国際スポーツ栄養学会(ISSN)による「タンパク質の摂取とエクササイズ」というレビューが今年の6月に改訂されましたので、さっそくキャッチアップしておきましょう。
ISSNによる最初のレビューは2007年だったのですが、このレビューは20万件を超えるアクセスがあり、とても重宝された報告でした。そして今回、10年ぶりの改訂が発表されたのです。
ISSNのレビューは、これまでに報告されたすべての研究を網羅しており、客観的かつ批判的にまとめているため、知識の確認にはもってこいだと思います。
それではテーマごとに見ていきましょう。
Table of contents
◆ タンパク質の摂取タイミング
「タンパク質の摂取はトレーニングの前か後か?」という議論は現在でも続いていますが、わずかにトレーニング後のタンパク質摂取が有効であると結論づけています。その理由として、トレーニング後30分〜1時間がもっとも筋タンパク質の合成感度が高まるゴールデンタイムであるため、その時間での摂取が有効とのことです。
しかし、トレーニングによる筋タンパク質の合成感度の増加は少なくとも24時間(72時間という報告もある)は継続することがわかっています。現在では、トレーニング前後の摂取のタイミングよりも24時間でタンパク質を摂取した「総摂取量」が筋肥大に寄与するとされています。
参考記事
『筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取タイミングを知っておこう』
◆ タンパク質の摂取パターン
最良の摂取パターンはトレーニング後「3〜4時間おき」の摂取であるとしています。これはAretaらによるトレーニング後12時間でどのような摂取パターンが筋タンパク質の合成作用を高めるのかという研究結果を参考にしています。
12時間で少量(10g)を1.5時間おきに摂取するよりも、多量(40g)を6時間おきに摂取するよりも、適量(約20g)を3〜4時間おきに摂取するのがもっとも効果的に筋タンパク質の合成作用を高めることが明らかになっているのです。
トレーニング後3〜4時間おきに、最適なタンパク質の摂取量をとることが推奨されています。
参考記事
『筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取パターンを知っておこう』
◆ タンパク質の摂取量
では、最適なタンパク質の摂取量はどのくらいか?という問には、体重から換算された「1日あたりの摂取量」と「1食あたりの摂取量」にわけて示されています。
1日あたりの摂取量は、以前では0.8g/kg/dayでしたが、その後1.2〜1.3g/kg/dayに見直され、現在では1.4〜2.0g/kg/dayが推奨されています。
また、ISSNでは習慣的にトレーニングを行っているのであれば、> 3g/kg/dayでも良いとしています。
1食あたりの摂取量は、若年(20歳代)では0.24g/kg、高齢者では0.40g/kgとされています。加齢に応じて筋タンパク質の合成抵抗性(アナボリックレジスタンス)が生じるため、より多くのタンパク質摂取が推奨されています。
参考記事
『筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取量を知っておこう』
◆ 就寝前のタンパク質の摂取
レビューでは就寝前のタンパク質摂取が行われていないことを「もったいない」と言います。そして近年では、この就寝前のタンパク質の摂取が就寝時の筋タンパク質の合成作用に有効であることが明らかになっているのです。
摂取するタンパク質はカゼインが推奨されており、摂取量は通常よりも多めの40gとされています。就寝前のタンパク質摂取は太るのでは?と心配されますが、カゼインはホエイなどのタンパク質と比べて肥満防止の効果が示されています。
また、就寝前のタンパク質の摂取の効果は、トレーニングの時間によっても影響を受けます。午前中のトレーニングよりも夕方のトレーニングのほうがより効果的であるとのことです。
12週間の就寝前のタンパク質摂取の縦断的研究によっても、筋肉のサイズ、筋力において有意に増加したことが報告されており、ISSNではこの10年におけるトピックスとしてこのテーマを扱っています。
参考記事
『筋トレの効果を最大にする就寝前のプロテイン摂取について知っておこう』
◆ タンパク質の品質(Quality)
高品質のタンパク質とは必須アミノ酸(EAA)を豊富に含むものであり、6〜15gの用量が望まれます。また、筋タンパク質の合成作用を刺激するためにはロイシンがもっとも重要であり、1〜3gの用量が必要といいます。さらに、他の分岐鎖アミノ酸(BCAA)であるイソロイシン、バリンが包括的に作用するため、ロイシンのみの摂取では不十分であるとしています。
結論的には、EAA10〜12g、ロイシン1〜3gを含むタンパク質が推奨されるとのことです。
参考記事
ここまでのまとめとして、ISSNではトレーニング後24時間において、高品質なタンパク質を最適な摂取量、摂取パターンで、就寝前の摂取も活用して最大限に高めることが重要であると述べています。
効果的なタンパク質の摂取 = (品質 × 摂取量 × 摂取パターン × 就寝前の摂取)/ トレーニング後24時間
本ブログでも同じようなテーマで書いてきましたが、大きな異なりもなかったので良かったです。今後も新たな知見が報告されしだい、本ブログでも発信していきます。ISSNのレビューはこのあと「タンパク質の種類」についての記事が続いています。参考になる情報がありましたら、改めてご紹介していきます。
◆ 読んでおきたい記事
シリーズ①:筋肉を増やすための栄養摂取のメカニズムを理解しよう
シリーズ②:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取量を知っておこう
シリーズ③:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取タイミングを知っておこう
シリーズ④:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取パターンを知っておこう
シリーズ⑤:筋トレの効果を最大にする就寝前のプロテイン摂取を知っておこう
シリーズ⑥:筋トレの効果を最大にする就寝前のプロテイン摂取の方法論
シリーズ⑦:筋トレの効果を最大にする運動強度(負荷)について知っておこう
シリーズ⑧:筋トレの効果を最大にする運動強度(負荷)の実践論
シリーズ⑨:筋トレの効果を最大にするセット数について知っておこう
シリーズ⑩:筋トレの効果を最大にするセット間の休憩時間について知っておこう
シリーズ⑪:筋トレの効果を最大にするトレーニングの頻度について知っておこう
シリーズ⑫:筋トレの効果を最大にするタンパク質の品質について知っておこう
シリーズ⑬:筋トレの効果を最大にするロイシンについて知っておこう
References
Jäger R, et al. International Society of Sports Nutrition Position Stand: protein and exercise. J Int Soc Sports Nutr. 2017 Jun 20;14:20.