太陽系外縁部に歪み、未知の惑星による影響の可能性
【2017年6月27日 UA News】
海王星の軌道(太陽から約30天文単位=45億km)の外側には、数百天文単位にわたる領域まで太陽系外縁天体が分布している。
米・アリゾナ大学・月惑星研究所のKathryn VolkさんとRenu Malhotraさんは、600個以上の太陽系外縁天体の軌道を調べ、軌道の平均的な傾きが太陽系の不変面(黄道面とほぼ等しい、惑星軌道面の平均と大体同じ)から約8度ずれていることを明らかにした。言い換えれば、太陽系外縁部の平均的な軌道面が、未知の理由により歪んでいるということである。
太陽系外縁部の天体の平均軌道面は、太陽から50天文単位くらいまでは極めて平らだ。「しかし50~80天文単位あたりになると、平均軌道面は不変面からずれて歪んでいるのです。不確実性があるとはいえ、この歪みが単なる統計的なまぐれである可能性は、1~2%以下です」(Volkさん)。
Volkさんたちはこの歪みが、未知の天体の存在によるものと考えている。計算によると、太陽から約60天文単位の距離に約8度傾斜した公転軌道を持つ火星質量の天体があれば歪みを説明できるという。
惑星質量天体の軌道の概念図(提供:Heather Roper/LPL)
この天体は、これまでに存在が示唆されてきた「太陽系第9惑星」ではないようだ。というのも、第9惑星の質量は地球の約10倍、太陽からの距離は500~700天文単位と推測されているからだ。
平均軌道の歪みの原因となった天体が未発見である理由についてMalhotraさんたちは、太陽系外縁天体の観測が全天域で行われていないことを挙げている。この惑星質量天体の隠れ場所として最も可能性が高いのは、星が非常に密集しており太陽系天体のサーベイ観測が避けられてきた銀河面だという。
Malhotraさんたちはこの天体の検出について、2020年のファーストライトを目指しチリで建設が進められている大型シノプティック・サーベイ望遠鏡(Large Synoptic Survey Telescope:LSST)に期待を寄せている。「LSSTによって太陽系外縁天体の発見数が現在の約2000個から4万個にまで増えるでしょう。太陽系外縁天体の軌道に影響を及ぼした惑星質量の天体が存在すれば、きっと検出できるはずです」(Malhotraさん)。
〈参照〉
- UA News:UA Scientists and the Curious Case of the Warped Kuiper Belt
- The Astronomical Journal:The curiously warped mean plane of the Kuiper belt 論文プレプリント
〈関連リンク〉
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