「1市6町合併」 NO.25(2005年12月10日)              
暗礁に乗り上げている社会福祉協議会の合併


 大崎市社会福祉協議会の合併が暗礁に乗り上げ、合併の見通しが立っていません。
現状では、大崎市が誕生する平成18年3月31日の合併が不可能になっています。
 その原因は、鹿島台町社会福祉協議会からの「再協議の申し入れ」の扱いで対立して
いることです。情報によりますと、12月9日に開催されました鹿島台町社会福祉協議会
の理事会は、打開のための進展もなく、継続して努力していくことを確認するにとどまっ
たそうです。

 私は、古川市社会福祉協議会の理事として、この推移を見守って来ました。
 鹿島台町社会福祉協議会の理不尽な「再協議の申し入れ」により、地域福祉の中核を
担ってきた社会福祉協議会の合併が暗礁に乗り上げている現状を憂い、敢えて経過等
を示し見解を述べることにしました。

    (注、これ以降、社会福祉協議会を略して「社協」という)

※追加(平成18年1月末)

鹿島台町社協が「再協議の申し入れ」を撤回
合併期日は7月1日(予定)

 この問題で、社協は数回の会議を開催して来ましたが、平成18年1月20日の第7回1市6町社協合併協議会において、鹿島台町社協より暗礁に乗り上げた原因である「再協議の申し入れ」を撤回する意向が示されました。

 それを受け、
(1)敬風園施設長の理事への参画については、新法人が設立され新たな法
  人役員が選任された後の新理事会・新評議員会において継続検討してい
  くことを合併協議会として申し送りする

(2)合併に伴う事務作業が時間的に厳しいことから、当初予定した「大崎市」
  誕生と同時の合併は困難になったことから、平成17年度内(3月末)に合
  併調印を行い、合併期日を7月1日の予定で今後の作業を進める

 ことを確認されました。
 信義に反し、ルール違反とも言える「再協議の申し入れ」を撤回は当然のことです。
 この問題で、3ヶ月の時間を費やし、合併期日の延期を余儀なくされましたが、継続検討が問題の先送りや「争いの種」にならないことも含め、「雨降って地固まる」の社協になるよう願わずにはいられません。
 


1、満場一致で合併協定が承認されたのに

 社会福祉法第109条により、市町村の社協は「1市町村1社協」が原則の定めによ
り、市町村の合併期日に合わせ合併しなければなりません。
 1市6町が平成18年3月31日に大崎市として合併することが決定していることから、
それに該当する1市6町の社協も「大崎市社協」として合併しなければなりません。

 1市6町の社協は、合併に向け平成15年7月以降、次のように協議を行って来まし
た。
  ◎合併協議会    7回(会長・事務局長・大崎保健福祉事務所長の16人)
  ◎幹事会       8回(市町の保健福祉担当課長と事務局長の15人)
  ◎事務局長会議  27回
      ※この他に、事務局員による実務担当者会議及びワーキングチームが
       ありました。

 その結果、9月22日の合併協議会で、17項目の合併協定が鹿島台町社協も含め満
場一致で承認されました。

 それを受けて、各社協は9月末に理事会・評議員会を開催し、合併協定項目の審議を
行いました。
 その結果、鹿島台町・田尻町社協は継続審査になりましたが、1市4町の社協は可決
しました。その後、田尻町社協は可決しましたが、鹿島台町社協は10月11日の理事
会で否決したのです。

 個々の住民や議員が判断する市町村合併とは違い、社協の合併は市町村合併に伴
い否応なしに合併しなければならないことと、法人団体間の合併である点で根本的な違
いがあります。
 町の担当課長も含め、所属する社協を代表し会長と事務局長等が合併協議に加わ
り、異論を唱えることなく自ら承認した合併協定を否決するのですから、理解不能です。
協議してきた信義が問われます。

2、鹿島台町社協の「再協議の申し入れ」の内容

 鹿島台町社協が理事会で合併協定を否決した理由は、「再協議の申し入れ」(10月1
1日)に集約されています。
 その内容は、次の通りです。
 1,協定項目6 定款に関すること
     ◎第1種社会福祉事業の重要性を確認した内容とする。
     ◎新市の社協の運営については、厚生労働省が示している社会
       福祉法人定款準則を適用する。

 2,協定項目7 組織及び事務機構図に関すること
     ◎新市における第1種社会福祉事業に該当する施設が果たす役
       割を認識し、権限と責任を持たせるものとする。

 3,協定項目8 役員及び評議員の選出区分に関すること
     ◎新市における施設の果たす役割を円滑に実行するため、鹿島
       台町社協から、推薦された者2名を理事とする。

3、「再協議の申し入れ」の問題点と本音

 鹿島台町社協の「再協議の申し入れ」は、合併協議に加わり、自ら承認した合併協定
を否定することであり、団体間の協議では許されないことです。
 その基本的な事に加え、3項目の「再協議の申し入れ」は次のような問題点がありま
す。

 第1に、第1種社会福祉事業を理由とし、協定項目の変更を求めていること。
 社会福祉事業は、施設経営などの第1種と第2種事業に区分されています。
 以前は、市町村社協の事業は第2種しか出来ませんでした。
 それが「本来の目的を達成する上に支障を来さない場合には、市町村等が設置した入
所施設の受託経営を行っても差し支えない」(厚生省・課長等の通達)ことになり、県
は「初期投資等においてリスク面での問題が解消されている」との判断で、第1種事業で
ある敬風園(入所施設、特別養護老人ホーム)を、8月に鹿島台町社協に移譲しました
(この点について、「受託経営」でなく直営であるなど疑問は残っています)。

    ※敬風園の移譲についてはこちらを

 「再協議の申し入れ」は、それを背景に定款や組織・役員等の協定項目の変更を要請
したのです。
 しかし、第1種事業を行うことが定款や組織を根本的に変更をしなければならない特別
扱いでなく、第1種事業名を定款に記載すればよいのです(今回の場合は、「特別養護
老人ホームの設置経営」)。
 承認された大崎市社協の定款は、法人社協モデル定款を適用し、組織も効率的且つ
事業目的達成を考慮したものとして了解したものであり、社会福祉事業として「特別養護
老人ホーム(敬風園)の設置経営」と明記しています。定款の要件は満たしており、変更
の必要はないのです。要は、その事業趣旨を踏まえ誠実なる事業を実施することが大
切なことです。

 第2に、敬風園を特別な存在としてすることを求めていること。
 合併協議で了解された大崎市社協の組織図は、理事会の下に事務局長(常務理事が
兼務)を置き、総務課・施設福祉課など4課を管理し、現在の市町単位に支所を配置す
るとしています。
 これにより敬風園は施設福祉課の所管になります。他の「あしたの広場」「楽々楽館」
などの施設は支所の所管となります。

 しかし、「再協議の申し入れ」による敬風園の位置は、「当分の間、合併前日までの組
織体制を維持する」こととし、事務局長と同格で理事会の直轄とし、総務部など3部と企
画課など8課で構成する組織機構にし、既存の第2種事業とは区分し、独自の権限と責
任を持たせるということです。
 いかに第1種事業の施設であっても異常な位置付けです。しかも「当分の間、合併前
日までの組織体制を維持」しなければならない事情と理由があるのでしょうか。合併によ
り一体的運営をしなければならないのに、敬風園は「治外法権だ」とでも言うのでしょう
か。
 「再協議の申し入れ」の組織図は、複雑な上に介護保険事業などの連携もなく、大崎
市社協事業方針による運営・経営に支障を来すことは必至です。

 第3に、役員選出の「約束手形」を求めていること。
 理事や評議員について協定項目では、次のようにしています。
 理事定数は16名で、均等割7名、人口割7名とし、その他2名については社会福祉行
政機関(大崎市)と社会福祉事業を経営する団体役員です。
 これにより、鹿島台町からは2名の理事が選出されることになり、「再協議の申し入れ」
の2名の理事は満たされるのですが、後述するように特定の人(しかも職員である人)を
「常勤理事」にしろと強く要請しているのです。
 
 第4に、評議員の権限を小さくすることを求めています。
 合併協議で了解された定款では、評議員の権限を予算、決算、基本財産の処分、事
業計画、定款の変更等は「理事会の議決を経て、原則として評議員会の議決を経なけ
ればならない」としています。
 これは、住民を会員として、社会福祉事業の健全な発達により地域福祉の推進を図る
ことを目的にする社協の性格から、当然にして住民を代表する方や区長・民生委員等が
委員である評議員会(大崎市社協は34人)を重要視するものです。

 ところが、「再協議の申し入れ」は評議員会の権限を極力小さくし、理事会の権限を大
きくしようといているのです。
 これも、第1種である敬風園は特別な存在なのだという認識によるものです。直接住民
を会員にしない県社協の形態を、住民を会員とし地域福祉に重点を置く市町村社協に
導入させようとし、住民の声を軽視し全てを理事会だけで決定しようとするものです。
 市町村社協の目的を変質させてはなりません。

4、越権行為である鹿島台町長の意向が「再協議の
 申し入れ」に
 
 「再協議の申し入れ」は鹿島台町社協から出されたものですが、実は鹿島台町長の意
向が強く反映されています。
 そのことは、10月12日に開催された「1市6町市町長・社協会長意見交換会」(以下、
意見交換会という)における次のような鹿島台町長の発言に表れています(要約)。
●私が協定項目を見たのは、9月22日(社協の合併協議会で協定項目が承
  認された日)の後で、各社協が理事会に諮ろうとする寸前でした。
●協定項目を見て驚きました。これで如何と思うものがありました。このような
  ことが起こってはいけないと事と認識して(意見交換会は)私から発信した
  わけです。
●民主的な協議で検討したもので、私が口を挟むものではありませんが、鹿
  島台町長の意見として取り入れて頂きたい。内容を変更して頂きたいとい
  うことを申し上げたい。これは重要な発言です。
●敬風園は宝の施設であり、大崎市社協にもたらす大きな財産として、福祉
  の増進に多いに役立つもの。
●移譲の際、県への応募で「施設長(実際は実名)は、当協議会(鹿島台町
  社協)の常勤理事として、運営に携わる予定となっています」と明記してお
  り、これにそむくことは全県民に対する裏切り行為になります。
●(協定項目の)組織図は、全県民に対する背信行為になるので受けられな
   い。
●敬風園の施設長を、事務局と同格の形にし、常勤の理事にして頂きたい。

 いかに町長とはいえ、社協の運営等に「口を挟む」ことは越権行為です。確かに社協
は行政との関係は無視できません。事業の委託や補助を受けるなど、共に連携を取り
地域福祉の推進を図らなければなりません。
 しかし、社協は独立した社会福祉法人です。その運営・経営は社会福祉法と定款の定
めによるもので、行政が干渉すべき権限はありません。行政の補助機関と錯覚し、行政
の意図する方向で「指示」「干渉」「管理」等をすることは、他人の家に土足で入ることと
同じです。

 したがって、大崎地方合併協議会の合併協定は
  「社協の取扱いについては、合併時まで統合が図られるよう支援に努める」
としているのです。
 現実の推移を直視すれば、「支援に努める」どころか、合併を混乱させていると言える
ものです。
 意見交換会の座長は、大崎地方合併協議会長でもある古川市長が務めましたが、他
の町長も含め、鹿島台町長の発言は越権行為であり、他の社協で可決されている状況
では「禁じ手」で、合併協定で言う「支援」を超えた「干渉」であると毅然と指摘すべきでし
た。大きな意味を持つ意見交換会だったのですから。

5、「無理が通れば道理引っ込む」申し入れ

 鹿島台町長の発言は、9月末に1市4町の社協理事会・評議員会で合併協定項目等
が議決された後です。
 発言にあるように9月22日に合併協定項目等を見て、自分が意図している内容と違う
ため、前述の発言に至ったのものです。

 鹿島台町社協の「再協議の申し入れ」は、鹿島台町長の意向を踏まえたものと容易に
推察されます。前述したように、幾度となく開催されました事前の合併協議に会長・事務
局長等が加わり、その途中において理事会への報告や協議を経て、異論なく承認した
合併協定を、町長の「鶴の一声」で手のひらを返すような「再協議の申し入れ」は、団体
間の協議では許されないことです。信義に反します。

 しかも、「再協議の申し入れ」を突き詰めれば、敬風園の施設長を「常勤理事」にする
ことが主要な目的になっています。
 その理由に、県への応募で「敬風園の施設長を鹿島台町社協の常勤理事として運営
に携わる予定」と明記していることを挙げ、「これにそむくことは全県民に対する裏切り行
為になる」とまで言い切っているのです。

 勝手なことです。敬風園移譲の応募は各議会での合併議案議決後であり、大崎市社
協として合併することは必然なのに、1市5町の社協には何の相談もなく、その特記事項
に「常勤理事」を予定したのです。
 特記事項は鹿島台町社協には拘束力があるにしても、大崎市社協には無縁なことで
す。特記事項が選考の条件やポイントになった形跡はなく、ましてや、「全県民に対する
裏切り行為になる」とは根拠のないことであり、単なる言いがかりです。

 しかも、敬風園の施設長といえども大崎市社協の職員です。
 当然ながら、現在の施設長が永遠に施設長であるはずもなく人事異動があります。職
員を区別・差別するわけではないが、一職員を「常勤理事」にすること自体に問題点が
あります。社協の運営や経営に責任を持って携わる理事と、給与を貰い日常業務に携
わる職員は、一線を引きべき関係です。
 しかも「常勤理事」は理事以上に責任ある職務です。常務理事とは違い、社協の職員
である敬風園の施設長と兼務することになる「常勤理事」とは何ですか。その権限と責任
はどうなるのでしょうか。

 この件にについて県は

  ◎ 鹿島台町社協が、移譲の応募で「敬風園の施設長を鹿島台町社
   協の常勤理事として運営に携わる予定」としているのは、申請条件
   でも契約条件でもなく、施設長を常勤理事にすべきとの見解は
   持たない

  ◎ 以前、第1種社会福祉事業の施設長は、「常勤役員」とすることが
   望ましいということはあったが、今年4月の改正で「施設長等」とな
   り、施設長が必ずしも「常勤役員」である必要はなくなった。
     「常勤役員」であるかどうかに関わらず、施設長としてふさわ
   しい役割を発揮してもらえれば良い

 との見解のようです。
 鹿島台町社協及び鹿島台町長が主張していることとは違う見解です。

 「当分の間、合併前日までの組織体制を維持」を求めたり、敬風園の施設長を
「常勤理事」に固執するには、不都合な事情や思惑が潜んでいるのではと、要らぬ
詮索・疑念さえ持たざるを得ません。
 まさに、鹿島台町長の発言及び鹿島台町社協の「再協議の申し入れ」は、団体間の合
併協議の経緯と信義に照らしても無理難題であり、「無理が通れば道理引っ込む」もの
と言えます。

 大崎地方合併協議会における鹿島台町長の発言等に、行き過ぎがあります。
 会長を補佐する副会長の立場なのに何度も「議事進行」をかけたり、委員の発言を封
じるかの態度をとり、古川市の委員から「副会長は横暴だ」と指摘(第38回協議会・10
月29日)されるなどです。
 今回の社協合併における意見交換会での発言と、町長の意向を受けて鹿島台町社協
から提出された「再協議の申し入れ」も、その延長線上にあると思われます。

6、敬風園は「宝の施設」なのか

 鹿島台町長は意見交換会の場で、「敬風園は宝の施設であり、大崎市社協にもた
らす大きな財産として、福祉の増進に多いに役立つもの」と大見得を切っています。
 現実は、私が1市6町合併NO.17「疑問と不安が残る敬風園の移譲」(6月6日)で
懸念し指摘したようになろうとしています。

 その一つは、借入金の持ち込みです。
 介護保険収入が2ヶ月遅れることから、運営資金として鹿島台町から1億5千万円を借
り入れました。県への応募提案書では、合併時まで全額返済することになっています。
実態は返済されず7200万円の残高が大崎市社協に持ち込まれること(これこそ、県民
に対する背信行為では)。

 その二つは、社会福祉法人の会計制度では減価償却や引当金等を計上しなけ
ればならないのに、引当てしていないこと。

 その三つは、大規模改修の費用負担です。
 ユニットケア等(個室化)で大規模改修が必要になりますが、「移譲を受けた社協の中
で財政計画に見合い計画すること」(7月4日の県議会・保健福祉委員会で担当課長答
弁)になっており、敬風園の減価償却がない中で、大崎市社協として多額の将来負担が
予測されること。

 その4つは、高い給与です。
 移譲条件である「同等額を支給」される給与が、現在の社協職員より相当に高く、退職
金を含め負担になること。

 このように、重い将来負担が必至であるため、「宝の施設」どころか「お荷物」になる可
能性があります。

7、解決のボールは鹿島台町社協に投げられた

 社協の合併協議会は、10月11日の鹿島台町社協からの「再協議の申し入れ」を受け
て、幹事会や合併協議会等を頻繁に開催し、その対応について検討しています。
 その結論として11月17日、1市5町社協の理事会・評議員会で既に承認を得ているこ
との重みを尊重していだきたいとし、「再協議の申し入れは受託できない」と通知しまし
た。それに対して11月18日、鹿島台町社協から「断じて容認できない」と「再協議の申
し入れ」の再回答を求める要請文が提出されました。
 それを受け11月29日に合併協議会を開催しましたが結論は変わらず、解決のボー
ルは鹿島台町社協に投げられました。

 しかし、冒頭に紹介しましたように最後のタイミングとして注目された12月9日の理事
会でも、打開のための進展はなかったようです。解決のためのタイミングを自ら封じたと
言っても過言ではありません。
 鹿島台町長と社協は、合併相手の社協と住民に不信感を増長することなく、合併協定
の審議過程や責任を自覚し、冷静な判断をすべきです。時間の経過は、鹿島台町長と
社協側が不利になるだけです。

 当初予定では、合併調印式は10月27日でしたが延期状態になっています。
 来年3月31日に1市6町と同時に合併するためには、調印式や理事の選出や事務的
手続き等を経て12月20日頃まで県への申請が条件です。
 期待していた12月9日の理事会で進展がなかったことにより、12月20日頃までの県
への申請は物理的に不可能になりました。その責任の全ては鹿島台町社協にありま
す。

 敬風園の施設長を「常勤理事」という属人的な人事を主な要望にするなど、非常識的と
も言える無理難題で、今日までの合併協議の経過及び合併相手の社協・住民との信頼
に水を差すことなく、真摯に且つ冷静な判断をすべきです。
 大崎地方合併協議会のスローガンに、「平成デモクラシーの幕開け」と提唱したのは
鹿島台町長だったのでは。この問題の解決に向け、スローガンに恥じない言行一致を望
みます。