。
一方、公明党からは日EU・EPA対策本部の上田勇本部長が出席し、「わが国の農業生産が維持・拡大できる合意内容でなければならない」と強調。同本部の稲津久本部長代理はEU産の農産物のブランド力を警戒し、「重要品目の国境措置をしっかりと堅持していくことが大前提だ」と述べた。
会場からは、JA北海道中央会の小野寺俊幸副会長が「乳製品などEUの輸出品目は北海道の重要品目。若い生産者の不安は大きい」と声を上げた。また、全国農協青年組織協議会(JA全青協)の飯野芳彦会長が「日欧EPAは、農業者にとって豊かになる交渉なのか」と投げ掛け、生産意欲の減退につながらないような交渉を求めた。
2017年06月28日
外国米混入 確認されず 京山問題 農水省が報告
農水省と京都府は27日、京都市の米卸売会社「京山」の中国産米混入疑いを報じた『週刊ダイヤモンド』の記事を受けた同社などへ立ち入り検査で、「国産米に外国産米の混入が疑われるような点はなかった」とする結果を公表した。
同省などは2月10日~6月1日に、京山や、同社子会社を含む仕入れ先と販売先など約160の業者に対し、米トレーサビリティ法に基づく立ち入り検査を延べ300回行った。
京山、仕入れ先と販売先の業者の帳簿とをそれぞれ突き合わせて調べ、関係者への聞き取りも重ねた。同法で定める記録保存が義務付けられる期間3年間に加え、京山が保管する5年分の取引をさかのぼって調べた。
同省は「外国産の仕入れや販売に関してや、(週刊ダイヤモンドが報じた)2016年産の国産米4品種に外国産混入が疑われるような点は確認されなかった」とした。米トレサ法に抵触する行為も確認されなかった。
通常、同法による立ち入り検査結果は、法律違反が確認され、悪質性が高い場合だけ公表される。本来、今回の案件は該当しないが、「国会で複数回、公表が求められ、社会的関心が高いことを踏まえて対応した」(同省)という。
JA京都中央会も京山を調査し、中国産や産地不明の玄米・精米の混入は一切なかったとの報告書を3月下旬にまとめた。京山と京都中央会は週刊ダイヤモンドを発行するダイヤモンド社を相手取り、4月に民事裁判を起こしている。
農水省によると、売買同時契約(SBS)による中国産米短粒種は、直近では12年と16年12月にしか輸入されていない。16年に輸入された中国産米が通関を経て業者の手元に届いたのは「今年2月下旬以降だった」(消費者行政・食育課)としている。週刊ダイヤモンドは、京山が取り扱う米を1月に入手し、検査機関に持ち込んだ。
同省の立ち入り検査の結果を受け、京都中央会の中川泰宏会長は「ご支援いただいた多くの関係者の皆様に感謝申し上げます」とコメントした。
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2017年06月28日
[緊迫 EPA] ハードチーズも競合 生乳影響避けられず
欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)交渉で最大の焦点のチーズ。政府は、国産と競合しやすいとしてソフト系の保護を最優先するが、EUはハード系の競争力も高い。ハード系の関税を安易に撤廃すれば、そのまま食べる国産のハード系やプロセスチーズの消費減だけでなく、国産の原料用チーズの需要を確保する「抱き合わせ」による輸入制度が形骸化しかねず、生乳需給への影響が避けられない。
低価格品が直接流入
日本は現在、関税区分の細目(タリフライン)上は、カマンベールなどのソフト系と、ゴーダやチェダーなどハード系を同じ「その他のチーズ」として分類し、29.8%の関税をかける。環太平洋連携協定(TPP)では、「日本人の好みに合う」とするソフト系の関税は維持したが、ハード系は16年で撤廃。日欧EPAでは、チーズのタリフラインを細分化し、一部の関税を撤廃・削減する案を検討する。
しかしEUでは、フランスやイタリアといった国の高級チーズだけでなく、オランダやデンマーク、ドイツなどで高品質ながら比較的安価なチーズも生産する。ソフト系やハード系のさまざまな種類が含まれるため単純比較は難しいが、財務省の貿易統計によると、これらの国のチーズの輸入価格は1キロ当たり300円台。オーストラリアやニュージーランド(NZ)より安い。生乳の取引価格も、EUは日本のチーズ向け乳価の2分の1程度だ。
こうしたことから、TPPと同様にハード系の関税を撤廃すれば、オランダなどの低価格品が直接消費用に流入するのは必至となる。農水省によると、国内に240あるチーズ工房のうちハード系のゴーダを製造するのは62カ所、カチョカバロは42カ所、チェダーは10カ所。ソフト系のカマンベールの47カ所と比べても少なくない。EU産はオーストラリアやNZよりブランド力もあり、競争激化は避けられない。
また、比較的安価で国内のチーズ総消費量の4割近くを占める国産プロセスチーズとも価格で競合し、需要を奪う可能性もある。
東京都内のスーパーでは、大手乳業メーカー製プロセスチーズの価格が1パック(スライス7枚入り)200~250円前後に対し、オランダ産のゴーダチーズは熟成期間が短いものなら100グラム300~400円程度から手に入る。関税が撤廃されれば、価格差がぐっと縮まる。国産プロセスチーズは国産ナチュラルチーズを原料としており、国内の生乳需給や乳価に影響を与えかねない。
「抱き合わせ」形骸化
国産チーズの需要を確保している「抱き合わせ制度」が形骸化する恐れもある。同制度は、一定割合の国産ナチュラルチーズの購入を条件に、プロセスチーズの原料用に輸入するチーズの関税を無税とする仕組み。国産1に対して輸入品2.5の割合だ。ハード系の関税が撤廃されれば、国産購入が条件の抱き合わせ制度は不要となる。現在は直接消費用が多いEU産も原料用に回る。
一方、EUは日本へのチーズ輸出拡大に強い意欲を示す。既に日本はEUにとって、米国に次ぐ世界第2位の輸出先だ。かつて1位だったロシアが、ウクライナ情勢を巡って2014年にEU産を禁輸。代わって日本向けが増え、15年の輸出量は14年に比べ5割近く伸びた。また、EUでは15年に生乳の生産割当(クオータ)制度を廃止してから生乳の増産が進んでおり、輸出余力はある。
政府は、TPPによる牛乳・乳製品の生産額への影響を198億~291億円と試算。国内対策なしでは、国産チーズ向け生乳の価格は輸入品価格の1キロ当たり23円まで下落するとしている。ある乳業関係者は、日欧EPAの影響も同程度以上になる恐れがあるとみて、「ソフト系はもちろん、ハード系の関税を撤廃しても大丈夫というのは楽観論だ」と警告する。
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27日付 論説「緊迫 日EU交渉 『自由化ドミノ』に懸念」
2017年06月27日
[緊迫EPA] 豚肉 銘柄産地も「限界感」 離農、基盤弱体化・・・ 情報開示早く 鹿児島
日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)交渉の進展を受け、養豚農家が危機感を募らせている。国内では近年、流行した病気の影響などが尾を引き、ブランド産地でも生産基盤の弱体化が進む。豚肉輸出国を抱えるEUへの市場開放は、一層の離農を招きかねない。政府からの情報開示がないことも、不安を増幅させる。農家らは「安心して経営を続けられるようにしてほしい」と訴える。
日本屈指の養豚地帯、鹿児島県鹿屋市。県黒豚生産者協議会の会長で、ブランド「かごしま黒豚」を生産する牛留道夫さん(69)は「今も何とか食いつないでいる状態。豚価が下がれば厳しい」とこぼす。分娩(ぶんべん)成績は県内トップを誇り、昨年は700頭を出荷した。だが、経営は決して楽ではないという。
地元のJA鹿児島きもつきによると現在、管内の黒豚1頭当たりの販売価格は平均5万1000円ほど。だが、コストは飼料だけで1頭3万円かかる。衛生費や光熱費などもかさみ、手元に残るのはわずかにすぎない。黒豚以外は販売価格が比較的安く、さらに厳しい状況という。
枝肉1キロ当たりの単価は現在、680円ほどだが、高値の要因は3年前に猛威を振るった豚流行性下痢(PED)による出荷頭数の減少。影響は一服し、「もう上げ要因がない」(JA養豚部)。一方、ワクチン代などは削れず、コスト削減には限界がある。
管内では、PEDで負債を抱えた経営もあり、影響は今も尾を引く。高齢化も重なり、1年に1戸のペースで離農が進むなど、生産基盤の弱体化に歯止めがかからない。
こうした状況で、EUに対する市場開放は国内養豚にとって大きな脅威だ。JAは「デンマーク産は加工向けとはいえ、輸入が増えれば国産の裾物の相場を冷やす。最終的に上物にも影響する」とみる。国産と競合する冷蔵豚肉を輸出するオランダも脅威で、現場には不安が渦巻く。
牛留さんは「情報開示がなければ、心配は拭えない」と漏らす。環太平洋連携協定(TPP)と同水準の関税削減で調整しているとの情報も伝わるが、政府から生産現場への説明は一切ない。JA養豚部の大原一人部長は、医薬品や飼料などの関連産業にもしわ寄せが行き、地域全体に影響するとした上で、「現場の努力に水を差す結果にならないか」と心配する。 (松本大輔)
2017年06月26日
日欧EPA 「大筋」ではなく「大枠」合意なぜこだわる 成果急ぐ政権 思惑見え隠れ
日本と欧州連合(EU)が7月上旬に目指す経済連携協定(EPA)の「大枠合意」。日本政府は従来の通商交渉では「大筋合意」という言葉を使ってきたが、今回はあえて大枠合意を使う。どう違うのか、大枠合意にこだわる背景は――。
政府は、環太平洋連携協定(TPP)や日豪EPAなど、これまでの通商交渉で各国と合意に至った段階を「大筋合意」と呼んできた。署名で最終的に協定文を確定するまでの間に、法的精査など技術的な作業が残っているため「大筋」と呼ぶものの、実態は「ほぼ100%合意した状態」(TPP交渉関係者)という。
一方、今回の「大枠合意」は、大筋合意よりも完成度は低いとみられる。外務省幹部は「TPPの大筋合意ほど詰まりきれなくても合意と言える」と説明。仮に1、2分野が決着しなくても、互いに関心が強く、重要な関税分野などを決着させれば「主要部分は決着した」として合意を打ち出す考えだ。
日本がEPA交渉で大枠合意という言葉を使うのは、初めてとみられる。日本は日EU交渉で当初は、大筋合意を目指すとしていたが、昨年末ごろから「大枠合意」という言葉を使うようになった。
背景には、早く何らかの成果を打ち出したい安倍政権の思惑がある。交渉を推進するある省庁関係者は「大枠合意できれば、英国のEU離脱など保護主義が高まって以降、初めて結ばれた大規模な通商協定だろう」と指摘する。安倍政権にはこれを国内外にアピールし、急落した内閣支持率の上昇につなげたいとの思いがある。
日本とEUの首脳が会談する7月の20カ国・地域(G20)首脳会議の機会を逃せば次の節目が設けづらく、合意への勢いがそがれるとの切迫感もあるとみられる。だが、合意を急ぐ政府の姿勢に対し、与党内には「相手に足元を見られ、無理な要求をのまされかねない」(自民党農林議員)との懸念が少なくない。
2017年06月26日
青果の規格簡素化 秋に指針 出荷コスト削減へ 農水省
農水省は、各産地が独自に定める青果物の出荷規格の簡素化に乗り出す。出荷規格の細分化に伴い、選別作業にかかる人手や施設、包装資材などのコストが膨らんでいる現状を改める。産地や流通関係者、食品事業者らと協議を進め、規格見直しの方向性を盛り込んだガイドラインを秋までにまとめる方針だ。
2017年06月25日
日欧EPA 一部ソフトチーズ関税 引き下げ案浮上
欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)交渉で、チーズの関税区分を細分化して一部品目について輸入関税を引き下げる案が政府内で浮上していることが23日、分かった。国産品と競合しにくい品目を切り分けて市場開放に応じる一方、カマンベールやモッツァレラといった国産と競合するソフトチーズは極力、国境措置を維持する戦略とみられる。ただ、幅広い品目で関税撤廃を求めるEUに対し、日本は現行の関税区分では守り切れないところまで追い込まれているとも言える。国産への影響を回避できるかは不透明で、慎重な対応が必要だ。
日本は、輸入関税をかける対象品目を示すタリフライン(関税区分の細目)を9桁の数字で分類している。上6桁は世界共通だが、それ以下は各国が設定できる。日本は現在、チーズを10の区分に分けているが、政府はこれを細分化し、チーズの種類ごとに設定することなどを検討している。
現在はソフト系のカマンベールチーズなどと、ハード系のゴーダチーズやチェダーチーズなどを「その他のチーズ」というタリフラインでひとくくりにし、同じ29.8%の関税をかけている。
環太平洋連携協定(TPP)で日本は、この「その他のチーズ」の区分は変えなかったが、ソフト系は現状維持、ハード系は発効後16年目の関税撤廃と対応を分けた。
今回はタリフラインそのものの細分化も視野に入れる。EUはチーズの競争力が強いため、種類ごとに対応を検討し、国内への影響を最小限に食い止めたい考えだ。また、国産品やEU以外からの輸入が少ないブルーチーズなどでは、TPPを超える関税削減に踏み切る可能性もある。
ただ、EUはソフト系に加えてハード系の競争力も強い。安易にハード系チーズの関税撤廃に応じ、高品質で低価格なEU産チーズが流入すれば、国産原料の仕向け先になっているプロセスチーズなどの需要を奪われ、生乳需給に影響する恐れもある。ハード系で譲歩したTPP合意でも、農水省は「チェダー、ゴーダなどに競合する国産チーズ向け生乳の価格は、輸入品価格まで下落、または関税削減相当分下落」と指摘していた。
同省によると、チーズの消費量は2015年で32万トンと前年から7%以上増加したが、国産割合は2割にとどまる。欧州に比べて国内のチーズ産業は発展途上なだけに十分な配慮が欠かせない。
2017年06月24日