塩原賢
2017年6月29日08時36分
本屋発のベストセラーが各地で生まれている。「手にとってさえもらえれば」と、本の一部をあえて読めなくしたり、書店員の名を冠した賞を創設したり、きっかけ作りに工夫を凝らす。薦める作品への自信が、書店員たちを動かしている。
東京都江東区の紀伊国屋書店ららぽーと豊洲店。レジ脇にあるワゴンに、巻末の「解説」がフィルムで覆われて読めない文庫本が並ぶ。約2カ月で1千冊以上を売り上げている。
ミステリー小説「イノセント・デイズ」(早見和真著)だ。文庫化にあたり、解説を人気作家の辻村深月(みづき)さんが手がけた。フィルムで覆った解説ページに挟み込まれた紙に、「文庫担当者から」とある。《物語の本質にそっと寄りそうような辻村さんの目線》などと解説そのものをPRする内容が書き込まれている。
近くに住む会社員、桑原健さん(46)は「推薦する本なのに、手にしたら解説が読めない。そこまでするならと思い、買うことにした」と話す。
3月にこの試みを始めてから売り上げは10倍に跳ね上がった。仕掛け人の同店員平野千恵子さん(49)は「リベンジなんです」。
ハードカバー版の単行本が発売…
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